大阪大学を中心とした日米11大学が進めている研究プロジェクト DESTCloud(Disaster Emulation Simulation Testbed for distributed systems such as Cloud computing environment)において、クラウディアンの広域分散ストレージ製品「COLUDIAN HyperStore」が、評価・検証の対象製品として選ばれた。

DESTCloudプロジェクトは、2014~2015 年度総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)より支援を受けており 、参加大学は大阪大学、金沢大学、京都大学、高知工科大学、国立情報学研究所、東北大学、奈良先端科学技術大学院大学、広島大学、札幌DC、沖縄DC、カリフォルニア州立大学サンディエゴ校の11校。2015年10月から2016年3月までの期間、各研究拠点 をJGN-XおよびSINET4のネットワークで相互接続し、広域分散システムの耐障害性・耐災害性を検証する。

今回は、主幹大学である大阪大学 情報推進本部・サイバーメディアセンター 助教(兼任)の柏崎礼生氏(博士(情報科学)) と、クラウディアン代表取締役社長の太田洋氏に、本研究の詳細や目的、CLOUDIAN HyperStoreのポイントなどについて伺った。

── 今回のプロジェクトはどのような目的で実施されるのか

柏崎氏 この研究には、私の経歴や趣味なども深く関わっています。もともと私は生体工学 を専攻 していましたが、キャリアを転換し、人工生命やネットワークに関連した情報系の研究に従事するようになりました。2009 年ごろ、ある研究者の方と「スケールアウト型ストレージをどう使うか」という議論になったのが大きなきっかけと言えるでしょう。

私はNHKの番組がとても好きで、大量に録画することを 個人的な趣味として楽しんでいます。今やアーカイブデータは120TBにも及んでいるのですが、当時からこれらをどう保存していけばよいのかと考えていました。NHKはオンデマンドサービスを提供して いますが、提供されている番組はごく一部に限られています。もし私のような個人が保有しているデータを活用すれば、地方分散型の巨大なアーカイブシステムができるのではないか、私の趣味を人々のニーズに転換できるのではないかと考えたのです。

その後、私は所属が変わって、大学のシステムを管理すると同時に、広域分散環境をテーマに本格的な研究を行うことになりました。どう使おうかと考えていたときに、2011年の東日本大震災が発生したのです。それを受けて、私のもとにさまざまなベンダーの営業担当者がやってきて、DR製品やBCPソリューションをしきりに売り込んでくるようになりました。正直なところうんざりしていたのですが、これが重要なポイントだと気づきました。

一方で、大震災への政府の対応にも苛立ちを覚えました。「想定外」ということばが頻繁に使われていましたが、そもそも何を想定していたのか、どのような訓練を していたのかという義憤を感じました。

災害時に本当に役立つ技術とはどのようなものか、どのような訓練を行えばよいのか、耐障害性・耐災害性のあるインフラとはどのようなものか。“どこまで訓練すれば安全であると確信できるかわからない”という課題に対して、それを計測するための「定規」を作ること、分散システムの検証を行うための「SDDE(Software Defined Disaster Emulation)」プラットフォームを開発することが、今回のプロジェクトの目的です。

もちろん、すべてのシステムや環境、業種・業態で最高レベルの耐障害性が必要というわけではないはずです。例えば、病院や金融機関のような非常に重要なシステムを抱えている場合は“クラスA”“年間に300回以上の異なる訓練を必要とする”などと設定します。政府機関であればクラスB、一般企業であればクラスCといった具合に、それぞれに必要なテストシナリオを提供します。将来的には、耐障害性の認定制度も実現できるでしょう。

── どのような実験が行われるのか

大阪大学情報推進本部・サイバーメディアセンター助教(兼任) 柏崎礼生氏(博士(情報科学))

柏崎氏 分散システムを構築し、擬似的な災害や故障を発生させて、耐災害性・耐障害性を観測します。DESTCloud──つまり「デストロイ・クラウド」という隠し名のとおり、1つの災害や障害のシナリオ上で複数の故障を発生させて、システムをリアルに近い状態まで壊すのです。

耐障害性をうたう製品はいくつもありますが、カタログにはベンダーに都合のよいことしか書いていないんですよね。本当はどこかに弱点があるものです。しかし、どこまで大丈夫なのかを測るベンチマークの基準がなかったのです。

オブジェクトストレージであるCLOUDIAN HyperStoreの場合、データが広域に分散されるため、一部に障害が発生してもデータを使い続けることが可能とされています。では、どの程度までネットワークが分断されても大丈夫なのか。パフォーマンスの低下がどの程度ならば利用できるのかといった、具体的な疑問を検証していきます。

── なぜCLOUDIAN HyperStoreが選ばれたか

柏崎氏 DRやBCPへの対応を示す製品や技術はさまざまにありますが、私たちが重視しているのは広域分散という視点です。商用製品で「広域分散」をうたうストレージは、CLOUDIAN HyperStoreのほかにはあまり聞いたことがありません。

太田氏 確かに本当の意味で広域分散を名乗るストレージ製品は、多くないと思います。たいていは「スプリットブレインシンドローム」の問題を解決できずに、システムが停止したり、パフォーマンスが著しく低下したりしてしまいます。CLOUDIAN HyperStoreは、リアルタイムな同期複製と数秒単位の準同期複製を選択的に利用でき、災害復旧目標を大幅に短縮できるのが特長です。

柏崎氏 それは本当かどうか。では実際に災害が発生したときにどれほど品質を保てるのかということを検証するわけです。今回は、CLOUDIAN HyperStoreのほか、海外ベンダーのファイルシステムとして提供される広域分散ストレージ製品を試験する予定です。

太田氏 オブジェクトストレージ製品は世界中にありますが、日本生まれのCLOUDIAN HyperStoreは、日本の厳しい市場にもまれながら高い品質を保ってきました。耐障害性や事業継続性において、優れた信頼性を実現できるという自信があります。

── 災害対策としてのCLOUDIAN HyperStoreの効果は

クラウディアン 代表取締役社長 太田洋氏

柏崎氏 2011年以降、地方のデータセンターを活用したDRが急速に進むだろうと考えていたのですが、予想外に進んでいないんです。DRという言葉が陳腐化してしまっているようにも見えます。わざわざバックアップやリカバリの体制を整えることが、企業にとって負担になってしまうようですね。

太田氏 データセンター事業者の石川コンピュータ・センターでは、CLOUDIAN HyperStoreと経済的な小型NASを組み合わせ、「BCPリモートバックアップサービス」というディザスタリカバリソリューションを提供しています。小型NASにデータを格納すれば、自動的に石川県にある同社のデータセンターにデータが複製されるという具合です。

柏崎氏 ストレージ基盤を作ったら、すでに耐障害性を持っているというのがよいですね。クラウディアン自身がサービスを提供するようなことはないのですか?

太田氏 さまざまなデータの「器」として、分散処理やその他のサービスを機能面・技術面でサポートしていくという立場を変えることはないでしょう。

柏崎氏 クラウディアンには、技術だけでなく、開発力やサポート体制にも期待しています。今回のプロジェクトでは、そうした企業としての取り組みも総合的に検証したいと考えています。

太田氏 この検証は、私たちにとっても非常にチャレンジだと感じています。厳しい試験が行われるとのことですから、何も問題がないということはなく、おそらくいくつかの課題が発見されることでしょう。それは、むしろ望むところです。必要であればスタッフを派遣し、米国オフィスとも密に連携して、すぐに改善策を提供できる体制を整える予定です。

(マイナビニュース広告企画:提供 クラウディアン)

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