さまざまな分野で活用されているビッグデータは、医療・創薬界でも注目を集めている。今年4月には政府が新薬開発を効率化するために、患者のデータを収集しやすくする仕組みづくりに乗り出すことを表明している。また、京都大学大学院医学研究科の奥野恭史教授をリーダーとしたIT創薬プロジェクトも進んでいる。HPC(スーパーコンピュータ)を駆使して膨大なデータを扱うこのプロジェクトを、インフラ面で支えているのがヴァイナスだ。

ヴァイナスはCFD(流体解析)ソフトウェアの開発と販売サポートを手がける企業で、そのユーザーは名だたる機械メーカーや大学をはじめ、国内だけで500を超える。IT創薬プロジェクトでは、タイプの異なるHPCを高速・円滑に利用できるようにする必要があるため、京やFOCUS, AWS, Azure, SoftLayerなどのスパコンをものづくりで養ってきた利用技術を、社内とクラウドコンピュータの総合利用支援システム「CCNV」として開発し、その運用サポートまでを手がけけることを目指している。

そんな同社では、2016年10月13~14日に、「VINAS Useres Conference 2016 大規模解析・最適設計・ワークフローマネージメントのための総合ソリューション -オープンソースとクラウドコンピュータの設計利用-」を開催する。

本稿では同カンファレンスに先立ち、ヴァイナスの代表取締役社長 藤川泰彦氏に、同社が医療・創薬分野に参入した理由や、大規模解析で浮上してきた課題と、その解決策などについて伺ったのでその内容を紹介する。

大学での研究成果を、創薬に結びつけるために

ビッグデータを扱うという点で機械製造と共通項はあるものの、医療・創薬は同社にとっては未知の分野だったと言える。あえてそこに参入した理由について、藤川氏は三つの理由を挙げた。

ひとつ目はもちろん、機械製造の分野で築き上げたノウハウが、医療プロジェクトでもコスト面・技術面の課題解決に役立てられるという確信だ。CFDにしても創薬にしても、高度な物理モデルを利用し、商用ソフトで高解像度解析、連成解析を行おうとすれば、巨額のコストと高度な専門知識が必要となってくる。これに対してヴァイナスは、ニーズの高いオープンソースコード(以下、OSS)である「OpenFOAM」を、クラウド利用するためのシステムをフルターンキーで提供し、周辺サポートまで手がけるサービスを展開している。

このサービスを利用すれば、計算ごとに請求されるソフトのライセンス料金はかからなくなり、またシステムの設計・保守のために専門スタッフの雇用も必要なくなる。人命に関わる創薬のスピードが上がり、開発コストを圧縮できれば、大きな社会貢献になるだろう。

ふたつ目の理由としては、機械製造よりも巨大なデータを扱う医療プロジェクトに参加してビッグデータ活用のノウハウに磨きをかけたりAI技術などを機械製造にフィードバックすることで、今の技術をさらに加速させたいという考えがある。

最後は機械分野では進んでいる「技術の産業利用」を、今後、医療・創薬分野でも進められるようにサポートしていきたいという思いだ。

ヴァイナス 代表取締役社長 藤川 泰彦氏

「機械製造の業界では、アカデミアで生まれた技術の産業利用が進んでいます。たとえば東京大学生産技術研究所で開発されたプログラムは、自動車や重工業業界で設計現場で使われるようになっていますが、医療分野には今後、同様の展開ができる可能がが大きく存在しています。大学の研究で得た素晴らしい成果を、民間の製薬会社の方々が効率的に利用できるようにして、具体的な創薬に結びつくよう、数値解析エンジニアの立場から我々が仲立ちしたいと考えています」(藤川氏)

