「マイナビニュースフォーラム2016 winter forデータ活用 IoT時代の機先を制す」が12月7日に開催された。同フォーラムでは、日本ヒューレット・パッカード プリセールス統括本部 ソリューション技術部 シニアスペシャリスト 小森 博之氏が「シフトレフトで実現するIoTのデータ活用」と題した講演を行った。本稿では、同講演の内容を紹介していく。

機器のモニタリングだけでなくビジネスモデルの転換をIoTで実現

日本ヒューレット・パッカード プリセールス統括本部 ソリューション技術部 シニアスペシャリスト 小森 博之氏

講演の冒頭で小森氏は、Kaeser Kompressoren社のIoT事例を紹介した。この事例は、エアコンプレッサーを扱う同社が、機器にセンサーをとりつけてリアルタイムデータを収集し、故障発生前に兆候を掴めるようにするというもので、機器の故障対応力を向上させたという単純な話ではない。リアルタイムモニタリングによって、「機器の利用者」と「保守を行うメーカー」という立場から、「圧縮空気の使用量を購入するユーザー」と「運用保守を行うサービス会社」という形へとビジネスモデルの転換を行った活用例だという。

小森氏は、同事例について「単にIoTによるリモートモニタリングをしたという事例ではなく、ビジネスモデルの転換まで行ったのが特徴的」と説明。ビジネスにIoTを活かすためには通常時のデータを蓄積した上で分析し、さらにその分析結果をストリーミング/リアルタイム分析に反映させる必要があると解説した。

加えて、風力発電の風力タービンをモニタリングしたデモンストレーションも紹介。機械学習を利用した予測モデルの開発から、その利用によるストリーミングデータ監視とあわせたスコアリングや、ストリーミングデータの可視化、リアルタイム分析とその可視化といった機能について語った。

シフトレフトを実現する「HPE Edgeline IoT システム」

続いて小森氏は、IoTがビジネスモデルの転換や、社会インフラの維持などに使われるようになった状況を受けて、近年提案されてきている「シフトレフト」という仕組みを紹介した。

従来、IoTの手法では、測定対象側であるエッジと、データの蓄積・分析を行うデータセンターおよびクラウドという形で分けて考えられてきた。エッジ側で取得したデータのすべてを送信するか、何らかの選別を行って送信するかという違いはあっても、エッジからデータ蓄積場所に対しては大量のデータがネットワーク越しに送信される。そのため、これまではデータの送信時の遅延が発生しがちで、この状況を防ぐために帯域を確保すると大きなコストが発生するという問題があった。また公衆回線を利用した送信では盗聴等の脅威もあり、国境をまたぐデータ送信に規制がある国とのデータのやり取りも課題となっていたという。

これらの問題に対応すべく、リアルタイム分析や制御といった部分をデータセンター等に送った後ではなく、エッジ側で処理しようという考え方がシフトレフトだ。大量データの送信が不要になることでデータ取得から分析までの時間が短縮され、より迅速なアクションを起こせるようになる。

小森氏は今までシフトレフトが実現できなかった理由について、「エッジ側に設置して分析できるスペックのサーバが存在しなかったからです。工場等への設置も考えると小さくて幅広い温度に対応できる必要があります」と説明。「そのための製品としてHPE Edgeline IoT システムを作りました」と語り、HPE Edgeline IoT システムのラインアップ4機種について紹介した。

シフトレフトの概念図

データ分析を高速化するアーキテクチャ「HPE Vertica」

小森氏はこのほか、IoTにより取得されるデータの特長について説明。「IoTにより取得できるデータは量が多く、ピーク値や欠損などを含む質の悪いデータなため、柔軟な処理が必要です。また分析に重要となる履歴を含むデータは削除されず常に増え続けていく。そのためローディングと検索の高速さが求められるのです」と語った。

リアルタイムデータとバッチ処理を分けて実行するラムダ・アーキテクチャにも言及し、リアルタイムのデータを分析して、アクションに繋げる重要性を解説。データ保持をHadoopで行いながら高速なアーキテクチャを組み合わせて分析を実施している企業として、FacebookやTwitter、DeNAの事例を示した。

次に、Hadoop上に収集したデータの効率的な分析を実現するためのデータベースとしてHPE Verticaを紹介。検索に特化した高速なアーキテクチャで構成されるHPE Verticaは、従来のデータベースが行指向であるのに対して、列指向であるために少ないI/Oで必要なデータのみを取り出せる点が特長。さらに列指向により圧縮が行いやすく、多くのデータをメモリ上に格納可能なため、高速な処理も実現できるという。またマスターノードを持たないためにノード追加によるリニアな性能向上が可能で、無限にスケールアウト可能であることも強調する。

このほか小森氏は、HPE Verticaについて、「Projectionという機能で、特に速く行いたい検索については、検索に最適な形にデータを並べ替えて必要な列だけ用意する形でさらに高速に処理することも可能です。またIoTでの利用にあたっては、必要となる機会学習アルゴリズムもいくつか提供しています」とアピール。全機能を期限なしで試用できる「Vertica Community Edition」も紹介し、講演を締めくくった。

(マイナビニュース広告企画:提供 日本ヒューレット・パッカード)

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