去る2016年11月9日、東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京において、ウイングアーク1st主催による国内屈指の帳票&BIカンファレンス「ウイングアークフォーラム 2016」が開催された。今回のテーマは「未来をビジュアライゼーションする。」で、ビジネスを支える帳票とBI関連の最新情報や事例の紹介に加え、東京会場ではIoTにフォーカスしたセッションや特別展示も実施された。いずれのセッション・展示ブース共に盛況を極めたが、本記事ではその中からIoTに関連する2つのセッション内容を紹介しよう。

製造業に変革をもたらす生産ラインからのデータ取得と可視化

ウイングアーク1st BI技術本部 BIソリューション部 製造ソリューショングループ 副部長 白濱 純氏

製造業向けに「IoTを利用した現場の見える化と分析(予防保全の基盤構築)」と題した講演を行ったのは、ウイングアーク1st BI技術本部 BIソリューション部 製造ソリューショングループ 副部長の白濱 純氏だ。

同氏はまず、生産ラインからのデータ取得について「生産ラインの工程や使用機器は、企業によって大きく異なります。そこで弊社では、単純にBIツール『MotionBoard』を提供するだけでなく、実際に現場でお客様の課題を確認し、必要なデータを生産ラインから取得して可視化するまでをトータルでご提案しています」と語った。

生産ラインのデータを取得する主な対象としては、FA(Factory Automation:生産工程自動化)およびMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)の領域が挙げられる。FAに関しては、ネットワークに接続されたPCやシーケンサ経由でデータを取得したり、シーケンサ稼働に非対応の旧機種では追加したパトライトや消費電力から稼働状況を確認したりと、対応や難易度が異なる各種機器に応じてデータ取得方法を変えていく必要があるそうだ。また、MESの領域で要望が多いトレーサビリティの導入については、単体データだけの活用では費用対効果が出ないケースが多いことから、品質管理と組み合わせた提案を行うケースが多いという。

機器に応じて難易度が変わるデータ取得方法

「MotionBoard」でデータの連動と可視化を実現

このようにして得た生産情報(ロット/製品ごとの情報)や品質情報(製品検査情報)、設備情報(設備稼働情報や環境情報)などの各種データを連動し、データ同士の関連性を可視化することにより、不良品を出さない取り組みに役立てることができる。このデータの連動と可視化を行う上で、極めて重要な役割をはたすのがウイングアーク1stのBIツール「MotionBoard」だ。

製造業において、MotionBoardは実に多彩な役割を担うことができる。この中でもっとも基本となるのが、生産状況をリアルタイムに「見える化」する使い方だ。MotionBoardでは、設備の稼働状況について「稼働中・非稼働・故障中」などのステータスを信号機のように表示したり、現在停止している設備の停止理由と状況を一覧表示することが可能だ。また各項目のクリックやタップ操作でドリルダウンすると、その詳細をすぐに確認できるのもMotionBoardの魅力だといえる。設定数や目標数、実績、差異、そして達成率など工程ごとの進捗および稼働状況を、表とグラフで分かりやすく表示することが可能だ。加えて、他のBIツールには無い面白い機能として、生産ラインなどにウェブカメラを設置して、そこからリアルタイムで映像を表示することが出来る。製造ラインの稼働状況をカメラからの映像で見ながら、設備の稼働スケジュールや計画と実績の差異をガントチャートで比較するといった活用が可能となるため、過去データを振り返ることだけが可能なツールでは出来ない使い方が広がる。

設備管理の面では、修理履歴や稼働率、エラー分布の表示や、生産計画に応じて変化するMTBF(Mean Time Between Failure:平均故障間隔)到達期日の予測グラフ表示が保全管理に役立つ。また、MotionBoardの新機能では、設定した閾値を超えた際にアラートを発してメール通知するという使い方ができる。さらに標準機能として、部品表の階層構造と同じ形で展開できるトレーサビリティ機能を備えており、トレースバックやトレースフォワードにも対応している。この機能により、原材料に不具合があった場合には関連する製品ロットなどを即時に検索することができる。加えて、生産管理に必要となる統計処理のグラフ表示も可能であり、相関図や分布図などの表示にも対応しているなど、生産現場で必要となる様々な可視化に積極的に対応している。こうした機能は、IoT時代に必要となる生産情報活用の見える化ツールとして即戦力となる。

最後に白濱氏はデモンストレーションを交えながら、取得したデータを有効活用する方法についても言及。統計学的な手法でデータの相関性を導き出し、品質に与える影響が大きい設備や環境値の可視化から歩留りの向上を図る、異常が発生するパターンを現場で即座に分かるように可視化する、統計学的な洗い出しで成功・失敗の見分けが可能な変数を表示するなど、さまざまな観点からの有効活用が期待できるとして講演を締め括った。

