EDAツールの開発販売で知られるメンター・グラフィックスが、11月18日~20日の3日間にわたりパシフィコ横浜で開催された「Embedded Technology 2015(ET2015)」に出展し、同社の自動車向けソリューションを中心にさまざまな製品を展示した。

1981年に設立されたメンター・グラフィックス・コーポレーション(以下メンター・グラフィックス)はEDA Top 3として認知されており、半導体業界や電装系のソフトウェアを開発する企業などで幅広く利用されている。

そのメンター・グラフィックスは近年、「Mentor Automotive」のブランド名で自動車向けのソリューションにも注力し、IVI(車載情報システム)やADAS向けのOSソリューション、自動車の制御系ソフトウェアの標準であるAUTOSAR向けの開発ツールやソフトウェア、ワイヤ・ハーネスの設計ツールなど、自動車OEMやサプライヤに幅広いソリューションを提供している。

多くの人で賑わっていたブース内

自動車関連事業へ力を入れるメンター・グラフィックス、Mentor Automotiveとして展開

今回のET2015の同社ブースでは、Mentor EDA、Mentor Embedded、Mentor Automotiveの3分野に分けて展示されており、中でもMentor Automotiveのブランドネームが利用されている自動車向けソリューションは自動車メーカーや部品メーカーの関係者から注目を集める展示となっていた。

Mentor EDA、Mentor Embedded、Mentor Automotiveの3つの分野に分けて展示

メンター・グラフィックスは、AUTOSAR向けのVolcanoシリーズの一環として、VSA(Vehicle Systems Architecture)、VSI(Virtual Systems Integrator)、VSB(Vehicle Systems Builder)、VSTAR(AUTOSAR SWCスタック)などのコンポーネントを提供している。さらに、ワイヤ・ハーネスの定義、設計、製造、保守サービスを一体的に行えるCapital、ECUの仮想化を実現するVistaなどと連携することで、車両1台を俯瞰しつつAUTOSARの開発を行うことが可能になる。

「弊社の強みは“デジタル継続性”。すべてデジタルで一体的に設計できることです。すでに自動車の設計はほとんどがコンピュータベースになっており、従来はエンジニアが手で引いていたような図面もすべてがコンピュータに置きかえられつつある中で、上流から下流までをすべてデジタルで一気通貫できます」と語るのは、メンター・グラフィックス・ジャパン株式会社 マーケティング部ディレクターの三橋明城男氏。

具体的にはVolcano VSxでエンジン制御など各種ECUのソフトウェア開発を行い、ECUの実シリコンの入手前であってもVistaを利用して、コンピュータ上に仮想ECUをシミュレーションし、実際の動作を確認することができる。

AUTOSAR 4.x対応の車載システム設計ソリューションの説明パネル

「弊社のVistaは、半導体開発において利用されているソリューションで、半導体のアーキテクチャ検討を行う段階から活用されています。半導体のテープアウト(半導体工場で実際のシリコンが製造開始されること)前から、一般的なWindows PCなどを利用して半導体の動作をシミュレーションすることができます。ターゲットボードが無くても、ソフトウェアを先行して開発できるため、全体の開発期間の短縮につながっています」と三橋氏。

ハードウェアリファレンスデザインとソフトウェアキットを一体化して提供

自動車のデジタル化が進むにつれ、IVIの分野と、メーターやヘッドアップディスプレイ、ADASなどとの集約が進み、そこから制御系ECUとの連携にまで及んでいる。走る、止まる、曲がるが自動車にとっての基本性能ではあるが、自動車の車内エクスペリエンスをいかにコスト効率良く、安全とセキュリティを担保しつつ実装し、かつコンシューマエレクトロニクスの先端技術を取り入れていくかが、自動車メーカーにとっての最大の課題である。

そうした課題を解決するのが、メンター・グラフィックスのLinuxを中心としたマルチコア開発環境だ。「弊社はLinux OSなどに多数の投資を行っており、GENIVI標準に対応したLinuxなどを自動車メーカーや部品メーカーに提供しています。」と三橋氏は言う。Type-1のハイパーバイザによる仮想化やAUTOSARとの連携などを包括的にサポートしているのもメンター・グラフィックスの強みだ。

ハイパーバイザとは、OSのさらに1つの下のレイヤに設定されるソフトウェアである。OSからハードウェアへのアクセス要求があった場合、ハイパーバイザが複数のOSからの要求をハードウェアとやりとりする"調整者"の役割を担う。これにより、ハイパーバイザ上で動いているOSは、それぞれ独立して動き、1つのOSで何らかの問題が発生しても、他のOSに影響を及ぼさないようにできる。IVI系アプリケーションがセキュリティホールとなった場合でも、制御系に影響を及ぼすことがない。

今回メンター・グラフィックスは、「XSe AXSB」というリファレンスデザイン開発ボード上で動くLinuxソリューションのデモを行った。AXSBはTI(Texas Instruments)のDRA7XX JacintoをSoCとして採用しているほか、ルネサスエレクトロニクスのV850E2FG4 MCUを利用して通信することが可能になっている。

同社は、この開発ボード向けに「Connected OS」と呼ばれるOSや開発環境をまとめて提供し、自動車メーカーや部品メーカーはそれをもとに自社用にカスタマイズして利用できる。また超高速のOSファストブートを可能にするブートローダーが含まれており、起動後すぐにリアカメラが使えるようになるデモが行われた。

デモの様子

12月にもメンター・グラフィックスのソリューションをIESFで展示

メンター・グラフィックスでは、こうした同社の自動車向けのソリューションを説明するテクニカルフォーラム「IESF 2015 Japan(Integrated Electrical Solutions Forum 2015 Japan)」の開催を、12月2日には愛知県名古屋市のミッドランドホールで、12月4日には東京都品川区の東京コンファレンスセンター・品川で予定している。

メンター・グラフィックスにて電装システムやワイヤ・ハーネスの統合設計/製造支援ソリューションを取りまとめるIESD事業部のジェネラルマネージャーを務めるマーティン・オブライアン氏、自動車評論家の国沢光宏氏、モノづくり経営研究所「イマジン」所長である日野三十四氏による基調講演が予定されているほか、今回のET2015でも展示された、AUTOSAR向け開発ソリューションやAXSBなどに関するテクニカルトラックなどが予定されている。

IESF 2015の参加費は無料で事前登録制となっている。詳しい登録方法やプログラムなどはメンター・グラフィックスのWebサイト[mentorg.co.jp/iesf]でご確認頂きたい。

(マイナビニュース広告企画:提供 メンター・グラフィックス・ジャパン)

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