滑らかな階調性と色かぶりのない正確な発色

ベンキュージャパンの「SW2700PT」は、Adobe RGBカバー率99%の広色域を誇る27型液晶ディスプレイだ。付属ソフトによるハードウェアキャリブレーションに対応しながらも、実売約8万円という求めやすい価格を実現。その画質や機能、使い勝手はどうなのか。カメラや周辺機器に強いこだわりを持つフォトグラファー永山昌克氏に、実際に使ってみてもらいその使用感をうかがった。

ベンキュージャパン「SW2700PT」

――「SW2700PT」は、フォトグラファー向けをうたう広色域27型液晶ディスプレイです。実際に使用してみて、どういう感想を持ちましたか?

最初はキャリブレーションをせずに工場出荷の状態で使ってみましたが、そのままでも十分使える、という印象を受けました。自分が液晶ディスプレイを購入したり比較したりする際に、試しに表示するチェック用の写真をいくつか持っていますが、それらを表示してハイライトからシャドウまでの滑らかな階調と、偏りのないクリアな発色を確認できました。

――SW2700PTは、付属するキャリブレーションソフト「Palette Master Element」、およびX-RiteまたはDatacolor製の対応測色センサーを使ってハードウェアキャリブレーションができます。そちらもどうでしたか?

画面表示される指示に沿って進めるだけのシンプル操作で、すぐにキャリブレーションができました。実は工場出荷の状態がよかったので、今回はキャリブレーションの前と後で発色が大きく変わることはなかったのですが、長く使い続ける場合は当然、定期的なキャリブレーションが必要です。ただ一般的にキャリブレーションは意外と面倒で、できるだけ手間をかけたくない作業でもあります。だからこそ、このシンプルな操作性はありがたいですね。

――IPSパネル+LEDバックライトを採用し、Adobe RGBカバー率99%や、10-bitパネルによる10億7,000万色の表示、14bitの3D LUTによる厳密な色再現といった特徴を備えています。これらの性能は実感できましたか?

仕事でも作品でも全カットをRAWで撮影し、アドビ システムズのLightroomを使って現像時に色や階調を追い込む、というのが私のふだんのスタイルです。最終的な出力ファイル形式はTIFFまたはJPEG、色空間はAdobe RGBまたはsRGB、といったように仕上げ方は用途に応じてまちまちですが、どんなときでもレタッチや現像の工程では、元データの色と階調をしっかり確認しながら作業を進める必要があります。そのため、微妙な色の違いも正確に表現できるAdobe RGBカバー率99%の広色域や、暗部から明部までの階調を滑らかに再現できる10-bitパネルはとても心強く感じました。

非光沢のアンチグレア仕上げを採用し、ディスプレイ表面への映り込みが少ないことや、上下左右への十分な視野角を備える点も気に入りました。

アスペクト比16:9、解像度WQHD/QHD(2560×1440)のIPSパネル+LEDバックライトを採用。作業領域が広く、レタッチやRAW現像も快適に行える

「Palette Master Element」のトップ画面。X-Rite/Datacolor対応測色計を用いてディスプレイのカラーエンジンを微調整できる
※対応測色計 : X-Rite i1 Display Pro / i1 Pro / i1 Pro 2 & Datacolor Spyder 4 / Spyder 5

Adobe RGB99%をカバーする広色域と画素密度109ppiの高精細を誇り、写真の細部までをくっきりと表示できる