ここ2、3年で「地方移住」に対する関心が高まりつつある。2014年に安倍内閣総理大臣記者会見で発表された「地方創生」といった政策をはじめ、国や地方自治体でも、地方の過疎化に歯止めをかけ、地域の活性化とその好循環の維持実現を目指すために移住者を募る様々な施策が行われている。しかし、実際に移住を考えている人はどのくらいいるのだろうか。

マイナビニュースで会員200人に行った「地方移住に関するアンケート」では、「地方に移住して働いてみたい」と答えた人が49.5%と、移住を検討している人は決して少なくないという結果となった。一方で、実際に移住する際に悩む理由として、57.6%が「仕事がなさそう」、53.5%が「既に形成されたコミュニティに入るのが難しそう」と答え、仕事の問題や知り合いがいないといった不安を抱えていることもわかった。

「地方に移住して働いてみたいですか?」というアンケートの結果はほぼ半々となった

本アンケートを背景にマイナビニュースでは、地方をテーマにした企画などを特集する月刊誌『ソトコト』の編集長で、「地方移住」に関するトークイベントで全国を駆け巡っている指出一正氏にインタビュー。地方移住の実情や魅力について伺った。

指出一正(さしでかずまさ)。1969年群馬県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業。ソーシャル・エコに注目した雑誌『ソトコト』の編集長。「地方移住」に関する様々なセミナーに登壇するほか、各地の地域づくり事業のディレクターを務め、『ソトコト』200号の発刊を記念し開催される「出張トークイベント行脚」などで全国各地を巡る


「地方に仕事がない」は誤解、起業のチャンスも

――まずは今回マイナビニュースで行ったアンケートで、多数の方が不安に思っている「移住して仕事があるのか」という疑問についてお伺いできればと思います。実際のところ、地方での就労状況はどういった感じなのでしょうか?

仕事はあり余るほどありますよ。これは声を大にして言いたいですね。例えば、カフェの経営やゲストハウスのオーナー、神社の宮司さんになってほしいということを言っている地方の方々もいましたね。

――神社の宮司さんですか!? あまり聞かない募集内容だったので、思わず驚いてしまいました。

そのほかにも、都心では想像できないような仕事が地方だとたくさんあります。むしろ1人で2つも3つもいろんな職種をかけもちしないと社会が回らないくらい地方では新たな力が加わることを待っています。

――アンケートでは「飲食店などを開業し、経営者として働く」と、地方で起業したいという意見もありました。

起業するチャンスもたくさんあります。例えば、観光で活気のある島の関係者から「おいしいコーヒーを淹れるお店が一軒もない」と言われたことがあります。だったらおいしいコーヒーを淹れられる人がそこに行って起業したらいいですよね。地方によって求められることは違うかもしれませんが、様々な需要はあると思いますよ。

――とは言え、起業したところでやっていけるのか、不安な方も多いと思います。

実際の例をお話しましょう。島根県の石見地方にある江津市には「蔵庭」というベーカリーカフェがあります。東京から移住した若い夫婦が大きな蔵庭がある場所を改装して開いたお店ですが、そこは市や県をまたいで大勢の人がやってきて繁盛しています。オーガニックフードを出すというお店がそれまで近くになかったので、多くの人が遠くからもやって来るんです。

あらゆる種類のお店が多い東京だったら埋もれてしまうかもしれないですよね。でも実は都心から離れれば離れるほどそういった発想に光があたり、価値が高くなるのです。そういう視点で言うと、仕事そのものもうまくいく可能性が高いです。

コミュニティは東京と大きく違わない

――アンケートでは、「既に形成されたコミュニティに入るのが難しそう」という意見も多く見受けられました。地方で働きたいが、見知らぬ土地で新たに人間関係を築くことに不安を覚え、二の足を踏んでしまう人もいると思います。実際、都会からの移住者を地方の人々は歓迎しているのでしょうか?

先ほども述べたとおり、地方の人は基本的に都会から来る人を待っています。日本では、地方のコミュニティが堅苦しくて居心地が悪いという強迫観念や既成概念があまりにも広がり過ぎているようにも思いますね。

――実際はそうではない?

実際に行ってみたら、杉並区から中野区に行く程度のコミュニティの差異しか感じないと思いますよ(笑)。「地方」と言うとすごく距離があるように感じますが、そこに住んでいる人たちはテレビやインターネットなどを通じて大都市に住む人と同じ情報を享受しています。インターネットを使えば、買い物も不自由なくできます。

地方のレイヤーとしては、すごく豊かな山があるとか水があるとか、農産物がたくさんあるというのがありますが、コミュニティ自体は東京とそれほど差がなかったりします。ただ、土地になじむために、自治会に参加すべきだという意見を持つ町もありますので、そういう人付き合いが合う・合わないというのはあるでしょう。


ここまでのインタビューで「地方移住」に関する誤解が数多くあることがわかった。しかし、実際のところ、地方移住にどれ程の関心が集まっているのだろうか? 後半では引き続き指出編集長にインタビューして分かった、地方移住の実情について紹介する。後編記事はこちら

指出編集長が登壇する「ローカルキャリア形成講座」が2月に開催

今回インタビューした指出編集長が出席する「ローカルキャリア形成講座」のひとつ『山の仕事、町の仕事ナイト』が2017年2月11日に開催される。本イベントは2016年8月30日に台風で被災した岩手県・岩泉町で募集している地域おこし協力隊についての説明や実際に移住した方のお話があるで興味のある方はぜひ参加していただきたい。イベントの詳細・参加申し込みはこちら

 

『山の仕事、町の仕事ナイト』の詳細はイベント特設ページで紹介

指出編集長が執筆した新書が発売中

タイトル:ぼくらは地方で幸せを見つける (ソトコト流ローカル再生論)

定価:本体800円(税別)

内容:人口増加や経済効果重視の観光化ではなく、若い世代が中心になったユニークな活動で、全国の注目を集める地域がある。未来への手ごたえを感じ、仲間を巻き込みながら、地元の底力を引き出す秘訣はなんなのか。「若者」×「ローカル」に学ぶ経済+暮らしのヒントを、月刊『ソトコト』編集長が語る。

アンケート調査機関

調査時期: 2016年11月24日
調査対象:マイナビニュース会員
調査数:200名
調査方法:インターネットログイン式アンケート

(マイナビニュース広告企画:提供 岩泉町)

[PR]提供:岩泉町