1学年およそ500人、全校で1,500人の生徒が在籍する私立「広陵学園 広陵高等学校」(以下、広陵高校)。甲子園で活躍する野球の名門校として名を知られている高校だ。

広陵高校では、生徒がiPadで授業アンケートや進路アンケートに回答し、そのデータがさまざまな指導に活かされている。iPadのアンケートは、FileMakerプラットフォームで作成されており、iPadでは無料のiOSアプリ「FileMaker Go」を生徒が操作して使う。FileMakerは、アプリの開発経験やITスキルがなくてもビジネスに最適なカスタム App(カスタムアプリケーション)を作成できる開発ツールで、実行環境も備わっているソフトウェアだ。

広島県にある広陵学園 広陵高等学校

生徒がiPadでアンケートに回答

広陵高校 校長 中圡基氏

広陵高校でFileMakerを使い始めたのは、現在校長を務める中圡基氏が2011年に教頭として同校に着任したのがきっかけだった。中圡氏は古くからのFileMakerユーザーで、多忙を極める教職のかたわら、独学でFileMaker開発を習得したという。今も同校内で利用されるアンケートをはじめとしたカスタム Appは主に中圡氏が開発している。

2013年に校内Wi-Fiの整備やeラーニングシステムの活用に着手。2014年には1学年の生徒数分にあたる485台のiPad miniを導入し、反転授業を始めた。そして2016年には、さらに210台のiPad Airを追加導入し、カスタム Appによるアンケートも開始した。

iPadは、使用する授業のときに生徒に貸与される。たとえば進路アンケートでは、進路指導の時間に3年生の全クラスでiPadを配り、一斉に実施する。アンケートのカスタム Appは、サーバーマシンでホストされているので、約500名の生徒が同時にWi-Fi経由で「FileMaker Server」にアクセスするわけだ。ファイルメーカー社によれば、世界中のユーザーのなかでも有数の同時アクセス数を記録したそうだ。もちろん、約500の同時接続でもパフォーマンスに全く問題はなかったという。

「費用」、「時間」、「精度」の3大メリット - 思わぬ副次的効果も

広陵高校では年に2回授業アンケートを実施し、授業や教員に対するフィードバックを生徒から収集している。設問内容は、「チャイムと同時に授業が開始されているか」、「声が聞き取りやすく、はっきりした話し方をしてくれるか」などだ。

広陵高校 教諭 塚田剛氏

以前に実施していた紙ベースのアンケートでは、まず生徒一人ひとりの履修状況に合わせたマークシート用紙をプリントする必要があった。アンケートを回収した後は、用紙をスキャンして専用アプリケーションでマークを読み取り、自由記述欄については、授業アンケートの運営を担当している教諭の塚田剛氏がすべてパソコンで手入力していた。そのため、マークシートの読み取りエラーや入力ミスなどもあり、実施後の集計処理に1週間はかかっていたという。これに対し、FileMakerのカスタム Appを使えば、アンケート用紙自体がなくなるばかりか実施後の集計作業も必要ない。生徒がiPadで回答を終えた瞬間に、もうデータ入力と集計が完了しているのだ。

外部業者に支払っていた年間約200万円のコストや、準備と作業の時間がかからなくなったのはもちろん大きなメリットだが、何よりもデータの質と量が向上したことに意義があると同校では考えている。

中圡氏は「このアンケートは教員が自分の授業を改善するために実施しているものであり、データに間違いがあっては説得力がありません。読み取りエラーなどがないというデータの信頼性が重要なのです」と話す。

さらにカスタム Appは予想外の副次的効果をもたらしてくれたと塚田氏は語る。「まず、自由記述欄への書き込みが増えました。生徒たちにとっては、手書きよりもiPadで入力する方が書きやすいようです。また、以前よりも正直で厳しい回答も出てきています。紙のアンケートだと集めるときにほかの生徒や先生に見られてしまう心配があり、書きたくても書けないことがあったようです」

以前使用していた授業アンケートの質問用紙(左)と回答用マークシート(右)

現在、授業アンケートはiPadのカスタム Appで行っている

タイムリーな指導に活かせる進路アンケート

進路アンケートには、志望先調査と進路調査の2種類がある。志望先調査は、進学したい大学を回答する調査だ。これも以前は、前述の授業アンケートと同様にマークシート用紙の準備から読み取り、エラーの訂正などに多くの時間が費やされていた。