「MotionBoard」を利用した設備稼働状況の可視化

設備稼働ガントチャート

企業という枠を超えた連携が可能となる自律型MES

「IoTで挑戦する『つながる工場』への革新 ~AI、ロボティクス活用事例~」と題したセッションでは、モデレーターとしてフロンティアワンの代表取締役であり、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)エバンジェリストも務める鍋野 敬一郎氏が登壇。パネリストには小島プレス工業 黒笹部品部工務課の大島 啓輔氏および、丸和電子化学 統括管理課IT推進グループの安藤 拓也氏を迎え、パネルディスカッション形式で進行した。

このセッションでは、まず鍋野氏がIoT/インダストリー4.0に関する現在の技術動向や国際協力関係などを解説。その上で、製造業のIoTを推進する国内団体のひとつとして、自身が所属するIVIの取り組みを紹介した。

「IVIは『人・現場主体』で日本の製造業の高度化を目指す、企業の垣根を越えて人と人がつながる『場』を提供する、という観点で活動している団体です。トレーサビリティの考え方や、リアルとバーチャルの融合といった部分を含むデジタル/アナログや競争領域/協調領域の境界を再定義する役割を担っています」と同氏は語る。

こうした中で、企業を超えて連携する自律型MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)の実証実験も積極的に行っている。トヨタ自動車の一次サプライヤーとして、内外装部品を中心にデザイン、開発、設計、信頼性試験(評価・解析)、製造までを手がけている小島プレス工業では、工場内に設備連携用として人型ロボット「Pepper」を配備。設備に何らかの異常が発生した際、Pepperが自動でその場所まで移動し、付近の担当者にその内容を伝える。担当者はケースに応じて、Pepperが持つタブレットから遠隔操作により異常の詳細を確認。「MotionBoard」を経由してタップすることで関係者に報告することができる。

フロンティアワン 代表取締役 鍋野 敬一郎氏

小島プレス工業 黒笹技術センター 工務課 大島 啓輔氏

工程情報の共有と企業間連携で「つながる工場」を目指す

また、工程情報の共有と企業間連携に関する取り組みも行われている。工場においては、製造ラインの稼働状況や進捗、実績などのデータ収集や整理は人手で行っているのが現状だ。この場合、異常発生時、および仕様変更、割込みなどが必要なタイミングで必要な情報を効率的に収集する有効な手段が少なく、人手不足の解消や技術継承、工場の見える化などの課題の解決に手が回らない。そこでIVIでは、企業間や工場間で“必要十分な情報のみを選択的にいつでも入手できる”現実的な仕組みを作り、中小企業でも実現可能な省力化・自働化の「つながる工場」を目指している。

こうした取り組みのひとつとして、小島プレス工業と丸和電子化学が実証実験を行っているのが、MESとPepperを連携させたシステムだ。たとえば生産計画の変更などにより部材不足が発生した際、現在は担当者が仕入先に電話やメールで連絡し、在庫確認の折り返し連絡を受けてからようやく計画変更への対応が行える。しかし、この実証実験に採用されているシステムでは、Pepperが生産計画の変更に伴う部材不足を検知し、MESへの登録と担当者に対するアラートを実施。担当者がPepperのタブレットから部材発注指示を出すと、仕入れ先である丸和電子化学のPepperが受注連絡と在庫状況の確認を行い、担当者がチェックするだけで小島プレス工業への折り返し連絡が済むのである。またEDIと連携した伝票データの登録も自動化することが可能だ。さらにMotionBoardでPSIシステム(生産・販売・在庫調整システム、Production/Purchase:生産/調達、Sales:販売、Inventory:在庫)に柔軟に対応することで、計画変更時にも納期の迅速な回答を実現することを狙っているという。

セッションの最後には安藤氏が、IBMが開発したコグニティブ(認知知能)システム「Watson」とPepperを組み合わせたデモンストレーションも実施。これはトラブル発生時に、その状況を口頭でPepperに問い合わせると、「Watson」が過去の不具合事例から熟練技術者のように即座に原因を特定して、その対応策を提案してくれるというものだ。膨大なデータを蓄積して学習することで、「Watson」の出す回答の正解率はより高くなっていくという。

大手企業のように高価な産業用ロボットの導入が難しい中小企業でも、Pepperならば導入のハードルを大幅に下げることができる。また人工知能との組み合わせは、今後さらに深刻化する労働人口不足の影響を抑える上でも、非常に有効だといえるだろう。

丸和電子化学 統括管理課IT推進グループ 安藤 拓也氏

セッションの最後に、安藤氏は「Watson」とPepperを組み合わせたデモンストレーションも行った

今回はIoTに関連する2つのセッションを紹介したが、いずれの内容からもIoTが現在の製造業に希望と改革をもたらすと同時に、新たな未来の創造に必要不可欠な要素であることが分かる。今後もさらなる加速を見せる“製造業×IoT”関連の取り組みに、ぜひ注目していきたいところだ。

※ 上記イベント内容は、ソフトバンクロボティクスのPepper を活用し、ウイン グアーク1stが独自に実施しているものです。

(マイナビニュース広告企画:ウイングアーク1st)

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