前回は、2016年4月の発売を予定しているヤマハ製の無線LANアクセスポイント「WLX202」について、概要を紹介した。今回は、そのWLX202とVPNルーター「RTX1210」を組み合わせて、実際に使ってみよう。まずは、ネットワークの状況把握や資産管理を楽にしてくれる、LANマップの話から始める。

ヤマハの無線LANアクセスポイント新製品「WLX202」(左)と中小規模拠点向けVPNルーター「RTX1210」

LANマップの有効化

RTX1210の初期状態では、LANマップは無効になっている。だから、GUI設定画面の上部に並んだメニュー[ダッシュボード][LANマップ][かんたん設定][詳細設定][管理]とある中から[LANマップ]をクリックしても、マップ表示は行われない。

そこで、まずLANマップ機能を有効化する必要がある。それには、画面の右上隅にある「設定」(歯車のアイコン)をクリックすると現れる設定画面を使う。

まず、「設定」(歯車のアイコン)をクリックする

LANマップはLANインターフェイスごとに有効・無効を指定できる。通常、RTX1210はLANとインターネットの境界に設置しているだろう。そのため、インターネット側のインターフェイスとなるLAN2やLAN3では無効のままとして、LAN側のインターフェイスである[LAN1]についてのみ、LANマップを有効にする。その際に、端末情報の表示も有効化しておく。

続いて表示する設定画面で、LANマップ機能と端末情報の表示機能を有効化する。ただし、有効化の対象はLAN1インターフェイスだけとする

筆者の自宅ではRTX1210の配下にSWX2200-8PoEを1台接続しているので、そこにWLX202を接続した。SWX2200-PoEはPoE(Power over Ethernet)に対応しているので、これがWLX202の電源供給元としても機能することになる。

その状態で、まずLANマップでSWX2200-8PoEをクリックする。すると、SWX2200-8PoEにつながっている機器の一覧が画面右側に現れる。端末情報の取得を有効化していれば、SWX2200-8PoEに接続しているPCのメーカー名やコンピュータ名が一覧表の形で現れる。

前述のように、WLX202はSWX2200-8PoEの下につないであるが、それがSWXシリーズと同じアイコンでLANマップに現れる。また、WLX202に接続している無線LANクライアントもLANマップに現れる。

LANマップでSWX2200-8PoEをクリックしたときの表示状態例。SWX2200-8PoE(や、その先のWLX202)に接続された機器の一覧が見える

RTX1210を通じたWLX202の設定管理

続いて、SWX2200-8PoEの配下に接続してあるWLX202に話を進めよう。

ただし、RTX1210のファームウェアが古いと、WLX202は無線LANアクセスポイントとして認識されない。先に示したLANマップの画面例がそれで、WLX202のアイコンがSWX2200-8PoEと同じものになっている。このことから、未知のヤマハLAN製品として認識されているようである。

この状態では、RTX1210からWLX202を集中管理することも、ゼロコンフィグ機能(後述)を利用することもできない。しかし、2016年2月29日公開の最新版ファームウェア(Rev.14.01.11)に更新したRTX1210では、WLX202を正しく認識できた。それが以下の画面例だ。

最新版ファームウェア(Rev.14.01.11)に更新したRTX1210のLANマップ。SWX2200-8PoEの配下にWLX202が現れている

そのWLX202をクリックして選択すると、[無線APの設定]ボタンが現れるので、それをクリックする。すると、WLX202のGUI設定画面が別タブで現れる。このあたりの使い方はWLX302と同じだ

無線LANの設定に関する要領は、WLX302と同じだ。

  • [無線設定]以下の[2.4GHz基本][5GHz基本]で、無線LANの使用・不使用、対応規格の選択、チャンネルに関する設定を行う。
  • [2.4GHz詳細][5GHz詳細]をクリックすると表示する画面で、さらに細かい動作設定を行える。もっとも、そこまでしなくても済む場合が大半だろう。

WLX202の設定画面。設定の要領はWLX302と同じだから、WLX302を扱った経験があれば迷うことはないだろう

そして、SSIDを設定する際に[無線設定]以下の[SSID管理]を使用する点も、同時に複数のSSIDを登録して使い分けられる点も、WLX302と同じである。

WLX202もWLX302と同様に、複数のSSIDを登録して使い分けることができる

SSIDの設定画面ではプライバシーセパレータの設定ができる。飲食店や公共施設で無線LANサービスを提供するような場面では、同じアクセスポイントを共用するユーザー同士が通信できる状態にならないように、この機能をオンにしておくべきだろう。

