ガスクロマトグラフ分析に起こったパラダイムシフト

2016年秋、アジレント・テクノロジーはガスクロマトグラフ(GC)の画期的な新製品「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」の販売を開始した。革新的な技術を搭載した新製品は、従来のGC分析においてボトルネックとなっていた操作上の煩わしさを一掃する。新システムは、質量分析計のフロントGCとして接続することも考慮されており、高スループットが求められる受託分析ラボや、複雑なマトリックスのサンプルを扱うラボに最適だという。

アジレント・テクノロジーは、ライフサイエンス、診断、応用化学市場のグローバルリーダーであり、GCのリーディングカンパニーである。初めてGC市場に参入した1966年以来、既に半世紀を経ており、GC関連の技術はもはや完全に成熟したものと考えられていた。

Agilent Intuvo 9000 GCシステム。革新的 (Innovative)、直感的 (Intuitive)、知的 (Intelligent) という思いが込められた名前だという

そんな成熟市場に投入された新製品「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」は、どういった経緯で開発され、どのような特徴を持っているのだろうか?

誰もが精度の高い分析を行えるよう、ゼロベースで構造を見直したAgilent Intuvo 9000 GC

既存製品の「Agilent 7890B GC システム」は市場からの評価も高く、GC製品としてはほぼ完成形に近いといえる。もはや成熟市場と考えられていたGC関連の技術だが、アジレント・テクノロジーが実施した100社を超えるユーザーインタビューの結果によれば、現場のオペレーターはもとよりラボマネジャーから経営者に至るまで、立場に応じた要望の存在がそこでは明らかになったという。

ユーザーインタビューで得られた要望は、パフォーマンスの改善よりも、「より良い結果をもたらすGC」を期待するものであった。メンテナンスの手間を減らし、ダウンタイムを低減することで、より多くのサンプルを測定できること、そしてより少ない投資で合理的なオペレーションができることを切望された。 そのためには、簡単な操作で、習熟時間を短くでき、操作ミスを減らせるような設計が必要となる。昨今のラボは、習熟した技術者が定年を迎え、後継者の採用や育成が困難となっている。また、オペレーターは複数の装置を操作し、重い責任を課せられながら、より多くのアウトプットを要求されている。こうした時代の要求からも容易なGCが求められているのだ。さらなるパフォーマンスを求める声よりも、「GCをもっと簡単に」、「多忙なラボにあった効率的なGCを」、「ビジネスの成果につながるGCを」という声が多数寄せられたという。

これらの課題を解決すべく、アジレント・テクノロジーでは「誰でもGCのエキスパートに」をテーマに、GCシステムの構造の抜本的な見直しを実施。見直しはカラム形状にまで及んだ。

GCシステムで使用するキャピラリカラムといえば、それなりの厚みがある。誰もがそう信じて疑わなかった常識をゼロベースで見直すことで、『Agilent Intuvo 9000 GCシステム』の平面カラムが誕生したのだ。カラムの厚みをなくした結果、同製品は課題解決につながる3つの技術の採用に至っている。

従来のカラムと「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」の平面カラム(右)

課題解決につながる3つの技術

3つの技術とは、「ダイレクトヒーティング」「フェラルフリーによるクイック接続」「ガードチップ」である。

ダイレクトヒーティング

まず「ダイレクトヒーティング」では、カラムの平面化により、従来の対流エアバス式オーブンではなく、カラムを直接ヒーティングできるようにした。オーブンが不要なため設置面積は従来の半分程度となり、消費電力も同様に抑えられる。一方で加熱冷却の高速化により、一件あたりの分析時間が短縮されスループットが向上するという。



フェラルフリーによるクイック接続

またカラムはこれまで、フェラルとナット、さらにスパナを使って取り付けられていた。このような器用さと慣れが求められる作業では、操作者の技術力により分析精度が大きく左右される。うまく装着できなければリークや吸着が発生することにより分析精度が低下し、トラブルシューティングに伴うダウンタイムが分析効率を下げる。再入手できない貴重な試料を扱っている場合などは、取り返しのつかないミスとなりかねない。

こうした問題を解消するのが、フェラルを使わない接続方式である「フェラルフリーによるクイック接続」だ。カラムの取り付けは、カチッとはめ込むだけで完了。音と感触で確認する直感的な作業に必要な時間は、わずか2分足らずに留まる。

ガードチップ

さらに、カラム入口に付着しやすい不要な成分を確実に捉えるために、すばやく簡単に装着できる使い捨てのチップを搭載した。これが「ガードチップ」だ。同技術により、従来のGCにつきものだった、カラムの面倒なトリミング作業やカラム同士の接続が不要となる。トリミングを行うと、保持時間(リテンションタイム)がずれるために、再校正が必要だったが、その作業も不要となり、稼働時間が増え、オペレーターのストレスは軽減される。

