1981年に創業したメンター・グラフィックス・コーポレーション(以下、メンター・グラフィックス)は、長年にわたりEDA(Electronic Design Automation)分野で高い実績を残してきた企業だ。同社の顧客は、半導体やエレクトロニクス産業、通信業界、自動車産業、航空宇宙産業など多岐におよぶ。

そんなメンター・グラフィックスが現在特に注力しているのが、オートモーティブソリューションである。1991年に自動車産業向けのEDAを発表した同社では、その後24年にわたって同分野の設計ソフトウェアを発展させ、「今ではわれわれの投資比率が最も高い分野になっている」と、同社取締役会長兼最高経営責任者のウォルデン・ラインズ氏(以下、ラインズ氏)は語る。来日したラインズ氏に、同社の自動車産業に向けた取り組みを聞いた。

高い成長率を誇るオートモーティブ部門

ラインズ氏によると、メンター・グラフィックスのオートモーティブ部門の売上は全社の15~20%を占め、年率15%という高い成長率を遂げているという。2015年3月には、以前フォードで最高技術責任者を務めたポール A. マスカレナス氏を取締役員として迎えており、「彼のこれまでの経験や業界の課題に対する洞察力は、われわれの経営にも良い影響を与えている。自動車関連のコンソーシアムで自動車の電子化を推進する役割も果たしており、今後われわれを良い方向に導く役割を果たしてくれるだろう」(ラインズ氏)としている。

メンター・グラフィックス・コーポレーション 取締役会長兼最高経営責任者
ウォルデン・ラインズ氏

メンター・グラフィックスが提供するオートモーティブソリューションは、大きく3つの主軸から成る。その1つは、車載のコネクティビティとネットワーク。概念設計から設計図の書き起こし、エンジニアリング、検証、製造、出荷後の保守整備までを網羅し、「自動車会社が電装システムを設計する際の完全なソリューションが揃っている」とラインズ氏は言う。

2つ目は、車内での快適性やユーザーエクスペリエンスを高める分野で、車載インフォテイメントシステムやドライバーへの情報提供、運転支援システム、ノイズキャンセレーションなどが含まれる。これは現在急成長中の分野だという。

3つ目は、ハイパワー熱測定や光熱シミュレーション、エレクトロニクスの冷却システム、空調の流れの解析など、自動車設計に関する個別のニーズに対応できるツール群。それぞれを組み合わせることで、「車載エレクトロニクスシステムの設計に関するすべてをカバーしたいと考えている」とラインズ氏は言う。

これらのオートモーティブソリューションは、メンター・グラフィックスの中でも最大の研究開発チームによって開発されている。ほとんどは自動車業界に特化したものだが、一部はこれまでに培ってきたシステム設計の技術を生かし、自動車分野のみならず他の分野に応用できるものもあるという。

メンター・グラフィックスがカバーするオートモーティブソリューションの3つの領域

電気電子化が差別化につながる

自動車では電気化や電子化が進んでいるが、ラインズ氏は「これこそが自動車関連企業の大きな差別化につながっている」と主張する。自動車の機能性や安全性、燃費の高さなどを追求する中で、電気化と電子化は欠かせないというのだ。電気電子関連コストの割合は、現在ハイエンドカーにおいて車両コストの約40%にも上っているという。

そうした中で重要なポイントは「コミュニケーションとセキュリティだ」とラインズ氏は語る。ラインズ氏の言うコミュニケーションには、2つの意味がある。1つは、センサーやマイクロコントローラーなどをつなぐワイヤーハーネスが高い信頼性を持って接続できるという意味でのコミュニケーション。もう1つは、部品の複雑性が進む中、個別の部品を製造するOEM間でのコミュニケーションも重要になってくるという。

また、「電装プラットフォーム内におけるデータの一貫性と完全性も重要だ」とラインズ氏。製品の定義から設計、製造、出荷後の保守に至るまで、データを完全かつ一貫した状態で維持することが求められるという。さらにセキュリティについては、「これまでは、車載インフォテイメントシステムなどの楽しみを提供する機能と、安全性を確保すべきシステム部分の設計は分かれていたが、現在ではこれらの領域が統合されている。安全基準が異なる領域がつながることで、安全性を阻害することがあってはならない」としている。

製品定義から設計、製造、整備保守まで、データの一貫性と完全性に対応

自動車業界ではリコールが後を絶たず、大きな問題となっている。この点についてラインズ氏は、「メンター・グラフィックスとしてできることは、自動車部品のサプライヤーに、できるだけ設計の早い段階で機能を検証してもらうよう促すこと。ソフトウェアを使って機能を検証し、早い段階で不具合を見つけることができれば、製造後の不具合の確率が下がることはもちろん、修理コストも抑えられる。出荷後に不具合が発覚するといった最悪の事態を避けるためにも、早い段階で検証することが重要だ」としている。

内製の多い日本市場で、自社の存在感を示していきたい

すでに24年にわたってオートモーティブソリューションを提供しているメンター・グラフィックスだが、自動車業界は簡単に参入できる市場ではない。システムの要件が複雑で、新しい技術を取り入れることに関しても慎重になる傾向が強いためだ。

同社では、オートモーティブソリューションを提供する以前より自動車関連会社を顧客に抱えていたものの、「当初はこうした企業もPCB設計ツールを導入していただけだった」とラインズ氏。その後、1991年に自動車向けワイヤーハーネスの設計に特化したツールを発表し、徐々に顧客ベースを拡大。「今では自動車業界大手の企業やOEM企業の半数以上がメンター・グラフィックスのツールを採用している」という。

「小さなプロジェクトから始めて信頼関係を作り、徐々に規模を拡大して大きなソリューションの採用にも至った。初期の顧客は主に米国や欧州の顧客が多かったが、一部日本の企業でも採用してもらった」と、ラインズ氏はこれまでの長い道のりを振り返る。

こうして地道な努力で顧客数を増やしてきた同社が現在注目しているのが日本市場である。ラインズ氏は日本市場について、「これまでは半導体関連の顧客が中心だったが、今後は自動車産業においてもわれわれの存在感を示したい。日本での自動車産業は急成長しており、今後メンター・グラフィックスが成長するにあたって日本市場は最も重要な市場だ」としている。

ラインズ氏は、米国や欧州の企業と日本企業との違いについて、「米国や欧州の企業はわれわれの提供する標準的なソリューションをそのまま採用するケースがほとんどだが、日本では多くの企業がソリューションを完全にカスタマイズするか内製している」と語る。この点についてラインズ氏は、「カスタマイズによって差別化することや、各社の専門性を追求したいことが背景にあるためだと思うが、われわれの標準的なソリューションを適切に活用すればコスト効果が高く、スケールメリットも得られつつ、さらに顧客製品の肝となる機能開発に集中できるようになることを理解してもらいたい」と述べた。

(マイナビニュース広告企画:提供 メンター・グラフィックス・コーポレーション)

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