クラウド時代の課題を解決する、ヴァイナスのソリューション

OSSやクラウド利用の環境が整ってきた今、大規模解析は以前より容易になりつつあるが、最近になってクラウド、OSSならではの課題も次第に現れてきたと藤川氏は言う。

「たとえば特殊な計算機能を持つHPCは需要が高く常に混雑状態で、インスタンスの確保が難しい。そこで別のクラウドサービスを使って計算しようとすれば、サーバごとに異なる利用方法(ジョブキューイングなど)に対応できる知識が必要となってきます。なんとか代替サーバを用意できたとしても、そこに使いたいアプリケーションが入っているとは限らず、入っていても、バージョンが違えば結果に差異が生じてしまう。その他にもデータ転送料金の高さや、計算時間と契約期間のミスマッチなど、いくつもの課題が連鎖的に生じてくるのです」

ヴァイナスでは、こうした新たな問題の解決を目的としたソリューションも提供している。そのひとつが、IT創薬でも利用されようとしているクラウドコンピュータ利用支援システムCCNVだ。京、FOCUS、AWS, 、Softlayer、Azure など、複数のHPCを利用する際、ワンクリックで使いたいサーバを切り替えられる。またすべてのHPCの利用方法に精通していなくても、CCNVに用意された共通のコマンド、GUIを使って操作ができる。

最大の特長は「ALA」(Application Library Access)と呼ばれる機能だ。CCNVにはニーズの高いアプリ(FrontFlowBlue、FrontFlowRed,OpenFOAM、HELYXなど)が実行形式でプレインストールされており、HPC側の環境を気にする必要はなくなる。しかも各アプリは、京用、FOCUS用、AWS用…と、HPCのタイプにあわせてチューニングされたものが用意されているので、ユーザーは使いたいアプリと、それを実行するHPCをリストから選ぶだけで、最適な計算環境を整えられるのだ。

現在のライブラリには、ニーズの高いアプリを中心に登録されているが、将来的には特殊な計算に特化して開発されたアプリにも対応していくという。

「クリック操作だけでアプリやサーバを切り替えるという、これまでにない考え方でつくられたシステムです。ライブラリのアプリは基本的にOSSで揃えますから、ライセンス料金はかかりません。大規模計算に携わられる方には、CCNVをアプリのプラットフォームとしてご利用いただきたいと考えています」(藤川氏)

CCNV利用イメージ

多角的なサポートで、スピーディな創薬に貢献

ヴァイナスでは、CCNVの他、人気の高いHELYXをクラウド利用することでライセンス料金の発生を抑える「HELYX on Cloud」や、クラウド環境でのアプリ管理サービス「VECAMS」、OSS利用にまつわる周辺サポートを網羅した「OPASS」などを展開。クラウドとOSSの活用を包括的にサポートし、その利用を促進している。

「HPCや大規模なIT利用は難しいと思われがちですが、その周辺利用技術のサポートを我々が行うことで、医療・創薬分野でのビッグデータ利用が進み、スピーディな創薬に貢献できれば幸いです」と、藤川氏は展望を語る。

VINAS Useres Conference 2016では、同社がインフラをサポートする創薬プロジェクトの最新レポートや、HPCの利用事例が紹介される予定だ。創薬の最先端がどの方向を目指しているのかを見極める、絶好のチャンスとなるだろう。

カンファレンスの詳細は以下の通り。

会 期 <DAY 1>2016年10月13日(木) 9:30~18:30、懇親会18:30~20:30
(受付開始 9:00)
<DAY 2>2016年10月14日(金) 9:30~16:45(受付開始 9:00)
会 場 東京コンファレンスセンター・品川 5F大ホール 402会議室
※最寄駅 JR 品川駅 中央改札港南口(東口)より徒歩2分(駅からペデストリアンデッキで直結)
対 象 エンドユーザー
※ヴァイナスの販売ソフトウェアとサービスを利用・検討中のユーザー。
※ユーザー会につきベンダー等の方は参加をご遠慮頂く場合がございます。
参加費 無料(事前登録制)
参加登録申込 https://www.vinas.com/news/modules/eguide/event.php?eid=141
※お席に限りがございますのでお早めにお申込願います。
主 催 株式会社ヴァイナス
プログラム http://www.vinas.com/ugm2016/program.html

(マイナビニュース広告企画:提供 ヴァイナス)

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