ダイレクトヒーティングの採用により、従来の対流エアバス式オーブンを搭載したGCと比べて、省スペース化を実現した

【新旧の比較映像】
これまでの方式の場合
https://www.youtube.com/watch?v=azUowh3qJ0w
Agilent Intuvo 9000 GCシステムの場合
https://www.youtube.com/watch?v=eOe_U-4Hbsk https://www.youtube.com/watch?v=Y5Lwj77DE80

ダイレクトヒーティングによる測定サイクル時間の短縮は、スループット向上に直結する。450 ℃から 50℃ (室温22℃)に戻すのに要する時間は3 分未満である。仮に1サンプルあたり1分ほどの時間短縮だとしても、大量のサンプルを扱う受託分析ラボなどでは、その効果は大きい。また、オペレーターをはじめとし、誰でも間違いなく操作できるため、研究者は本来取り組むべき仕事へ集中することができる。手間を要していたトリミング、再校正によるダウンタイムもなくなり、これらはまさに先の課題を解決する技術だといえるだろう。

検証実験の結果実証された、高い分析精度

「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」が、革新的な技術を採用し、ユーザビリティを画期的に高めた新製品であることはわかった。とはいえ、ユーザーにとって重要なのは、あくまでも分析精度の正確さだ。操作性改善のための機構変更が精度に影響するようでは本末転倒でしかない。

こうした不安を解消すべく、アジレント・テクノロジーではアプリケーションノートを提供。様々なアプリケーションで、その分析精度の高さ(再現性)を提示している。ここからはその中からいくつかを紹介しよう。

環境分野における検証例 – SVOCに関する分析、全石油炭化水素(TPH)分析

環境分野では、半揮発性有機化合物(SVOC)について分析を行ってみた。SVOCは、環境中の大気や濃縮されていない土壌などに豊富に存在し、環境汚染物質として知られるものも多い。酸性、塩基性、中性とSVOCの代表的な化合物対して分析を行った結果、「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」は従来の7890GCと同じ精度を示した。

SVOCに関する分析結果。Agilent 7890 GC (A) と Agilent Intuvo 9000 GC (B) による SVOC 標準のノーマライズ後の TIC。分析条件等は、アジレントのアプリケーションノート (5991-7181JAJP) 参照

環境分野では、単環芳香族炭化水素を対象としたテストも行われている。全石油炭化水素(TPH) 分析では、これまで分析時間の長さが問題となっていた。C40ぐらいになると一般的な分析でも30分程度かかっていたのだ。ところがIntuvoのダイレクトヒーティングでは昇温レートが250℃/min、つまり1分で250℃まで上げられるため、わずか3分で分析できる。また、「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」はコンパクトであるため、クルマに積み込んで現場に運ぶなどオンサイトでの分析も可能だという。

TPH 土壌抽出物サンプルのクロマトグラムの重ね書き。高速GC条件により、1回の分析を約3分で完了。分析条件等は、アジレントのアプリケーションノート (5991-7219JAJP) 参照

化学分野における検証例 – 硫黄化合物分析

化学分野では、ガソリン中の硫黄化合物に関して検討してみた。硫黄含有成分は臭気があり腐食しやすいため、個別に硫黄含有成分のみのモニタリングが重要だ。このケースでは「Agilent 8355 化学発光硫黄検出器(SCD)」を組み合わせた試験を行い、従来のGCシステムと同等の性能が確認された。

NIST SRM 2299 (A) および 2298 (B) のクロマトグラム。Agilent 8355 SCD と 30 m の Agilent IntuvoDB-1 カラムを搭載した Agilent ¬Intuvo 9000 GC システムは、同一の検出器とカラムを組み合わせて搭載した従来の GC システムと同等の性能を実現。分析条件等は、アジレントのアプリケーションノート (5991-7179JAJP) 参照

これらアプリケーションノートは、既に複数提供されており、国内でも順次その公開が進められていくという。

まとめ

ここまで紹介してきたとおり、Agilent Intuvo 9000 GCシステムは、誰でもエキスパートのように使いこなせる次世代のGCだといえよう。

先の技術では触れなかったが、効率性向上に関しては、フローチップとカラムに搭載したスマートキーも役立つ。これにより流路構成を自動的に検出し、使用状況のモニタリングと履歴をチェックが可能だ。カラム劣化を進めるような高温での使用なども記録が残るために、適切なタイミングでのカラム交換が可能となり、精度向上に貢献する。きわめて知的なGCとなっている。

また、GC前面のタッチスクリーンで、機器のステータス情報がリアルタイムに確認できるほか、メンテナンス手順などの情報を見ることができ、直感的な使用が可能である。直感的な操作とユーザーを補助するインテリジェントな機能により、研修にかかるコストなどを削減できる。さらに、スループット向上も可能だ。スループットの向上は電力削減にもつながっており、環境にもやさしい。「Agilent Intuvo 9000 GCシステム」は、まさに革新的、直感的、知的なGCである。

関連URL

Agilent Intuvo 9000 GC システム
http://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1004401
[ビデオ] Intuvo がより高いビジネス成果へと導く
http://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1004422

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