Adobeの主力製品である「Creative Cloud 2015」の魅力を、ベンチマークによってお伝えしている本企画。第2回は「Illustrator CC 2015」の進化について探っていく。比較対象は、買い切り型としての最後の製品「Illustrator CS6」だ。Illustrator CC 2015での速度面での大きなトピックは、GPUパフォーマンス機能の最適化が進み、描画速度が大幅に向上した点にある。どれほどの違いが生まれているのか、実際に測ってみることにしよう。

Windows 7およびYosemiteの新旧マシンを検証環境として用意

ベンチマークテスト用の検証環境は、Part.1 のPhotoShop編と同様。Windows 7搭載機としてHPの「HP Z420 Workstation」(2012年発売)および「HP Z440 Workstation」(2014年発売)を、MAC OS X搭載機としてAppleの「 Mac Pro (Mid 2010)」および「Mac Pro (Late 2013)」を用意している。なおMac Pro (Mid 2010)に関しては、OS X 10.10.4 YosemiteへとOSをアップグレード済みだ。また各ベンチマークテストはそれぞれ20回ほど同じテストを繰り返し、数値の優れている5回のデータを抽出、その平均値を算出している。

写真左:HP Z420 Workstation。右:HP Z440 Workstation

写真左:Mac Pro (Mid 2010、右:Mac Pro (Late 2013)

GPUパフォーマンス機能で実現したシームレスなアニメーションズーム

Adobe製品には、ビデオカードなどに搭載されているGPUを利用することでデザインやアニメーション、ビデオなどの各種機能を高速化する「GPUパフォーマンス機能」が搭載されている。バージョンアップのたびに最適化が進められており、Illustrator CC 2015ではズームやパンの描画速度が大幅に向上したという。またズームインの最高倍率はIllustrator CS6の6,400%から64,000%に進化しており、より細かな編集が行えるようになった。まずはこのズーム速度を確認してみよう。

今回使用したイラスト。瞳の中に日本地図が描かれている。CC 2015ではズームイン範囲が拡大しており、この日本地図は64,000%まで拡大しなければ確認できない

このベンチマークでは、18MBのAI形式ファイルを開き、イラストの瞳の部分をCC 2015では64,000%、CS6では6,400%までズームインしたのち、表示サイズを100%に指定して一気にズームアウト。画像が完全に表示されるまでの時間を計測した。なおこちらのAI形式ファイルの瞳の中には、日本地図と”こんにちは”というイラストが描かれているが、これは64,000%までズームインしなければ判別できないものだ。

CC 2015とCS6の違いは、ズームアウトした後の画像全体の表示速度に表れている。CS6では完全に描画されるまで1秒程度の待ち時間が発生するため、連続してズームイン/アウトを繰り返すことが難しい。しかしCC 2105では待ち時間を全く感じることがなく、自然な拡大が行える。CC 2015の計測結果も数値で表してはいるが、実際は数値にできるものではなく、測定限界値以下と考えてほしい。

Windows 7の「ズームアウト」のテスト結果

MAC OS Xでの計測結果も同様の傾向だ。CC 2015では知覚できるほどの待ち時間は存在せず、ズームイン/アウトに対してそのまま描画が行われているかのように操作が可能。今回は速度を測るために段階的なズームは行わなかったが、ズームツールを選択してマウスをドラッグすると、シームレスなアニメーションズームを体験することができる。

MAC OS Xの「ズームアウト」のテスト結果

より細かな指定が可能となったダイレクト選択ツール

Illustrator CC 2015では、直接的な処理速度だけでなく、オペレーションの簡略化にも改良が加えられている。そのうちのひとつが、ライブコーナーだ。ダイレクト選択ツールでアンカーポイントを直接選択することが可能になったため、指定した角のみを簡単に丸めることができる。CC 2014以前であれば全ての角が同時に丸められていため、作業速度が大幅に改善されるはずだ。今回は正四角形の左下の角のみを丸めるという作業を実際に行い、CC 2015およびCS6で作成までの時間を比較してみよう。

CC 2015では角にアンカーポイントが表れ、ダイレクト選択ツール直接指定して丸めることが可能。CS6のワークフローと比べるとはるかに直感的に操作できる

このベンチマークは、以下のワークフローにて実施した。CS6での作業の流れは、まずシェイプツールを使用して四角形を描画。こちらの四角形をコピーしてアンカーポイントを作成し貼り付ける。そして「効果」-「スタイライズ」から「角を丸くする」を実行し、半径を指定して実行。続いて「オブジェクト」の「アピアランスを分割」を実行し、ペンツールの「アンカーポイントの削除ツール」でアンカーポイントをクリックして削除。最後にパスファインダーから「合体」を実行した。非常に手間のかかるワークフローだ。

それに対してCC 2015での作業は簡単だ。シェイプツールを使用して四角形を描画、その後、ダイレクト選択ツールでアンカーポイントを選択してマウスドラッグするだけとなる。この2つの作業手順を習熟し、可能な限りすばやく実行してその速度を計測。10回ほど繰り返したのち、速かった数値上位3回の結果の平均を比較した。

Windows 7の「角を丸める作業」のテスト結果

個々の処理自体には待ち時間はほぼ発生しないため、Windows 7/Mac OS XというOSの違い、新旧マシンスペックによる違いは確認できない。しかしCC 2015/CS6というバージョンによる速度差はワークフローの数からも明らかだ。CS6において、一連の作業の流れを迷いもクリックミスもなく行っても、CC 2015のほうが倍以上の速度で角を丸めることが可能だ。実際にイラストを作成する際には試行錯誤を加えつつ変化させていくことになるため、さらに大きな時間差となって表れることだろう。

MAC OS Xの「角を丸める作業」のテスト結果

細かいツールへの最適化が進められた「Photoshop CC 2015」

Adobe Creative Cloud 2015 ベンチマークレポート Part.2では、GPUパフォーマンス機能が強化されると同時に、オペレーションの簡略化が行われたIllustrator CC 2015についてお伝えした。よりイラスト・デザイン制作に集中できるようGPUへの最適化を着々と進め、マシンのスペックを最大限に引き出すことが可能なIllustrator CC 2015。今回導入されたアニメーションズームについては、ぜひ一度体験版などでその速度を試してみてほしい。

Creative Cloudがどれだけ凄いかCS6と比較! 新旧のWindows/Macでチェックしてみた


■Part.1:Photoshop編 ~機能の追加とともに細かいツールへの最適化を実現~
■Part.2:Illustrator編 ~GPUパフォーマンス機能強化、オペレーションの簡略化~
■Part.3:Lightroom編 ~大量のRAWデータもストレスなく高速に現像可能~
■Part.4:Premiere編 ~高解像度映像をストレスなく編集し書き出せる~
■Part.5:InDesign&Dreamweaver編 ~64bitアーキテクチャによりパフォーマンス向上~

(マイナビニュース広告企画:提供 アドビ システムズ)

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