「これからの時代、英語は絶対に必要だ」と、ずっと前から言われてきた。すでに英語の必要性を実感している人も多いだろうが、一方でいつまでたっても英語が身近なものにならないと感じている人も多いだろう。英語の同時通訳者・翻訳家として世界の一線で活躍する関谷英里子さんと、オンラインビジネス英会話「ビズメイツ」の取締役・最高品質責任者を務める伊藤日加さんに、日本人と英語の関わり方について対談していただいた。

「『ビジネス英語』とはいっても普段のコミュニケーションと変わりません」

ビズメイツ 取締役 最高品質責任者 伊藤日加さん

マイナビニュース(以下、MN):2020年に東京五輪が開催されることが決定しました。富士山の世界遺産化などもあり、今後、日本には数多くの外国人が訪れることと思います。

伊藤日加さん(以下、伊藤さん):とても楽しみにしています。これがきっかけとなって、やっぱり英語が必要だという流れが強くなるといいですね。実際に外国人に道をたずねられる経験を一度でもすれば、自分も英語を勉強しなければというマインドにつながるでしょう。

関谷英里子さん(以下、関谷さん):日本人は「おもてなし」の心を持つ国民性ですから、人が困っていたら助けたいという気持ちをみんなが持っていますよね。でも、英語ができないというだけで、困った人に声をかけてあげられないのはもったいないことです。

プレミア・リンクス 代表取締役 関谷英里子さん

伊藤さん:多くの日本人は、英語ができないのではなくて、ある程度は理解できますし、単語もいっぱい知っています。だから、なんとかすればコミュニケーションがとれるんですね。あとはマインドの問題です。ちょっと勇気を出して、声をかけてみてほしい。

MN:いま、ビジネスを進めるうえで「グローバル化」が大きなテーマになっています。日本でも一部企業が英語を社内公用語化するという流れが起きていますが、この点についてはどう思われますか?

関谷さん:外資系企業では以前から、上司や同僚に外国人がいるので、必然的に英語を使わなければコミュニケーションをとれないという状況がありました。事実上の公用語です。それが今度は外資系でなく、日本の企業で公用語化されたことが話題を呼んだのでしょう。日本発祥の会社にとっても英語がそこまで必要になったという状況を象徴する出来事ですね。

伊藤さん:もう何十年も前から英語が必要だといわれてきたのですが、ではどこまで必要だったかというと、部署単位や個人レベルだけだったのです。それがいまは、日本の企業でも海外に出ていかなければビジネスが成り立たないところが増え、英語の必要性が身近になってきました。そういうところへ、一部の有名企業が英語の公用語化を宣言したことで、ようやく実感する人が増えてきたといえるでしょう。

MN:英語の社内公用語化の流れは今後も進んでいくでしょうか?

関谷さん:それは企業それぞれの方針だと思うんです。今後海外に展開するという方針があるのであれば、社内の言語もそれに向けて適応させていく必要が出てくるでしょう。あくまで会社の必要性ということで、同じ業界の会社が公用語化したからうちもやろうというだけでは、仮に公用語化したとしても浸透しないと思いますね。

伊藤さん:もうひとつ、現在は多くの会社が買収を始めています。そうすると、実際に英語を使わなければいけない場面が突然、目の前に現れてくるんです。外資系企業に買収されて外国人経営者が入ってくることもあれば、反対に海外の企業を買収して海外転勤する、ということもいつ起きるかわかりません。

MN:そうなると、外国人に道案内をするのとはまた違った、いわゆる「ビジネス英語」を勉強しておく必要があるのでしょうか?

関谷さん:よく「ビジネス英語」という言い方をされますが、英語としての基本はビジネスでも、観光や普段のコミュニケーションでも同じです。ビジネスと聞くとハードルが高いと感じる人が多いのですが、自分が日頃、仕事としてやっている業務内容に関わることを話すだけなので、その意味ではむしろハードルは低いと思うんです。

伊藤さん:私もそう思います。日常的に使っている専門用語を英語に置き換えるだけなら、それほど難しいことではありません。ただ、日本人の多くは、間違えるのが怖いと感じています。ビジネスはフォーマルでなければいけないと思い込んでいるので、知っているはずのことがその場でなかなか出ないんですよね。