ストックフォトのゲッティイメージズが発行している最新ビジュアルトレンド本『Creative in Focus』をご存知だろうか。2013年より毎年、世界約40の国と地域で1万5000部が発行されており、先進的なブランドにおけるストックフォトの最新ビジュアルコミュニケーションが集められている冊子だ。(※webサイトでも閲覧することが可能)

そんな『Creative in Focus』の最新版『Creative in Focus 2016』がついにリリースされた。そこで本年度版で紹介されているビジュアルトレンドの「キーワード」について、同社のシニア・アート・ディレクターである小林正明氏にお話を伺った。

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『creative-in-focus-2016』表紙には日本人のフォトグラファー Rieko Honma氏の作品が初めて選ばれた

最新ビジュアルトレンド本『Creative in Focus』とは

そもそも『Creative in Focus』とはどのようなものなのでしょうか。また、これらのキーワードはどのように決められているのでしょうか。

ゲッティイメージズ シニア・アート・ディレクター 小林正明氏

「ゲッティイメージズではクリエイティブリサーチという独自のセクションにて、英語で検索された「検索キーワードのログ」と「購入された画像」、そして「実際にブランドが発信している広告」の3つの柱から今のトレンドを分析、報告しています。2007年から「写真で綴る世界の出来事」というドキュメント写真の冊子は発行していたのですが、広告向けのものはなかったため、そういったものも必要だろうということになったのがきっかけです。

近年ではソーシャルメディアの進化が、驚くほど多様なビジュアルスタイルを生み出してきました。ソーシャルメディアは、一般の方々の写真に対するリテラシーを格段に洗練させました。このような劇的変化は広告へも大きな影響を与え、その変化を把握するということは必要不可欠なことと考えています。今後も継続的に弊社が注視する文化的/社会的事象と、それに呼応したビジュアルトレンドを発信していきたいと思っています」

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エイズに感染した赤ん坊を抱き上げるダイアナ姫の写真が人々のエイズに対する偏見に大きな疑問を投げかけたように、「写真には世の中を、人の心を動かす力がある」と小林氏

クリエイター必見の"興味深い"キーワードの数々

今年選定されたキーワードは6つ。 いずれもクリエイターには見逃せない制作のヒントが散りばめられているが、なかでも興味深いものをいくつかかいつまんで解説いただいた。

  • Outsider In「アウトサイダー・イン」

主流であったものを見直し、再定義を加えようとする流れ。 意外性や反逆性、マイノリティを感じさせるビジュアルが多く見受けられる。

「人々がより大胆なものや、限界に挑む人々、型破りなビジュアルを好むようになったという傾向があります。世の中でも政治にしろ、社会問題にしろ、従来の制定や慣例に対する不満から非主流が台頭するというシーンが多く生まれていて、これまでの価値観を問い直したり、多様性を感じられるビジュアルが積極的に受け入れられているようです」

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  • Extended Human「エクステンデット・ヒューマン」

2016年は「バーチャルリアリティ元年」とも呼ばれ、テクノロジーの進化が人間の生活様式に加速度的な変化をもたらしている。人々の目を釘付けにする人間とテクノロジーが融合したようなビジュアルもトレンドに選ばれた。 「テクノロジーが隅々まで浸透していくにつれて、逆に「人間性」が浮き彫りになってくる。人間と機械の融合がビジュアルコミュニケーションのひとつになってもいいかな、という働きかけがこのキーワードです。アメリカで毎年開催される音楽祭・インタラクティブフェスティバル「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」で昨年、プロジェクションマッピングとperfumeの融合(「Perfume Live at SXSW」)が大きな話題となったのもこう言った流れの表れのひとつだと思います」

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ゲッティイメージズでは、選定されたキーワードに関わり一部検索結果を公表しているが、興味深いのが「emoji」という検索ワードだ。なんと前年比10,114%+を叩き出しており、日本発祥の「絵文字」という概念がスマートフォンおよびSNSなどの台頭により、英語圏の中で市民権を得て取り入れられていることがうかがえる。これもテクノロジーが人の気持ちを表す「エクステンデット・ヒューマン」のひとつの側面だろう。

  • Messthetics「メス セ ティックス」

「mess」とは「ちらかっていること、混乱、めちゃくちゃ」の意。 完璧な美しさからの脱却が人を強く惹き付けるのが「メス セ ティックス」であり、醜さは魅力的で、刺激的なものが多い。

「このテーマは説明するよりも見てもらったほうが早いですね。人は1日に何枚の写真を見るでしょうか? 雑誌、街頭、TVと多くの写真と触れ合っています。そのなかでたまに心が動かされたり、ざらっとして何かが残るようなそんな写真があると思います。良かれ悪かれ一度見たら忘れない、誰が見ても目に止まる、そんなビジュアルを表現するキーワードです」

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  • Silence vs. Noise「サイレンスvsノイズ」

これはおそらく日本人が好感を持ちやすいキーワードではないだろうか。「余白の美」とでも言おうか、物語を言葉少なめに伝えながらも最大のインパクトを生み出し、気分や感情を伝播させる。

「『Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)』 は大小のスケール感を使うことによって、見る人をゆっくりと魅了していきます。「マグライト」や「無印良品」などの広告写真でも有名なフィトグラファー藤井保氏の写真がまさにそうなのですが、余白があるゆえにイマジネーションの広がるスペースがあること、そういったアプローチの深さがこのテーマになっています」

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最後に今後ビジュアルコミュニケーションの流行はどのように盛り上がっていくのかについて小林氏に伺うと、「東京オリンピックが2020に開催されるわけですが、これはとても具体的な数字ということもあって、この先日本のビジュアルにおいてもポジティブなものが増えていくのではないかなと思います。複雑化し、多様化する時代でも個人個人が希望と善なる気持ちをもって生きていこう、という姿勢はブランドにとっても一消費者としても、大きな流れとして大切なコミュニケーションメッセージとなっていくのではないでしょうか」とのことであった。

一言に「トレンド」といってもそのキーワードが包括しているビジュアルはあまりに広く、明確な線引きがあるかというとそうでもない。話を伺っていてその洪水のように次々と生み出される作品群のなかに一定のアンカリングを作り出していくという作業は、継続することにより未来へとつながる興味深い取り組みだと感じた。今後もゲッティイメージズが発信する情報に注目していきたい。

「Creative In Focus 2016」をもっと詳しく見たい方はこちら

「日本国内のトレンド」について聞くと「個人的にはクラフト、手作り感のあるビジュアルが注目かなぁ」と、ぼそりと一言

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