SSIDに関する設定を行う画面。飲食店や公共施設で無線LANサービス用に使うのなら、プライバシーセパレータはオンにする。オフィスならオフだ

WLX302の管理画面とWLX202の管理画面を比較した場合の最大の相違点は、画面左のメニュー一覧に[見える化ツール]が存在しない点である。以前の記事でも言及したように、チャンネルの使用状況や端末ごとの統計情報などを表示する機能が、WLX202にはないからだ。

WLX202の先につながった機器も確認できる

先に、LANマップについて紹介した。LANマップでは、画面右上にある[機器一覧]を使用すると端末機器の一覧を表示したり書き出したりできる。また、その隣の[機器マップ]を使用すると、接続関係を伝送速度の情報と併せて確認できる。もちろん、WLX202や、その先に無線LANを介してつながっている機器も対象になる。

これがあれば、ネットワークの構成を把握するために机の下に潜り込むなどして現況調査を行う手間から解放されそうだ。

画面右上の[機器一覧]をクリックすると、機器の一覧を別画面に表示する。この状態で、一覧をCSVファイルで書き出すことができるので、ExcelやAccessなどで資産管理台帳を作るときに有用だ

画面右上の[一覧マップ]をクリックすると、接続の関係を一望できる。これを見れば、どの機器がどこにつながっているかを簡単に把握できる。しかも伝送速度の違いが色分け表示されている

WLX202を単体で設定管理

RTX1210のようなL2MS(Layer 2 Management Service)対応ルーターを窓口にしてWLX202も管理下に置くのが理想の姿だが、WLX202を単体のアクセスポイントとして設定・管理することもできる。

既定値では、WLX202のIPアドレスは「192.168.100.240」だが、DHCPサーバが稼働していると、そちらからIPv4アドレスの割り当てを受ける。筆者の自宅では「192.168.100.6」の割り当てを受けていたので、Webブラウザのアドレスバーで「http://192.168.100.6/」と入力した。

これで、WLX202のGUI設定画面に直接アクセスできた。そこから先の操作については、RTX1210からWLX202の管理画面を呼び出した場合との違いはない。

なお、WLX202の設定画面左側にある項目一覧で、[ネットワーク設定]以下の[LANポート設定]をクリックすると、WLX202のLAN側IPアドレスに関する設定を行える。

WLX302と同様のグループ管理

WLX202もWLX302と同様に、複数のアクセスポイントをまとめて「グループ」を定義することができる。グループごとに「コントローラーAP」が1台と、1台ないしは複数の「メンバーAP」を配して、「コントローラーAP」で行った設定を「メンバーAP」に配布する仕組みだ。こうすることで、同じ設定を持つアクセスポイントを複数用意する作業が迅速化できる。

なお、グループ管理機能の詳細については、以前にWLX302について解説した記事があるので、以下の記事の中途にある「複数のWLX302をグループ化して設定・管理する」を参照してみていただきたい。

参考 :
ネットワークを「見える化」しよう! (第6回) RTX1210×WLX302(2) ルータから複数のAPをセットアップ

グループ管理は便利な機能だ。同じオフィスで複数の無線LANアクセスポイントを設置している場合、SSIDや暗号化に関する設定はすべて統一しなければならない。それを個々のアクセスポイントごとに設定すると、手間がかかる上に、設定ミスの可能性も排除できない。

その点、コントローラーAPで所要の設定を行い、それをメンバーAPに転送する方法なら、実質的な設定の手間は1回だけである。ただし、転送作業は個別のメンバーAPごとに行わなければならない。だから、同一設定のアクセスポイントをたくさん用意したい場面では、台数に比例して、設定を転送する手間が増える。

L2MSのスレーブの管理とゼロコンフィグ

その手間をなくしてしまおうというのが、WLX202のゼロコンフィグ機能。何をするのかというと、設定変更の対象となるアクセスポイントをネットワークに接続するだけで、自動的に設定情報を送り込めるというものだ。これを活用すると、同じ設定を持つアクセスポイントのコピーを量産できる。

