仕事を行っていくうえで考えなければいけないのがキャリアの形成。そのプランニングを支援するキャリアカウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)とは、どのような資格なのでしょうか。また、どのような特徴なのでしょうか。日本マンパワーCDA養成講座での講師陣のお一人,原恵子先生に伺いました。

CDAの役割や専門性,学び

JCDA認定CDAインストラクター 原恵子講師

私自身は、CDA資格を取得し10年が経ちました。独立前は人材サービス会社におりましたので、実際の資格取得のきっかけは会社からの要請でした。しかし、大学での専攻が心理学だったことや元々の指向や様々な機会や偶然も重なり、資格取得後も深く掘り下げて学びたいと考えるようになり、現在に至っています。

キャリアというのは、仕事のみで成り立っているわけではありません。仕事だけではなく生活をも含めたいわば「生き方全体」という広い定義でキャリアを捉えていくことが大切な視点となります。そのため、キャリア支援に関する多様な基礎理論や技法を基盤におきながら、キャリアカウンセラー自身の様々な経験や人生観・職業観も大切な側面になります。一人一人のキャリア,まさに人生全体を大切に思いながら,その方と一緒に考え今後に向けての意思決定や問題解決を支援していくことがCDAの大切な役割や専門性だと私は感じています。

CDAでの学びを通して、人とのかかわり方やプロセスが変わってくることを実感できると思います。例えば、その方の「自己概念」というものを理解しようとしてかかわることと、ただの問題解決として処理的にかかわるのでは、表現方法や聴き方,伝え方は全く違うものになるのだと思います。かかわり方や細かなプロセスが変わっていくことで,仕事においても、きっと様々な部分や関係性の質的な側面が変化することが実感できると思います。

8日間の講座のなかで見えてくる受講生の方の変化

例えば今も、CDA養成講座8日間中の途中なのですが、受講生の方にいろいろな変化が出始めています。キャリアカウンセリングの奥深さを感じられていたり、これまでの自分の経験や価値観だけでかかわるのではないといった,、支援者としての葛藤のようなものが出てきているようです。

一概には言えないのですが、CDAとして必要な姿勢には,二つあるのではないかと思っています。まずは「自分自身を見ようとしているか」ということ。私たちキャリアカウンセラーは、自分自身がいわば「道具」とも言え、自分自身の理解、例えば自分の中にある経験や強みや弱み等をふりかえり,人とかかわる時に陥りがちな傾向やパターンなどを理解していこうという姿勢や努力は不可欠であると思います。自分について,「弱いところも含めて色々な部分があるけど、それも自分だよね」と自分自身を受容しようとして,まずは率直に自分自身と接しようとする姿勢のもと、他者にかかわつていくことが必要なのだと思います。もう一つは、「人は変化する存在であるということを,を信じられるかどうか」ということ。相手の小さな変化を見逃さず、プロセスを通じて相手を見つめていく力が必要だと感じています。

日本マンパワーの養成講座は、序盤でじっくりと「自己概念とはなにか」など内面的な揺れや動きを体験的に理解や実感をしたうえで、徐々に「キャリアカウンセリング」に関する具体的な理論や技法を習得するプログラムに入っていきます。もう少し内容をご紹介すると、序盤はキャリアカウンセリングを支える基本的な考え方や自己概念の成長について体験的に学んだあとに,支援スキルの習得を目指すプログラムから始まっていきます。その中で,心のメカニズム、例えば心の複雑性や曖昧さをも受講生に感じてもらいながら進んでいきます。全体を通した特徴としては,様々な演習,例えばグループ内での討議やロールプレイ,ケーススタディなどを多用し,仲間との対話や体験を通して学んでいただくことでしょうか。例えば,グループワークでの対話の中では,受講生同士の多様な価値観がぶつかりあい、自分の考えとの共通点や相違点を感じることで,視野の広がりも実感することができます。

その後,中盤以降については、キャリアカウンセリングを支える理論や具体的な手法の理解に入っていき,最終段階では、実際的なキャリア・プランニング・プロセスについても学んでいきます。例えば終盤では、求職活動窓口で実際に行われていることを具体的に体系的に整理していくなど、実践現場で求めらる役割や機能についても改めて学べる構成になっています。

多方面での活躍するCDA

キャリアカウンセラーが活躍する主な領域としては,「教育領域」「企業領域」「就職支援領域」の3つがあり,そこでは行政や民間など多様な働き方をしているCDAの方がいらっしゃいます。また、今後は「生活支援」や「地域支援」などの領域についても、さらなる活躍が期待されています。

これまでを少し振り返ってみますと,2002年に「キャリア・コンサルタント5万人計画」という発言が当時の厚生労働大臣からあり,その後はCDA資格を持つ方の活躍の場が徐々に広がっていったことを実感しています。社会の多様化が進み,キャリアについての絶対的な正解があるわけでもなく,一人一人が自分なりの納得を考えていく必要があるとも言える現在,そうした現状を理解した上で,CDAが様々な領域で支援していくことが,更に期待されているのではないかと思います。キャリアカウンセリングは決して特殊なものではなく,ごく普通のこととして社会に認知される,キャリアカウンセリングやキャリアカウンセラーが言わば社会のインフラの1つとなっていくことを期待しています。

最後に。CDA の活躍の場は、これからも益々増えてくるのではないかと思っています。CDAを目指す方は、キャリアにかかわる専門職者として,自分のキャリアをいかに自律的に歩んでいけるかが大切なポイントにもなると思います。自分の持ち味,例えば興味や能力や価値観はどのようなところにあり,どのような将来像を描いているのか。そのために,すべきことやできることは何か。まずは自分自身のキャリアについて考え,行動していくことが大切だと思います。ぜひ,自分のキャリアを大切に育てながら,キャリアにかかわる専門家としてのステップを歩んでいってください。


[PR]提供: