対応の早さもウリ!

決して早足ではなかったが、ASRockは次第にユーザーの中での地位を確立していった。つい最近の出来事でも、それはさらに確実なものとなっている。「今年のIntelのチップセットリコール問題では、台湾本社とかなり話し合いを繰り返しました」と斉藤氏。

最新プロセッサであるSandy Bridge、すなわち第2世代Intel Coreプロセッサを搭載するチップセット「Intel 6シリーズ」に不具合が発見され、リコールとなった問題だ。「すでにお買い求めいただいたお客さんも大勢いらっしゃいました。店舗としてもいつ返品に応じられるか、期日がなかなか決まらず緊張していましたね」と小川氏は語る。

Intel 6 シリーズのチップセット不具合問題。すでに購入済みのユーザーも多く、各マザーボードメーカーが対応に追われた

ASRock本社とユニスター間では、改善版マザーボードの配布時期について直前まで協議を続けていたという。議論を重ねた結果、「結局、ユニスターとツクモで販売よりも先行して、ユーザーへの補填を行うことで決定しました」と小川氏。「何よりもお客様に喜んでいただかなければならない仕事ですから」と斉藤氏も自信を持った笑顔で語る。

万全のサポート体制が築く市場での地位

Intelリコール問題の渦中で、ユニスターとツクモは日本においてどこよりも早いサポートを実現することができた。しかし、こうした取り組みは以前から行われているのにお気づきだろうか?

「ユニスターが市場に投入する製品パッケージには、サポート連絡先が必ず明記されています。これはわたしたちが独自に行っている取り組みで、ご購入いただいたお客様に安心して使っていただけるようにしたものです」と斉藤氏は語る。また、ツクモとしてもASRockを初めて利用するユーザーに安心して購入してもらえるように、「パーツ交換保証」をいち早くASRock製品に無償で付ける施策を行なった。(現在は無償ではない。)「もともと、品質の高い製品ですが、より安心していただけるよう、初期不良交換をメインとした保証をつけることにしたのです」と小川氏。

ユニスターが市場に投入しているASRock製品にはユーザーサポートが添付される。悩み事から不具合まで、あらゆる相談に応じてくれる

日本語を含むマルチランゲージ対応の取扱説明書も標準で添付だ

ツクモでもASRock製品に通常は有償となる「パーツ交換保証」を標準添付している(現在は終了)

こうした手厚いサポートは古いユーザーの「自己責任」という言葉とは逆に、裾野が広がりを見せる新規自作ユーザーにとって大きなチェックポイントとなっているようだ。「パソコンの自作市場は厳しい時代に入っています。だからといって縮小してゆくのではなく、安心しながら自分で作る楽しさを多くのみなさまに知ってほしいのです」と駒形氏も語る。

不安を抱えながらの自作よりも、保証がきちんと整備された上で楽しみたい。そんなニーズにもしっかり応えられるサービスをユニスターとツクモが提供しているのだ。「とはいえ、トラブルが多いかというと、そんなことはありません。逆にいうと安心して使えるということを前提としているからこそのサービスでもあるわけです」と小川氏。いずれにしても、あらゆるユーザーにとって、保証が受けられるというのは自作を行う上で非常にメリットの高い付加価値を持った製品といるだろう。

ASRockの歴史がわかるミニコラム
覚えていますか? あの大事件

2007年。「ASRock」の歴史において忘れられない事件が起こった。ASRockの商標をめぐり、訴訟騒ぎが起こったのだ。ことの発端は、ASRockの世界市場への上場と共に、日本でも同様に上場するための商標登録を行おうとしたタイミングだった。「いざ商標を登録しようとしたら、すでに他社によって『ASRock』が使われており、商標の拒否査定が行われたのです」と、ユニスターの斉藤氏は当時を振り返る。

ことの経緯は複雑の一途を辿り、「ASRock」製品の取り扱いを止めてしまうショップも続出した。いよいよ裁判ということになった頃には取り扱っているのはツクモのみという状況にまで進展してしまった。「本当に苦しかったです。相手は韓国に籍をおきながら日本で商標を取得、ASRockは台湾の企業、そして舞台は日本、こうなると話は複雑になり、決着が難しい状況になってしまったのです」と斉藤氏。

同氏は続けて「それでも日本のファンのみなさまから声援を多く寄せてもらいました。ユニスターとしては、ここで立たなければみなさんに申し訳ないという一念で戦うことを決意したのです」と語る。他ショップが次々と取り扱いを止めてゆく中、奮闘を続けるツクモ。駒形氏は「ニーズは相変わらず高かったです。応援してくれるユーザーも大勢いましたし、やっぱり良い製品であることには変わりませんから販売継続を決めました」と当時の思いを語ってくれた。

結局、裁判はもつれこんだが、ユニスターの勝訴となり、日本市場で「ASRock」の商標を獲得した。「勝訴したときは大変うれしかったですね。ユーザーのみなさんにもようやく安心してもらえますし。勝つという確信は当時からありましたが、こういった訴訟では逆のケースも多いようです。実際にとある法律事務所では、珍しい判例として勉強材料になっているようですし」と笑顔で語る斉藤氏。

この一連の騒ぎの中、ユニスターとツクモが勝ち取ったのは裁判での勝利だけではない。多くの人々が見守る中、常にユーザーの立場に立ってくれるという強い信頼も勝ち得ていたのである。