そこで関わってくるのが、LANマップでRTX1210をクリックすると現れる[スレーブの管理]ボタンだ。これをクリックすると表示する画面で、WLX202の設定情報をファイルに書き出しておいて、それを復元することができる。ファイルの保存場所は、Webブラウザを動作させているコンピュータではなくて、L2MSのマスターになっているルーターの内部となる。

ZeroConfig機能を使うと、未設定のWLX202をRTX1210に接続するだけで、設定済みのconfigを自動的に送り込むことができる

LANマップでRTX1210をクリックして選択すると現れる、[スレーブの管理]をクリックする

続いて表示する画面で、RTX1210の配下に接続しているWLX202の設定情報を書き出したり、復元したりできる

設定の復元対象を指定する際に関わってくるのが、上の画面で右端にある[無線APの指定方法]である。既定値はMACアドレスになっているので、設定保存元となったWLX202だけが復元対象になる。ところが、その[無線APの指定方法]の下にある[設定]をクリックすると、WLX202を認識する手段を、MACアドレスではなく経路指定(インターフェイスによる指定)に変更できる。

経路指定を使用すると、設定を保存したWLX202を外して、別のWLX202を同じポートに接続したときに、先に使っていたWLX202から保存した設定を自動的に書き戻すことができる。つまり、工場出荷状態のWLX202を、設定保存元のWLX202と同じポートに接続するだけで、同じ設定のWLX202がもうひとつできるわけだ。これがゼロコンフィグ機能である。

同じSSIDを持つ無線LANアクセスポイントを複数設置しなければならない場面は、案外ある。オフィスが広く、無線LANのユーザー数が多い場合がそれだし、宿泊施設ならフロアごとにアクセスポイントを設置する必要があるだろう。そういうときに、この機能を使って設定を復元することで、同一の設定内容を持つアクセスポイント群を、迅速かつ確実に用意できる。

同じ場所で複数のWLX202を運用するのであれば、前述のグループ管理機能を使う方が便利だ。しかし、同じ設定のWLX202を異なる複数の場所に配布する場合には、「最初に1台、設定を確定して保存」→「2台目を接続して設定を復元」→「3台目を接続して…」という手順を踏む方が効率的だ。

しかも、設置する場所が異なるのにグループ管理の対象にすると、設定を転送した後でグループ管理の対象から外す手間がかかる。ゼロコンフィグ機能であれば、そういう手間はかからない。

これは、書き出しておいたWLX202の設定情報を復元する際の画面。先に書き出した設定情報のファイル名は、[CONFIG]欄の[保存][復元][削除]ボタンの上に表示している

設定の復元を指示したときの確認画面。この画面例ではMACアドレスによる経路指定を使っているので、設定を保存したWLX202にしか復元できないが、経路指定に変更すれば、別のWLX202にも自動復元できる

ちなみに、この[スレーブの管理]画面からでも、WLX202のTCP/IP設定を変更できる。複数のWLX202をオフィスに設置して、個別に重複のない固定IPアドレスを割り当てるような場面では、これが便利かも知れない。同じ画面の中で全体状況を見ながら作業できるからだ。

スイッチの設定も一括管理

無線LAN以外で注目したいのは、LANマップの上にあるSWX2200-8PoEのポート一覧。ポートごとに色分けする形でリンクアップ速度を表示しているだけでなく、RTX1210とのカスケード接続に使っているポートは「↑」表示によって区別しているのは親切だ。

そして、個々のポートをクリックして選択すると、統計情報を確認できる仕組みだ。リストボックスから番号を選ぶのではなく、本物のスイッチやルーターを模した画面で「このポート」という選択ができるので、間違いや勘違いを避けやすい。

その状態で[ポートの設定]をクリックすると、ポートごとに動作内容を個別設定できる。そのほか、[ポートの設定]の左側にある[スイッチの設定・保守]をクリックすればSWX2200-8PoE自身の設定を変更できる。

スイッチ、あるいはルーターのポート一覧画像で、個々のポートをクリックすると、左側に統計情報や動作状況を表示する

まとめ

「見える化」といっても、単にグラフィカルに表示すれば済むという話にはならない。そこでユーザーが直面するであろう課題を適切に認識して、その課題を解決しやすい手段を用意してこその「見える化」である。ヤマハのネットワーク製品を使ってみて実感できるのは、その「ユーザーが直面する課題」に対する真面目な向き合い方ではないかと思う。

(マイナビニュース広告企画:提供 ヤマハ)

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