多くのビジネスがデジタル化された現代、企業が系列会社、拠点などでシステムを連携させ、経営のスピード向上を図っているケースも珍しくなくなった。こうした中で情報システム部門の責任は、ますます大きなものとなっている。 連携システムの運用だけでなく、迅速な施策の投入、さらには「グローバル化」「IoT」「AI活用」などといったトレンドワードの必要性を説く経営層にも対応しなければならない。

会場は多くの参加者で賑わった

これらの課題を解決する手段として、例えばパブリッククラウドやハイブリッドクラウドに注目して、現在導入を検討されている企業もあるだろう。こうしたデータ管理の最適解を求める企業に応えて、ネットアップは「NetApp Innovation 2017」を2月2日に開催した。 本稿ではその概要を紹介する。

クラウド導入は「トライファースト」で

株式会社IDOM
ITセクション 月島 学氏

同イベントの中で、マイナビニュースは「検討にあたってはメリットだけでなく、課題についても共有すべき」という考えから、『先進ユーザー企業が告白! ハイブリッドクラウド、現場の課題』と題したパネルディスカッションを提供した。

パネリストとして、実際にハイブリッド(マルチ)クラウドを導入・運用している企業としてIDOM(旧:ガリバーインターナショナル)ITセクション 月島 学氏、JFEスチール IT改革推進部長・理事 新田 哲氏、クラウドサービスベンダーの立場から日本マイクロソフト(以下、マイクロソフト)テクノロジーソリューションプロフェッショナル 高添 修氏、そしてストレージを中心に多くの顧客のクラウド化を支援してきたネットアップ ソリューション技術本部 執行役員 本部長 平松 貢氏を招いた。

またモデレーターは、マイナビニュース IT Search+編集長の星原 康一が務めた。

ディスカッションでは、まずIDOM、JFEスチール両社から、それぞれの現状が語られた。月島氏は、従来の中古車の売買以外に、定額乗り換えサービス、個人売買支援サービスなど、業務の幅を拡げていく中で「ビジネスやテクノロジーの急激な変化に対応しつつ、ビジネスを"即"展開させていくために、AWSを中心としたクラウドサービスを活用しています」と説明した。

2003年に旧NKKと旧川崎製鉄が経営統合して誕生した大手鉄鋼メーカー、JFEスチールでは、激変する昨今のマーケットにスピーディに対応するために、クラウドの活用を進めていると新田氏は言う。 「2015年からは、日本の東西にある製鉄所のメインフレームを、オープン系に刷新するプロジェクトに取り組んでいます」(新田氏)

2人のコメントからも分かるとおり、両社とも導入の決め手はシステム構築期間の短さ、スピード感だったという。

「激しい要件の変化に対応するためにPaaSにトライしたところ、構築を担当したメンバーから『開発のイメージが変わった』と言われるほどの短期間で完成させることができ、そのスピードにメリットを感じて使い始めました」(新田氏)
「設計や調達にかかっていた時間を解消するために、Webコンソールからシステム構築ができるAWSを使い始めたのがきっかけです」(月島氏)

これを受けて、マイクロソフトの高添氏は、両社が「試しに使ってみた」というところから導入を始めた点に触れ、「クラウドはトライファースト、つまり使ってみてダメならやめればいいという感覚で始めるのがいいでしょう」と、導入検討時にとるべきスタンスを語った。

「止まる」「連携」「使い分け」……利用してみて分かる課題

JFEスチール株式会社
IT改革推進部長・理事 新田 哲氏

続いて話題は「運用して気づいた課題」へ。まず挙がったのは「時々止まる」ということ。サービスが止まる理由について、高添氏は次のように説明した。
「クラウドベンダーはサービスを進化させないと他社との競争に勝てない、進化するにはソフトを変えねばならない、つまり(短時間ながら)止める必要がある……PaaSなら隠蔽できますが、IaaSはそれができていない。これがパブリッククラウドの現状です」。 加えて高添氏は「お客様が『これは止めてはいけない』と思い込んでいるサービスが、実は沢山あるように思います」と、常時稼動体制の見直しについて提案した。 「Microsoft Azureには、仮想マシンの自動シャットダウンを時刻設定できる機能もあります。従量課金なので、止めた分は安くなります。(必要のない時には)止めるのが当たり前になれば、クラウドの使い方も変化してくることでしょう」

二つ目のテーマは「クラウド連携およびオンプレ、クラウド基盤の使い分け」について。 ネットアップの平松氏は、利用者がポータルから要件を入力すると、自動的にオンプレかクラウドか、最適な基盤を選んでシステムを起ち上げる仕組みを整え、基盤の最適な使い分けを行っているという自社事例を紹介した。

プライベートクラウド2系統、パブリッククラウド、PaaSを併用するJFEスチールの新田氏は、ハイブリッド環境における連携についての課題を以下のように語った。 「オンプレの場合、開発・運用の中でナレッジが溜まり、何かあった時に以前の経験が活かせることもあります。しかしパブリッククラウドは『系』が違うため、例えばアップグレード後など、何が起こるか分かりません。『系』が違う部分をつなぐナレッジをどう溜めていくのかが課題です」

運用の手間以上に得られるメリット

日本マイクロソフト株式会社
パートナーセールス統轄本部 インテリジェントクラウドテクノリジー本部 テクノロジーソリューションプロフェッショナル 高添 修氏

最後のテーマは「運用の手間」について。月島氏は「ハイブリッドで様々なものを運用すれば、それぞれの運用統一化が行えず、手間が増える場合があります」と認めつつ「それ以上のメリットもあります」と、手間をポジティブに受け入れる姿勢を述べた。

「ベンダー側では運用効率化をどう考えているのでしょうか」との星原からの問いかけに、「設計から運用まで、基盤がMicrosoft AzureでもAWSでも、同様に利用できる製品をご提供してシームレス化に貢献しています」と、効率化を支えるソリューションを平松氏は紹介した。

一方、高添氏は「パブリッククラウドの面白いところは、運用のノウハウが外(ユーザー側)にあるということ。それをみんなで共有し、オンプレにも適用できれば、スピード感や変化にも対応できると考えています。 これまで通りを否定して新しい効率的な運用を考え、世界レベルのエコシステムをハイブリッドクラウドで実現していきたいというのが、当社の方向性です」と、ハイブリッドクラウドの進化への期待と、そこに携わるマイクロソフトの展望を語った。

クラウド化は目的ではなく、手段である

ネットアップ株式会社
ソリューション技術本部 執行役員 本部長
平松 貢氏

「ビジネスを素早く展開する手段として、今後もクラウドを活用していきたいと考えています」(月島氏)
「マルチクラウドにすることが目的だったのではなく、ニーズを実現するための結果として、現在のマルチクラウドになりました。今後もニーズありきの考え方で、様々なソリューションを積極的かつ適材適所で使っていきたいと考えています」(新田氏)

セミナーの主催者でもある平松氏は「今回のパネルディスカッションを通して、改めてクラウド活用の方法や目的の幅広さを実感しました。当社はクラウド利用のあらゆるケースにおいて、データのシームレスな利用と管理を行える『データファブリック』をコンセプトにしていますが、今後もこのコンセプトを追究し、お客様の成長や変革に寄与していかなければならないと、強く感じました」と語る。

「大切なのはハイブリッドクラウドが流行だからなのではなく、目的を実現するための手段だと認識して、最適なものを選択することでしょう」と星原はディスカッションを締めくくった。

(マイナビニュース広告企画 提供:ネットアップ)

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