志望先の入力には、ベネッセコーポレーションが作成・公開している、大学・学部・学科コード表を使用する。生徒がコード番号表を見ながらカスタム App上で10桁の数字をタップするだけで、最初の4桁を入力するのと同時に大学名、次の2桁で学部名、最後の4桁で学科名がカスタム App上に自動で表示されるようになっている。そのため、紙のアンケートでは頻発していた記入ミスがほぼ無くなったという。また、回答用紙の読み取りや集計の時間が不要なので、調査実施後にすぐ個人面談をすることも可能だ。

広陵高校 教諭 田中弘明氏

同校の教諭で進路指導部の田中弘明氏によれば「これまでは3年生の6月と9月に志望先調査を実施していましたが、調査の準備やデータ処理に時間がかからなくなったので、今後は全学年で年に3回実施していきたいと考えています。この調査が生徒にとって進路を真剣に考える機会となり、意識が変わるからです」という。

一方、全学年で各学期の初めに実施されている進路調査には、進学か就職かといった進路先の希望に加え、家庭での学習時間など生徒の生活や学習状況全般にわたる質問がある。この調査も、実施後すぐにデータを整理して担任にフィードバックできる意義は大きい。生徒の生活習慣や学習のつまずきにいち早く気づき、面談をするなどの対策をとれるからだ。

生徒は10桁の数字をタップし、自動で表示される大学・学部・学科名を確認しながら回答できる

今後について田中氏は「精度の高いデータをすぐ集められるようになったので、グラフ化や集計など、さらにさまざまな切り口で分析していきたいと考えています。今までは見えなかった相関関係などがわかり、生徒の指導に活かせると思います」と展望を話す。

「いろいろ書いてみようという気になる」と生徒の声

iPadを使ったアンケートについて、回答する生徒はどのように感じているのだろうか。1年のときには紙のアンケート、2年になってからはiPadのアンケートと、両方を経験している2年生で生徒会長の松尾龍弥さんに話を聞いた。

広陵高校 2年生 松尾龍弥さん

「アンケートが紙からiPadに変わると知ったとき、“紙の使用が減って、エコだな”と良い印象を受けました。そして実際にiPadのアンケートを回答してみたところ、紙よりも使い勝手が良いものでした。選択肢を選ぶ質問ではマークを塗りつぶすより早く回答できますし、自由記述も手書きより早いし手間も少ないので、いろいろ書いてみようという気になります。書き間違いを直したり書き忘れたことを書き足したりするのも簡単です」と松尾さんは話す。この感想は、自由記述が増えたという塚田氏の意見とも一致している。

携帯やスマートフォンの学校への持ち込みは禁止しているものの、家庭や学外では8割ほどの生徒がスマートフォンやタブレットを利用しているそうだ。iPadを使った反転授業を実施していることもあり、操作には十分慣れていて正確で有効なデータがとれるものと考えられる。初めて実施したときはiPadの操作マニュアルを作って配布し、回答中は操作のサポートもしたが、特に混乱もなかったという。

選択肢を選ぶ質問では、マークを塗りつぶすより早く回答でき、自由記述も手間も少ないので、いろいろ書いてみようという気になるようだ

中圡氏は調査全般に関して「教員間で情報を“見える化”し共有することで、気づきや話し合いのきっかけとなります」と、さらにデータを積極的に活用していきたい意向を語る。FileMakerのカスタム Appによって、費用や時間の負担を減らすだけでなく、生徒へのより効果的な指導を可能にし、生徒と教員、そして教員同士の間のコミュニケーションのスピードと質を上げていく取り組みは、今後も進化を続けていきそうだ。

ファイルメーカー「カスタム App利用状況調査2017」

カスタム Appによるビジネス課題の解決とシチズンデベロッパーの取り組みに関する実態調査。

シチズンデベロッパーがローコードのカスタム Appでいかにビジネス価値を高めているかをご覧ください。


⇒ 資料ダウンロードはこちら

(マイナビニュース広告企画:提供 ファイルメーカー)

[PR]提供:ファイルメーカー