連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。


意外と簡単! 工具に慣れよう - 再びハリウッド・リフォーム

本コラムの第23回『資産としての住まい(2) - 資産価値の高い住まいとは?』で、工藤夕貴さんのハリウッド・リフォームを紹介しました。電動工具を使いこなしてリフォーム費用を節約し、高額で売却することによって住まいからも資産形成を行えたケースです。

女性はもちろん、男性でも日本人は住まいを自ら手入れする習慣はあまりないようです。昔と違って構造体が表面に出ていず、作りも複雑になっていることも要因でしょうが、使い捨ての文化にとらわれてきた事が大きな理由だと思います。節約面だけでなく、使い易い住まいで快適に過ごすためにも、オリジナルの工夫ができるように是非工具に慣れてください。やってみれば意外に簡単なものです。

下記の写真はアメリカのホームセンターを視察した時の写真です。規模も大きいですが、まさに住まいのパーツのありとあらゆるものが揃っています。左から階段の手摺を部分的に組み立てたもの、階段の手摺、システムキッチン、ドアです。これらはホームセンターがリフォームを請負うためのサンプル展示ではありません。一般人もこれらのパーツを購入していくのです。価格もびっくりするくらいリーズナブルです。

ここまで本格的でなくても、収納の中に棚を作ったり、フックをつけたりするだけで、びっくりするくらい使いやすくなります。ネットを見ればサイズが細かく設定されて、どんなスペースにもアジャストできる収納キットやパーツが揃っています。専用の工具もセットされていることもあります。普通のドライバーなどでも女性の力でも簡単に組み立てられるようになっていますが、電動工具があれば力も不要です。

(C)佐藤章子

(※「工藤夕貴さんのハリウッド・リフォーム」)

"とりあえずの家具"が無駄の始まり - まずは収納を工夫しよう!

日本の住まいが雑然としたものになりがちなのは、「スペースそのものが広くない」「高度成長期に消費優先の生活スタイルが確立してしまった」「和洋中の料理が家庭にも浸透し、調理器具や食器の種類が多くなる」「四季があり、和洋2種類の衣服の数が多い」などの要因があります。しかし、とりあえず一時しのぎの家具などを購入しがちで、その結果室内や収納の内部が雑然とし、かつ使いにくいものになってしまっているのではないでしょうか。

家具を選ぶのは時間とエネルギーが必要です。中途半端な家具を買うくらいであれば、自分で収納の中の収納量を高める努力をしてみましょう。その間ゆっくり時間をかけて良いものをじっくり探してください。家具は一生使うものですので、本当に使いやすいものを探し出すのに時間がかかって当然です。

わが家のDIYの事例 - 本当に使いやすいものは自作が一番!

下記の4つの写真はわが家の事例です。いずれも私が自作したものです。D図の収納などは、女性が自ら使い易い寸法を細かく設定し、自分で作る方が納得のいくものができると思います。建築士だから簡単だと思われるかもしれませんが、細かい棚の位置などは難しく考えずに、実際のモノをあれこれ入れてみて最も使いやすい配置を探っていきました。リビングはフラッシュ・オフで撮影していますので暗く見えますが、和紙のおかげで実際はかなり明るい室内となっています。

A図

和紙で作ったスクリーンです。リビングの場合は、部屋を暗くする必要はありません。対面するマンションからの視線や強すぎる日差しを遮るためのものです。エアコンは日常的に使用しないので、自然の風を取り入れること考慮しています。レースのカーテンは風に揺らぎ、目隠しも陽射しを遮る機能面でもあまり役に立ちません。ダブルのカーテンレールを利用して和紙のスクリーンをスライドできますが、閉めた状態でも風に揺らがず、しかもしっかり風を通します。

作り方は直径2cmの半円形の木材を上下のバーにして、4倍の強さの障子紙を張っています。両端はそのままでも良いですが、折り返して、タコ糸を芯にして接着し、補強しています。以前はブラインド・カーテン・ロールスクリーンなど、いろいろ使ってきましたが、これが一番機能的で快適です。

B図

色紙を張った照明のシェードです。建材の和紙の色見本を利用しています。いろいろな工具や資料がある仕事部屋に、ちょっとした遊び心を取り入れています。

C図

白いテーブルも自作です。天板は学生時代に使用していた製図版に塗装しました。大学を卒業して親から独立した20代前半から、何度か塗装し直しつつ使い続けています。ソファーは事務所で使っていた自作のテーブルが不要になったので、足をはずして発泡スチロールのブロックの上に載せました。

クッションは座椅子です。以前は市販のチェアを5個L字型に配置していましたが、痛んだので処分しました。新しいソファーを探すまでの暫定処置として自宅にあったものを組み合わせました。普段ソファーはあまり利用しませんので、このまま使用しようかと考えています。

D図

洗面脱衣室の一角です。インターネットで収納棚のパーツを購入し、自分で組み立てました。奥行は3種類あり、35cmと19cmの2種類を2箇所で利用しています。巾は1cm単位で設定でき、スペースを有効に活用できます。耐震対策も万全で、設置方法によって2種類の補強方法があり、耐震金具はあらかじめセットされています。

中のボックスは100均ショップで購入しました。家族の下着やリネン類などを仕訳して収納しています。棚板の枚数や間隔も自由に設定できますので、体重計なども収納しています(写真一番下の部分)。非常に使いやすく、市販の既製品の隙間家具では、この満足感は難しいと思います。

(C)佐藤章子

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。