コンピュータは必須アイテム

―― 将棋電王戦がきっかけとなり、プロ棋士も自分のレベルを上げる目的でコンピュータを活用していく方向に向かっているような気がしています。西尾六段はどう考えていますか。

西尾 戦術的な知識の部分は、明らかにコンピュータを使ったほうがよい事前研究ができるので、私も普段からよく使っています。ただ、コンピュータに頼ったほうがいい部分と、頼らないほうがいい部分があると思います。

―― コンピュータに頼らないほうがよい部分というのはどこですか。

第3回将棋電王戦でGALLERIA仕様の和服姿で臨み、屋敷伸之九段を破った山本氏(2014年4月12日)。村山慈明七段との電王戦FINALはいかに!?

西尾 自分で考える。ソフトの手がすべてだと思わないことですね。コンピュータを使って研究しても、実際に対局するのは人間対人間なので、必ず未知の局面が出てくる。事前研究をかなりしていっても、完全にハメて勝つなんていうことは年に1回あるかどうか。であれば、自分の頭をちゃんと使うということですよね、当たり前ですけど(笑)。実際ソフトを使っていると、これでいけるんじゃないかみたいな気分に陥りやすい。それはよくないと思うので、普段から「自分の演算能力は保つ」ようにすることは大切です。たとえば詰将棋を解くなり努力が必要なわけです。とはいっても、研究パートナーとして、性能のよいパソコンを持っておくべきだと思いますね。最近、プロ棋士にも「パソコン買おうと思っているんだけど何にすればいい?」とか相談されます。

―― それはぜひ、ガレリア電王戦を紹介してください(笑)。

西尾 私もドスパラの製品を使っていますから(笑)。私はデスクトップPCを勧めているんですけど、あとで聞くとなぜかノートPCを買う棋士が多いです。

山本 デスクトップPCとノートPCってけっこう性能差があるっていうことが認識されてないですね。

―― 電王戦公式統一採用パソコンのガレリア電王戦は、一般に市販もされていて、誰でも購入できます。最新のCPU(中央演算処理装置)を搭載しているうえ、メモリ(主記憶装置)の量が多いのも大きな特長です。

山本 何といっても64ギガバイトですから。将棋ソフトを超長時間考えさせるときは、やはりメモリがいっぱいあったほうがいいですね。専門的な話をすると、局面を調べたあとに記憶しておくための表みたいなものがあるんですけど、メモリが大きいとその表がいっぱい使えるのですが、小さいとすぐ埋まってしまって上書きされて消えてしまいますから。

将棋電王戦の意義

―― 山本さんは、プログラムを強くする方向に興味が向いていると思うのですが、新たな将棋を創造するという面には目を向けないのでしょうか。

山本 私のプログラムはけっこう自由な手を指すみたいなので、そういう意味ではできつつあるのかなあと思います。まあそうなるように少し意識して、開発者によっては評価関数に制約を多分につけたりして、弱くならないようにしておこうというところですが、私の場合は割とそういうのはずぼらというか、ソフトに任せています。

西尾 プログラムに定跡を入れないのも、山本さんの世界観ですよね。

山本 それは戦略の意味もあるんですけどね。自分としては一応強いソフトだと思っているので、定跡手順をすぐに外れてひたすら長く指したほうが勝負として有利だと考えています。あと、ソフト自身で定跡を作ったりもしています。西尾さんはフラッドゲートで面白いアイデアを見つけたりしていますか。

西尾 フラッドゲートでは、年間10万局以上の棋譜が生成されます。人間は、意思を持って新手を指そうしますが、コンピュータにはそれがないので、広いゲームツリーの中で有益となるアイデアを見つけるためには、たくさん情報量がほしいんです。もちろん、膨大な棋譜全部に目を通すことはできませんから、自分が知りたい将棋に絞って調べるようにしています。自分の心に引っかかる指し手が出たらストックしておき、情報を整理しています。ポナンザの将棋ももちろんよく見てますよ。9000局くらい持っています。

山本 それは人間の見る量じゃないですね(笑)。最後にこれを言っておきたかったのですが、将棋の序盤って、けっこう何でもいいんだなと最近強く思っているんです。私自身が将棋を指していた時期は序盤に息苦しさを感じていたのですが、コンピュータ将棋の開発を始めてから、まだまだ将棋というゲームの序盤は広くてびっくりする手がいっぱいあるんだなあと教わりました。

西尾 自分もそれは本当に痛感しています。先手勝率がいいのは棋士の中では間違いないところで、後手だからきついとなりがちでした。そこに突破口じゃないですけど、まだまだ指されていない戦型がたくさんあるのだったら、後手番でももっともっとたくさん指してみるべきじゃないかなと思っています。そういう将棋の可能性を再認識するようになったという意味でも、将棋電王戦開催の意義があったといえますね。

電王戦公式統一採用パソコン「GALLERIA 電王戦」

価格:359,980円(+税)

「最良の一手」を導く、卓越した性能と安定性

将棋ソフトの持てる力のすべてを出しきれるよう、現在望みうる最高ランクの性能を持つCPUを採用。効率的かつ高速な演算性能により、各ソフトの秘めた力を十二分に引き出すことができます。また、使用パーツを厳選することで、高負荷状態でも長い時間安定して稼動し続けられる、まさに「将棋ソフト向けモデル」です。

※詳しいスペックにつきましてはドスパラのサイト(http://www.dospara.co.jp/syogi/)をご覧ください。

本稿は、日本将棋連盟発行の『将棋世界』2015年4月号の記事の転載です。

(マイナビニュース広告企画)

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