ある程度社会人経験を積み年次が上がると、部下を持つ立場になりますね。世代の違い、価値観や考え方の違いなどで部下とのかかわり方に課題を感じる場面もでてきます。仕事の進み具合や部門の業績などにも大きくかかわってくるため、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか? 今回は中間管理職のみなさんに部下の人材育成について、お話を伺いました。

まず大事にしているのは「相手の話を聞く姿勢」

普段、部下とどんな風に仕事をしていますか?

職種は異なっても悩みごとは同じ

Aさん(仮名・30代 チームリーダー)
IT企業でユーザー常駐のIT支援をしていますが、通常の勤務場所はそれぞれのユーザー会社のため上司部下として顔を合わせる機会は限られています。日頃から何かあればすぐに連絡するよう言っていますし、時々みんなで集まる機会を設けたり、1対1の面談を行ったりしています。

Bさん(仮名・50代 係長)
医療機器製造販売会社に勤務し、海外に輸出する営業サポートが主な仕事です。部内は中堅、若手と揃っていますが、誰に対しても等身大の生身の自分で接しています。チームワークが非常に重要なので、仕事の後に飲みに行ったり、ホームパーティーを開くなどして日頃から親睦を深め、結束を強めています。

Cさん(仮名・40代 マネージャー)
素材メーカーの監査部門で働いています。年上の部下がいて対応に苦慮することがありますが、「報・連・相」を意識して情報の共有を心がけ、相手の自尊心を大切にしながら接しています。

Dさん(仮名・20代 窓口営業)
仕事は銀行の窓口業務で入社二年目です。とても忙しく目の前の仕事をこなすことに精いっぱいなのですが、新人教育も担当。入社間もない後輩なので励ましながら指導していますが、ミスをしてしまうと必要以上に落ち込んでしまい、うまくモチベーションアップできるよう働きかけが課題と感じています。

真面目なものの、打たれ弱さや受け身な姿勢が気になる

部下に対して気になることはありますか?

相手の気持ちに共感できることも多い

Bさん  世代が違うこともあるのですが、新入社員くらいになると何を考えているかわからない部分はありますね。どこまで言えばいいかわからず、あまり強くいうと「明日来なくなってしまうのでは?」と思うこともありますよ(笑)。全体的には打たれ弱いように感じます。自発的に動くことはあまりなく、歯がゆさを感じることも多いですね。

Aさん  確かに打たれ弱さは感じます。自分の時はもっと厳しいことを言われても平気だったような気がします。よく上司から対応を任されますが、若手の気持ちに共感できる部分もあるので、なるべくやわらかい表現で伝えるようにしています。

Cさん  他の方と違いうちの部署の新入社員は厳しい就職戦線を勝ち残ってきただけあって、非常に優秀です。話を聞く、報・連・相を欠かさないなど、仕事では未熟な面はあってもきちんと基本を意識して仕事に取り組んでいるように感じます。

Dさん  自分が入社した際は指導担当者がいなかったので、全部一人でこなしていました。わからないことは忙しい仕事の合間を見計らって上司に質問するなどして、必死に仕事を覚えていきました。それに比べると今の後輩の環境はだいぶ恵まれているように感じます。ただそのせいで自分から知ろうとする意欲が弱く、受け身な姿勢が気になります。

「一日三回の質問」で、問題意識やコミュニケーション力を育てる

部下との接し方で気を付けていることはありますか?

意識的に仕事中の声掛けを増やすことは大切

Aさん  まずは相手の言い分を聞き、非難はしないようにしています。部下自身で問題点に気付いてほしいので、周囲の評価などを事実として伝え、自発的に気付いてもらうよう接しています。もともと素直なのでこちらから言ったことはやるのですが、わからないことがあってもそのままで済ませてしまい、自分から聞きにくることは少ないですね。そのため初めから「一日三回は必ず質問するように」と伝えて、否応なく問題意識やコミュニケーションを持たせるようにしています。

Bさん  柔軟に偏見を持たずに接します。失敗には改善点を伝え、次の機会にまた仕事を任せます。しっかり怒りながらも言い分を聞き、次に頑張るよう励ました後で、こちらが期待していることを伝えると、やはり目の輝きが変わってきますよ。そうすると次の仕事を徹夜して仕上げてきたりするので、仕事帰りに飲みながら労をねぎらい、無礼講で話を聞きます。
日中は仕事が忙しいのでとめどなく話を聞くことはできませんが、飲みの席ではとことん話を聞き、腹の底にあるものを全部出させるようにしています。自分としてはこちらの方が部下の育成にはずっと大切で、信頼関係はものすごく強くなるように感じています。叱るときは叱り、ほめるときは大げさなくらいほめて、メリハリをつけて接していますね。

みなさん、部下に対して世代特有の価値観の違いは感じつつも、頭ごなしに否定したり自分のやり方を一方的に押し付けたりすることなく、まずは話を聞いて、相手を理解するという姿勢を大事にされていますね。そしてより固い信頼関係を築くために、仕事帰りに無礼講の席を設けたり、仕事中の声掛けを増やすなどのほか、「一日の質問の回数を決める」など部下がコミュニケーションを取らざるを得ない場を意識的に作っているところが印象的でした。次回の連載2回目では、「部下の叱り方」についてご意見を伺っていきます。


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