ネットワークやモバイル端末の普及によって、大きな転換期を迎えつつあるコンテンツビジネス。人気アニメシリーズである『ガンダム』シリーズも2015年12月よりEST配信でのリリースを開始している。

最新作『機動戦士ガンダム サンダーボルト』は配信でのみ提供されており、テレビでの放送やパッケージ販売を予定しないという新たな試みをおこなっているのだ。

そこで本記事では、同作品のプロデューサーであるサンライズ 小形 尚弘氏と、デバイスやサービスの変化とともに日本の音楽配信ビジネスを牽引してきたレコチョク 板橋 徹氏に、大きな転換期を迎えつつあるコンテンツビジネスの今後について聞いた。

サンライズ
制作部
第1スタジオプロデューサー
小形 尚弘氏

レコチョク
執行役員
板橋 徹氏

デジタル配信の醍醐味は「いつでも」「どこでも」手に入り、楽しめること

小形 『機動戦士ガンダムUC』(※)の企画がスタートした2007年頃は、まだブルーレイディスクが市場に浸透していませんでした。それがこの10年で完全に市場ができあがっていて、今度は配信が徐々に頭角を現してきています。当時からは考えられないほどに状況は変化していますね。

『機動戦士ガンダム サンダーボルト』は、連邦軍「ムーア同胞団」のエースパイロット、イオ・フレミングと、ジオン軍「リビング・デッド師団」に所属するダリル・ローレンツの戦いを中心に描いている

板橋 音楽配信市場も状況がどんどん変化しています。2000年代前半には、ガラケーと呼ばれる携帯電話に向けた、「着うた(R)」のようなライトなコンテンツが好まれていました。いわゆる日本の音楽配信の草創期です。

技術が進化し、通信環境が発達してスマートフォンが主流になった今では、音楽配信もスタンダードなサービスになってきました。今では、TVで聴いた曲、街で聴いた曲、友達がレコメンドした曲を、いつでも、どこでも、好きな時に手に入れて楽しむことができる環境が整いつつありますよね。それこそが、デジタル配信の醍醐味だと言えると思います。

また、最近では「ハイレゾ」と呼ばれる高音質音源のニーズも高まってきています。これからは、ますます手軽に高品質なコンテンツがデジタル配信によって提供されていくことになるのではないでしょうか。

小形 アニメーションの場合は、それでもやはり、パッケージ販売が主流で、お客さんは高品質なコンテンツを求めます。『機動戦士ガンダムUC』では、初めてイベント上映とパッケージ販売、そして配信を同時にやってみましたが、映画館で上映できるレベルの作品を1時間以上の尺で作るとなると、かなりの時間とコストがかかってしまいます。

作品をご覧になった方が「次を観たい」と思っても、上映されるのは半年後から一年後。それはさすがに待たせすぎだろうと思いました。そこで、『サンダーボルト』では、1話の尺が18分程度と短いですが、その分サイクルを早くして、一カ月ちょっとの間に1回の配信を予定しています。

あと、この作品は配信限定ということで、スマホやタブレットなどのモバイル端末を意識して作りました。それらの端末で映像を観るときは、それくらいの尺の方が観やすいんじゃないかと思っているんです。

デジタル配信という販売スタイルが切り拓く新たなユーザー層

小形 今後のアニメ業界を考えると、販売のスタイルをどうするかが課題になります。実際、若い人を中心に、パッケージではなくデータでコンテンツを持つ人が増えてきているように感じています。パッケージは場所をとりますので(笑)。

板橋 パッケージの購入理由を聞くと、大体どのアンケートでも「マスターデータを取っておきたい」「パッケージを含めたグッズとして持ちたい」「アーティストに貢献したい」の3つがあがるそうです。

コアなファンはパッケージの「手触り感」「所有感」といったところに価値を感じていらっしゃいます。ですので、パッケージのニーズは今後もなくならず、デジタルとうまく共存していくのではないでしょうか。コアなファン層だけではなく、さらに新たな層を広げるという点については、配信という手段はかなり有効ですね。

第3話では、ダリルがサイコ・ザクを操縦し、イオと死闘を繰り広げる

小形 まったく、おっしゃる通りだと思います。今のアニメ業界はパッケージを買ってくれるファンがメインターゲットになっていますが、それとは別に新しいファンを獲得することも考えなくてはなりません。今回の『サンダーボルト』は、その点にチャレンジする作品でもあるんです。

今後の配信ビジネスの可能性とは?

