浜野製作所は、深海探査艇や電気自動車・人型ロボットといったさまざまな分野の製造に関わり、今もっとも注目を集める金属加工工場だ。7,800mの深海で世界初の3D撮影に成功した深海探査艇「江戸っ子1号」や、日本テレビ開局60年記念の「リアルロボットバトル日本一決定戦!」で準優勝を果たした「下町ロボット・風神」などの製造に携わり、「製造業版ディズニーランド」という新しいカタチのものづくりを目指している。

そんな彼らが2014年5月にオープンしたのは、開発・設計から試作・量産までをトータルサポートするものづくりの総合支援施設「Garage Sumida(ガレージスミダ)」だ。施設に並ぶデジタル加工機はいかにして選ばれ、どんなものを生み出しているのか。同社 経営管理部の岡達己氏に話を聞いた。

2014年5月にオープンした「Garage Sumida」。下町ロボット・風神の姿も

「こんなものを作りたい」を実現

東京・墨田区にあるGarage Sumidaの社屋は、赤と黄色でカラフルに塗り分けられている。社員は36名で、平均年齢は30代前半と若さ溢れる会社だ。主な業務はプレスや板金を中心とした金属加工だが、一品ものの製造を請け負ううちに、設計開発にも携わるようになった。クライアントは上場企業からベンチャー企業、さらには医療業界、エンターテイメント業界に至り、多種多様な筐体・部品・治具などを作り続けている。

Garage Sumidaでは、3Dプリンターやレーザーカッター、3D切削加工機(CNC加工機)といった最新のデジタル工作機器を備え、「こんなものを作りたい」という相談に工場の職人が直接応えてくれる。

全国各地からやってくる相談は年に200件ほど。2015年にグッドデザイン大賞を受賞した電動車いすを製造・販売する「WHILL」もGarage Sumidaを訪れたうちの一社だ。当時、試作品はすでにできあがっていたが、職人の手作りではなく台湾の工場で量産するためには、加工機械に適応した図面を引かなければならなかった。そしてGarage Sumidaで生産された最初のロット数十台は、話し合いを重ねて、機能的・デザイン的なこだわりを壊さないようにしながら、コストに見合った形へと作り上げていったという。

ここ数年で、デジタル工作機器を備えたものづくりスペースはあちこちに誕生している。しかし、Garage Sumidaではこうしたものづくりスペースとは違った姿を見せている。その理由として、試作品がひとつできた“次”の段階において、ものづくりをよく知る「工場の職人」と話をしながら、加工ノウハウをもとに量産まで行える仕組みと技術が整っているためだ。

「使いやすさ」が最大の魅力

浜野製作所 経営管理部
岡達己氏

開発・設計から試作・量産までをトータルサポートするGarage Sumidaが選んだ3D切削加工機は、大型カラープリンターを中心にデジタル機器を提供するローランド ディー.ジー.の「MODELA ProII MDX-540S(以下、MDX-540S)」だ。

同製品を導入した理由と効果について岡氏は「『使いやすさ』、『コスト』、『クオリティ』の3つのバランスが非常によかったのです。また当社は、設計の知識も金属加工の知識も持っているような、ゼネラリスト型の職人を育てていきたいと考えています。そのため、MDX-540Sはマシニングセンタへとステップアップする入り口、つまり最適な人材教育のツールとして役にたっています」と、説明する。

しかし、使いやすいからといって精度が劣るわけではない。

先日、ある皮革工場から「革の製品加工のための『型』を安価に、小ロットで製作したい」という相談があった。「50個~100個」かつ「モデルチェンジが容易」という条件を満たす工法として、岡氏は鋳造を提案。砂型鋳造用の型は3D切削加工機が得意とする分野で、従来の職人が手で鉄を削っていた時に比べ、コストも納期も半分以下に抑えることができたのだ。

精密な切削加工を実現する高精度モデル「MDX-540S」

金属へのプリントに挑戦

Garage SumidaはMDX-540S以外にも、ローランド ディー.ジー.が提供するUV-LEDプリンター「VersaUV LEF-12(以下、LEF-12)」も導入している。同製品は、紫外線(UV)で硬化するインクを利用することで、樹脂や皮革にもプリントできる製品だ。

「LEF-12の導入は、印刷品質を重視しました。他社には印刷スピードが早いなど、特長のある製品もありましたが、以前3Dプリンターを導入した際、まともな造形ができずに壊れてしまったことを思い出し、クオリティを重視した機器を選定しました。結局、成果物の品質を考えずに導入した、安価な3Dプリンターでは『何ができるのか?』ということを理解し、ビジネスに生かすことができませんでした。UVプリンターも、適当なものを買ってしまったらきっと同じことが起きると思ったのです」(岡氏)

最大100mmまでの高さの立体物に直接プリントできる
UV-LEDプリンター「LEF-12」

3D切削加工機の場合、利益を生むには何かと組み合わせることが必要で、試作品を作った後にそれを量産するのは別の手段となる。しかし、UVプリンターは印刷や加飾をすることが可能で、作ったものがそのまま製品になる。

金属加工を主力とする浜野製作所では、現在特別な手法を用いて金属へのプリントにチャレンジをしている。岡氏は、「金属へのプリントはそのまま印刷すると、インクがはがれやすく、むらになりやすいため、容易なものではありませんでした。さらに、印刷環境が良くないと気泡が入ってしまうといった問題もあります」と当時を振り返る。

この問題に協力したのは、同社が開催したインターンの学生たちだ。Webサイトで公募したところ、東京大学や慶應大学、金沢工業大学などから学生たちが集まった。そこでは、日々加工条件を変え、金属に色を定着させる方法を研究していた。そして、浜野製作所で使用している下処理材とグロスインクを上手に使うことで、「金属にも色がつけられるプリンター」であることを実現させたのだ。このように、金属加工から着色までできる業者はきわめて少ないといえるだろう。

インターンの学生たちが金属にプリントした成果物

夢は自らの手で最終製品を

浜野製作所がGarage Sumidaをオープンした狙いのひとつは「研究開発」だ。「設計」の次の段階、「企画」まで自社でできるようにし、いずれは最終製品を生み出していけるようになりたいというものだ。そのためには、表面処理や樹脂加工のノウハウを身につけることが必要で、「仕事をしながらノウハウを学んでいこう」という思いが背景にある。つまり、浜野製作所の敷地内にある「ガレージ」は、最前線に置かれた「研究所」でもあったのだ。

「新しい仕事の相談をいただくには、われわれが『新しいことをやっている』ことを見せなければなりません。そのためにデジタル加工機を入れていますが、手軽だったらなんでもいいというわけではなく、本業の金属加工につながるクオリティのものを選びました。ここで企画力を身につけ、いずれは自社で『こういことができますよ』という提案をしていきたいです」と、岡氏は自社の将来像を語るとともに、ものづくりスペースとして新たな挑戦に臨んでいる。

(マイナビニュース広告企画:提供 ローランド ディー.ジー.)

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