AIは業務改善に役立つのか? まずは自分たちの業務で検証へ

既成概念に囚われないユニークな発想の商品で知られる「無印良品」をグローバル展開する良品計画。製造小売業として、衣料品から家庭用品、食品など日常生活全般にわたる商品群を有する同社はいま、直営店を含め国内約400店舗、海外約300店舗を展開。近年のグローバル事業への注力を受け、数年以内には海外の店舗数が国内を上回る計画である。

無印良品 有楽町 内観

そんな良品計画で常に課題となっているのが、顧客のレジ待ち時間をいかに解消するかだ。店舗ごとにレジの数や人員配置を最適化していても、夕方などの繁忙時間にはどうしてもレジ前に行列が発生してしまう。昨年春より、有楽町店で試行的にセルフレジを導入し効果を上げているものの、すべての顧客にセルフレジを使ってもらうのは難しい。

そこで昨年の初め、良品計画の情報システム部門が注目したのが、何かと話題となっているAIだった。AIを活用することで、レジ待ち時間のみならず、店頭や商品開発フローといった同社のコア領域における業務改善ができないか、具体的に検討していくことにしたのである。

同社 情報システム担当部長 山崎裕詞氏

同社 情報システム担当部長の山崎裕詞氏は、その経緯をこう説明する。「AIという言葉自体は誰もが知っていても、ディープラーニングや機械学習といった専門用語となると、上層部に行くほど馴染みが薄いものでした。なので、まずは自分たちIT部門の業務でAIを使ってみて、そこで実績をつくってから全社的な業務改善への活用を提案していこうとなったのです」

最初のAI導入業務として山崎氏らが選んだのが、自社開発システムである“顧客視点シート&改善提案アプリ”に入力する回答文の作成作業だった。良品計画では、全国の店舗から本部に対し、日頃の接客などで気づいた改善点を自由に提案する制度が根付いている。各店舗で入力されたすべての改善案は、週に一回、全国10人いるエリアマネージャーがチェック。“要回答”の内容と判断すると本部の該当部門へとまわされ、担当者は一週間以内にこれからの対応方法などについて回答するようになっている。しかし、店舗スタッフの熱心さもあって提案件数は年間12,000件、そのうち要回答の案件も8,500件に及んでおり、本部での回答作成に要する時間は年間700時間にも達していた。

「回答には具体的かつ詳細な内容が必要なため、他にも業務を抱える担当者にとってはかなり負荷の高い作業です。そこで、システムに蓄積されている過去8年間の問い合わせ内容や回答事例から、今回の案件にも適用できるものをAIが選んでレコメンドするようにすれば、回答時間を大幅に短縮できるのではと考えました」(山崎氏)