小形 さきほども申し上げたとおり『サンダーボルト』はモバイル端末を意識して制作しました。場面の構成に関しても大画面で観て迫力があるという見せ方ではなく、スマートフォンのサイズでも伝わるような作りを意識しています。

この点については、まだ測りかねているところもあるので、ファンの反応を見ながら、いろいろと試していくことになるでしょう。それができるのも、変化に対応しやすい配信ならではだと思っています。

板橋 通信環境の変化に対応するうえで、通信料の問題は大きいですね。私たちも、お客様から一番多く寄せられる要望はそこになります。データ量が大きければ高音質になりますが通信料は高くなる。小さくなれば通信料は安くなりますが低音質になる。

これは、どちらが正解ということはなく、最後はお客様の好みだと思います。我々にできることは、お客様が求める選択肢をそろえることです。


小形 高品質と言えば、実は『サンダーボルト』は4Kに対応しているんです。ただ、4KTVや4K放送はまだあまり普及していません。一方で、スマートフォンには4K対応の機器やコンテンツが出そろってきている。

そういう意味では今、一番性能がいい映像機器は、スマートフォンなのかもしれません。そう考えると、モバイルに向けたコンテンツ配信は、これからも大いに可能性があるのではないかと思います。

板橋 今までの配信ビジネスは、一曲や一話いくらという販売形態でしたが、最近は我々の展開する「レコチョクBest」やドコモと共に運営する「dヒッツ」のような、月額いくらという定額制聴き放題のサービスが主流になりつつあります。これからも新しいサービスモデルはどんどん登場してくると思います。

今年あたりが、その元年になるかもしれません。ある意味では、いろんなことにチャレンジできる時代がやってきたとも言えます。

小形サンダーボルト』では、本当にいろいろなことにチャレンジしています。作品の内容についていえば、これまでのガンダムにはなかった50~60年代あたりのジャズやポップスを取り入れたり。

イオはジャズを好み、戦場でもコックピットで流すため、撃破された敵機が接触通信で聞くその音は畏怖の対象となっていく

また、テーマもかなり重いものを取り扱っていて、大人向けの内容となっています。ビジネス面でももっとチャレンジしていきたいです。配信という販売形態もそうですが、たとえば、今回は配信コンテンツということで、パッケージに比べると海外展開もしやすいんじゃないかと思っています。

ちなみに、レコチョクさんでは海外展開についてどのようにお考えですか?

板橋 J-POPは海外、特にアジアからのニーズが高いことを考えると興味はありますが、権利関係の問題もあるので難しいところがあります。まずは国内のお客様から寄せられるさまざまなニーズに応えるサービスを展開することから、と考えています。

小形 アニメもアジア圏を中心に大きなニーズがあるのですが、どのような形で提供していくのかについてはまだまだ課題があります。海外の配信会社と組むという方法もありますが、どうせなら国内の企業と組んだ方がやりやすいと思うんです。

板橋 そうですね。海外展開まではいきませんが、一緒に展開できることもあると思いますので。たとえば、『サンダーボルト』の中に登場した曲をレコチョクで配信するとか、作品に合ったプレイリストも作りますよ(笑)。

機動戦士ガンダム サンダーボルト
太田垣康男が手掛ける累計発行部数160万部を誇る大ヒットコミックスを、「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」を手掛けたサンライズ第1スタジオが描くファン待望の「ガンダム」シリーズ最新作。2016年3月18日から第3話が配信開始予定となっている。
第3話EST配信¥800(税別)、TVOD配信¥400(税別)
株式会社レコチョク
2001年の設立以来、世界初の「着うた®」サービスの開始、パソコン、ニンテンドー3DS、スマートフォン向けなど常に先進的で付加価値の高い音楽配信サービスを展開。定額制聴き放題サービスでは「レコチョクBest」や、ドコモと共に運営する「dヒッツ」などを提供。クルマ向け、店舗向けにBtoBの定額制音楽ストリーミングサービスを協業で展開するなど、多くのお客様のニーズにお応えする全方位のサービスを展開している。

dヒッツ powered by レコチョク
株式会社レコチョク協力のもと、株式会社NTTドコモが提供するサービス。最新楽曲や人気アーティストの楽曲を多数含む音楽プログラムを、月額500円(税抜) で、いつでも好きな時に聴くことができる定額制音楽配信サービスとなっている。全てのキャリアのスマートフォン、並びに一部タブレットでも利用可能だ。

<注釈>

(※)機動戦士ガンダムUC(ユニコーン):2010年~2014年かけて発表されたガンダムシリーズのOVA(オリジナルビデオアニメーション)。全国映画館におけるイベント上映、DVD/ BDのパッケージ、ネット有料配信など、複数の形態で公開された。



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