2016年7月29日に公開され、大ヒットを記録した映画『シン・ゴジラ』。『新世紀エヴァンゲリオン』で知られる庵野秀明氏が総監督を、樋口真嗣氏が特技監督を務めるなど豪華スタッフ陣も大きな話題を呼んだ。そんな『シン・ゴジラ』には、映像や脚本以外にもう一つ、注目してほしいポイントがある。それは"音"だ。たとえばゴジラの鳴き声は、初代ゴジラで使われていた音をそのまま使っているという。

今回、ソロプロジェクト ゲントウキの名で知られ、smap、MayJ.、土岐麻子、倖田來未らへの楽曲提供や編曲で携わり、近年はABC-Martや全労済などのCM音楽も手がける音楽家、田中潤氏に"音"の面からみた『シン・ゴジラ』の面白さについて聞いた。

※【注意】本記事には『シン・ゴジラ』のネタバレが含まれます

――『シン・ゴジラ』のなかで使われている音楽の印象を教えてください。

音楽自体はやはり一流ですよね。庵野監督と長年タッグを組んできた鷺巣詩郎さんが手がけられているのですが、それだけでなく過去のゴジラで使われていた音楽がそのまま使われているシーンも何カ所かあります。

特に印象的だったのは、ゴジラが登場するシーンで流れる「タタタン、タタタン」という有名なフレーズ。あれは伊福部昭さんが作られた楽曲で、『シン・ゴジラ』では初代『ゴジラ』で流れた音がそのまま使われています。

この曲を聞いたとき、違和感がありませんでしたか?

――違和感、ですか。

そう。この曲だけモノラルなんですよ。高域と低域が鳴っていないので、ラジオから流れてくる音のような印象があります。これは、まだ現在のようなレンジの広い録音が不可能だった50年代の初代『ゴジラ』の音をそのまま使っているからです。

――新しく録音したのではなく、当時の音をそのまま使っている。それはなぜでしょう。

理由のひとつとしては、より感情移入してもらうためでしょうね。他にもゴジラ過去作からの引用はあります。たとえばヤシオリ作戦で流れる「宇宙大戦争マーチ」もそうです。オリジナルの楽曲を引用することで、これまで『ゴジラ』に親しんできた世代はグッと惹きつけられたはずです。映像は最新でも当時の音が聞こえると急に昭和感が出てきます。

こうした新しいものと昔のものの融合を、庵野監督はかなり意図的に行っている印象を受けました。映像でもゴジラはCGでなくあえて特撮を使っています。

各世代に訴えかけるという意味では、『新世紀エヴァンゲリオン』からの引用も見逃せません。開始40分頃にかかるティンパニの音がそれです。この曲はアレンジを変えて、劇中に何度も登場しています。後半に登場したときなどはギターアレンジされて、だいぶ印象が違っていますが、よく聞くと同じティンパニのフレーズが鳴っています。エヴァ世代にとってはたまらない演出ですよね。

――たしかに『シン・ゴジラ』を見ながらエヴァを思い出したという人も多かったようです。

映像や脚本はもちろんですが、音楽の使い方もその理由のひとつでしょうね。庵野監督は絶望的なシーンに穏やかな曲を使うことがあり、『シン・ゴジラ』でも町が放射熱線で破壊される場面ではクワイアのような荘厳で宗教的な楽曲が使われています。あれもエヴァを思い起こさせる演出です。

――音楽にも庵野監督のこだわりを強く感じますね。

全体を通して見ると映画音楽としての王道を行っていると思うのですが、一つひとつの楽曲を取り出すと庵野監督らしさをすごく感じます。おそらく鷺巣さんと庵野監督で綿密な話し合いがあったのではないかと思いますね。

――モノラルの音あり、ギターありと、バラエティに富んだ音の使い方ですが、全体を通して感じるのは庵野監督らしさだと。

そういう意味で統一感はありましたね。

――他に印象に残っているシーンは?

音楽そのものだけでなく、使い方も面白いと思いました。ゴジラ第二形態が上陸するシーンでは不安をあおるような楽曲が使われていますが、実は劇中でBGMが初めて使われるのがこのシーンなのです。ここまではBGMがまったく流れていません。これも特徴的ですね。

それから、昭和のアニメっぽい曲もありましたね。開始27分頃、ゴジラのニュース音声が流れるシーンの楽曲がゆったりしたジャズ調で印象に残っています。

――映画全体を通して、楽曲の使い方にどんな意図を感じましたか。

個人的に『シン・ゴジラ』は東日本大震災をモチーフにしている印象を受けました。あの出来事の記憶が薄れつつある今、もう一度強く訴えかける内容になっていたように思います。使われている音楽も同じで、見る人に訴えかける力が強いものになっていたと思っています。モノラル音源やエヴァ内で使用された音源を使うなど、各世代を惹きつける音の使い方はその最たるものです。

『シン・ゴジラ』は音だけに注目して見ても面白い作品です。ヘッドホンなどで聞くと、より音の違いがわかると思います。何度も見ると音楽についても新しい発見があるのではないでしょうか。

――ありがとうございました。

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初代『ゴジラ』や『新世紀エヴァンゲリオン』といった作品からの引用を始め、音楽面でも様々な仕掛けが施されている『シン・ゴジラ』。今度の休日は、劇場で『シン・ゴジラ』を観た方も、そうでない方も、"音"に注目して『シン・ゴジラ』を観てみてはいかがだろうか。

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