最新モデルの発売ラッシュを迎え、また2016年7月にはデビュー20周年を迎えるカシオ計算機の電子辞書ブランド「EX-word(エクスワード)」シリーズ。今や電子辞書業界でトップを走るブランドがどのようにして生まれ、この20年を歩んできたのか。ずらりと並んだ歴代モデルを前に、カシオ計算機 開発部 大島淳氏、営業本部 上田奈美子氏から、その歴史と裏話をうかがった。

歴代のEX-word、壮観!

「失敗したから」続いてきた - カシオの電子辞書「EX-word」20周年の歩み(後編)

EX-wordの夜明けは、自信作の大失敗とともに

―― まずは自己紹介からお願いします。

カシオ計算機 開発部の大島淳氏(写真左)、営業本部の上田奈美子氏(写真右)

大島氏「EX-wordの商品企画担当をしている大島です。入社してからほぼ電子辞書一筋で、EX-wordの立ち上げ担当でもあります」

上田氏「本社でマーケティングを担当している上田です。私はSシリーズからですね(編注:2001年)」

大島氏「上田には、私が出した新モデルやターゲットなど企画案へのダメ出し、実際に販売するうえでのデータ収集などを担当してもらってます」

―― ではさっそく、第一号となるXD-500の開発経緯やきっかけをお聞かせください。(XD-500は1996年7月発売)

XD-500

大島氏「すでに電子辞書は市場に存在しましたが、それほど一般的ではないごく限られた人に向けた商品でした。でも、そういう商品こそ学生に必要じゃないかなと思いました。自分自身の経験が大きいですね。

学生時代、重い紙の辞書を持って通学するのがイヤで、辞書は学校に置きっぱなし。いま思えば、それで知る機会を逃してしまっていたのがもったいなかったな、わからないときにすぐ調べられたらよかったなと。コンパクトな電子辞書なら持ち歩けるし、学校でも家でもすぐ調べられると思いついたんです」

―― 学生、特に高校生向けにフォーカスする裏付け要素もあったのですか。

大島氏「当時、紙の辞書は年間千数百万部の売上があり、購入者のほとんどが高校生でした。英和、和英、国語、漢和、古語……と、多い人だと高1で5冊買うという調査結果もありました。それが1台になれば画期的に便利になるし、これだけ売上があるならニーズも絶対あると考えました」

―― なるほど。XD-500の実機は、往年の"PDA"を思わせる懐かしいデザインですよね。

大島氏「1996年の販売当時は斬新すぎると言われました。しかも結果は大失敗。

ペンタッチで辞書をひく切り口がウリだったのに、実際は不便すぎたんです。キーボードをタイプするほうが圧倒的に早いとわかり、そこから1~2年かけて開発し直しました。その間は毎日が大反省会(苦笑)。こちらはよいと思って販売しているだけに、なぜ売れなかったのか、なぜダメだったのかと、構造から色、デザイン、コンテンツまでじっくり見直して突き詰めていきました。

その結果生まれたのが、1999年のXD-1500シリーズです。これ以降、EX-wordの基本形になっていくのですが、XD-500の失敗がなければ生まれなかったモデルですね」

XD-1500