グローバル展開の成否を左右するようになった「ネットワーク品質」

日本企業の海外展開が進むなか、グローバルレベルでのシステム構築や運用が大きな課題になってきた。システムにおける課題のなかでも特に担当者が苦労しているのが、「ネットワークの品質をいかにして担保するか」だ。

今日ではクラウドサービスが普及し、インターネットを使った電話会議や、テレビ会議が当たり前のように使われるようになっている。だが、インターネット回線は国によって整備状況がまちまちであり、国によっては、通信が頻繁に切れたりまったく通じなかったりすることもある。ネットワーク品質が悪く、大事な商談や社内の意思決定が首尾よく進まないという苦い経験をした人も少なくないはずだ。

また、セキュリティ面での課題も残る。進出地域によってはデータセンターやプロバイダーの運用体制に課題があったり、要求に満たないSLAしか提供できていなかったりもする。これらの問題を回避するために、事業のコアになる重要なデータを専用線で送受信して、セキュリティを担保しているケースもあるだろう。特に、金融系企業では、重要データの送受信にインターネット回線そのものの利用を制限している場合も多い。

そのような状況のなか、企業にとって朗報となったのが、マイクロソフトが提供を開始した閉域網接続サービス「ExpressRoute」だ。2015年初頭にMicrosoft Azure向けに提供が開始され、同年12月にはOffice 365向けの「ExpressRoute for Office 365」がリリースされた。

「ExpressRoute for Office 365」サービス概念図

ExpressRoute for Office 365を用いることで、インターネットに起因するネットワーク品質やセキュリティの課題とは無縁になり、ネットワークプロバイダーにより管理され、安定した回線のもとでの通信が可能になる。このExpressRouteとの接続サービスについて、新たなネットワークサービスプロバイダーとして参入し、注目を集めている企業がシンガポールテレコム(以下、シングテル)だ。

シングテルは、世界22カ国40都市でグローバルICT事業などを展開するAPAC最大級の企業だ。近年ではITセキュリティ分野において、米国のマネージドセキュリティサービスプロバイダーであるTrustwave社を買収し、企業のIT戦略を考える上で基盤となるグローバルネットワーク、クラウドとセキュリティサービスを武器に積極展開している。日本国内でも大手製造業を中心に顧客を増やしており、アジア展開する企業の間では広く知られた存在だ。

APAC経済のハブとして、グローバル企業がアジア進出を行う際の要衝となっているシンガポールには、多くの企業がAPAC地域の統括拠点を置いている。シングテルが提供しているExpressRouteとの接続サービスは、そんな海外展開を進める企業にとって多くのメリットを与えるものだ。本稿では、このサービスの特徴とメリットを具体的に見ていきたい。