イギリス・ロンドン郊外のオール・イングランド・クラブでウィンブルドン2015が幕を開ける。天然芝の緑の絨毯で繰り広げられる2週間のテニスの祝宴を、世界が注視しているのはもちろん、日本のファンには錦織圭の活躍が楽しみな大会となる。果たして、日本の星は「BIG4」を倒し、初の栄冠を手にすることができるだろうか? 今回は、各選手の紹介や試合の見どころをご紹介しよう。

テニスの聖地と呼ばれるウィンブルドン。創設は1877年と四大大会(ほかに全豪、全仏と全米)でもっとも古く、当初は園遊会のような雰囲気の中で選手がボールを打ち合ったという。時代が進むにつれて競技性を高めているが、伝統と格式を重んじるトーナメントであることに変わりはないだろう。なお、ウィンブルドンテニスの試合は6月29日(日)よる19時30分から、7月13日(月)まで、WOWOWプライム・ライブにて連日生中継(※7/5(日)を除く)される。

(中央から時計回り)錦織 圭 写真:アフロ、アンディ・マレー Getty Images、ノバク・ジョコビッチ、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル 写真:AP/アフロ

四大大会のうち、グラス(芝)コートで行われるのはウィンブルドンが唯一だ。今では芝コートは一般的でなくなり、1年のうち芝で大会が開催されるのはウィンブルドン前後の数週間のみ。それでも選手たちは、慣れない芝をなんとか克服しようと日々技術を磨いているのは、このウィンブルドンこそ全テニス選手の憧れの舞台だからだ。

芝コートの最大の特徴は“球足の速さ”ではないだろうか。短く刈り込まれた芝の上で、ボールは低く鋭く、滑るようにはずむ。したがって、ベースラインの後方でゆっくり打ち合う守備型の選手より、ポジションを前にして積極的に打っていく攻撃型の選手が有利とされるのだ。ただし、近年は男女とも総体的に守備重視の傾向があり、ウィンブルドンのコートもそれに合わせて少し球足が遅くなるように整備されているようだ。

前年者覇者で世界ランク1位のジョコビッチ、四大大会優勝17回のフェデラー

今大会の見どころをひとことで言うなら、男子の「BIG4」に錦織圭がどう挑むかだろう。

「BIG4」とは、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ロジャー・フェデラー(スイス)、アンディ・マレー(イギリス)、ラファエル・ナダル(スペイン)を指す。「TOP4」ではなく「BIG4」なのは、彼らがいずれもテニス史に残る名選手と評価されているからだ。

ジョコビッチは現在の世界ランキング1位。これまでに四大大会で計8回の優勝、ウィンブルドンでは2011、14年と2度の優勝を飾っている。今シーズンは1月の全豪で優勝、全仏では準優勝している。28歳の王者は抜群の安定感と広い守備範囲を誇っているのだ。

打ち合いで劣勢に陥っても「まさか、ここからこんなショットが」というような質の高いボールを返し、観客を驚かせるのが印象的だ。どんな局面でも強気を保ち、落ち着いてプレーできる精神面の強さも特筆すべきだろう。昨年の優勝者であり、今季も好調を維持しているだけに優勝候補の筆頭とも言える。

そして、フェデラーは文字通り「生ける伝説」の名にふさわしいプレーヤーだ。四大大会で通算17回優勝は歴代1位。そのほかにも、世界ランキング1位在位302週など、男子テニスの記録を独占している。

ウィンブルドンでは03年からの5連覇など、これまで7度の栄冠を掲げ、芝の王者とも称されている。動きのなめらかさとショットのスピード、ショットを繰り出すテンポの速さなど、そのプレースタイルが芝にぴったりはまるのだ。四大大会のタイトルは12年ウィンブルドンから3年間手にしていないが、経験豊富な33歳はグランドスラムの戦い方を知り尽くしているのだ。やはりこの選手も優勝候補から外すわけにはいくまい。

さらに、フェデラーと並ぶ優勝候補の2番手にマレーの名を挙げるべきだろう。ウィンブルドンでは13年に優勝。地元イギリスの男子選手としては77年ぶりの栄冠となり、国民的英雄となった。四大大会では12年全米で優勝、また、同年のロンドン五輪で金メダルを獲得しているが、男子選手には珍しく、女性のアメリー・モレスモー(フランスの元トッププレーヤー)がコーチについている。

マレーは、以前から守備力は超一流と見られていたが、ここ数年より積極的にボールを展開し攻撃力が増しているのは、このコーチの指導あってのことだろう。また、地元ファンの声援も当然追い風となるに違いない。