【コラム】

住まいと安全とお金

15 住宅ローンとの賢い付き合い方(2) - ローンの組み方と返済方法

 

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連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。


ローンの借り方は家族のライフスタイルに見合った方法を選ぶことが大切ですが、ローンは借り方だけでなく、借り入れたことによる将来起きるかも知れない様々なリスクを回避又は少なくするために、借りた後の管理も重要です。特に変動金利で借入れた場合は借り入れ後の管理は必須です。

ローンの組み方 ~生涯収支表が適正なローンの組み方を教えてくれる~

生涯収支表とは、現在から目的の年まで(定年まで、ローン完済年齢まで、平均余命まで等)の収入と支出と貯蓄高の推移を示したものです。住まいを取得すると、当然ながら頭金拠出による一時支出が突出します。その分貯蓄残高が大幅に少なくなり、家計経済が脆弱になります。そのことが将来の子供の教育や老後の生活、万一の場合の治療費や生活などに、どのように影響するかも生涯収支表で見極めることができます。貯蓄がマイナスになった段階で、家計の破綻、企業であれば倒産となります。そうならないように、ローンを借り入れる際には、生涯収支表の作成が不可欠です。家族のライフスタイル別の標準的生涯収支を想定した返済パターンを下記の表にまとめてみました。

(C)佐藤章子

  • 返済期間の設定…返済期間が長いと月々の返済額は少なくなりますが、総返済額は多くなります。しかし、途中で自由に返済期間を変えられる場合は別ですが、当初の設定は長く設定して月々の返済額を抑えて、一時的に収入等が低下した場合のリスクに備えるのも手です。返済期間を短くすると、何らかの事情で家計が苦しくなった時に、ローン破綻するリスクが高まります。総返済額は高くなりますが、やや長めの返済期間に設定し、月々の返済に余裕が生じた差額分はまとめて繰り上げ返済すれば、期間を短くしたり、月々の返済額をさらに下げたりすることができます。

  • 頭金の額…一般的には頭金は20%が適性と言われています。実際に住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が、返済が苦しくなり、返済方法等の相談に応じたケースは、20%の頭金が実質確保されていなかったケースが多かったそうです。以前は、融資額は購入費(又は建築費)の80%が限度であることが多かったのですが、現在はそのガイドラインは緩やかになっています。頭金の額だけでなく、貯蓄をいくら残すかも重要なポイントです。万一の時の病気や怪我での入院費が全くないと言うのは問題です。しかしこれもその家族の状況によって違ってきます。私は住まいを購入する時は、100万くらい残しましたが、入居までの内装や家具でほぼ使い切ったように思います。ただし、まだ若く病気のリスクも少なく、資格があったので仕事先の心配もそれほど必要がありませんでした。万一ローンが支払えなくなっても、月々の返済額の倍以上の金額で100%貸すことができる駅前物件であること、親も現役で仕事をしていで最後の砦とすることができる…など一通り考えて、貯金をすべて拠出することに踏み切りました。借り入れ後は大急ぎで節約して貯蓄に励んだのは言うまでもありません。

借入れ後のローン管理 ~ローン管理ができないなら固定金利の選択を~

  • 繰上げ返済の是非…頭金の拠出と預貯金の残高だけでなく、繰上げ返済を優先するか貯蓄残高の増加を優先するかは、大切なポイントです。繰上げ返済すれば、将来の金利の上昇リスクを少なくできますし、総返済額を押さえられます。しかし繰上げ返済はローン負担減という一点だけのリスクにしか対応できません。反面、貯蓄はなんにでも対応可能だという点で大きく違いがあります。

  • 期間短縮か毎月の返済額削減か…繰上げ返済には借り入れ期間を短縮する場合と返済期間は変更せずに毎月の返済額を少なくする場合があります。当然返済期間短縮の方が総返済額は少なくなります。しかし万一返済が厳しくなった場合を考えると、月々の返済額を減らしておいたほうが対応しやすくなります。月々の返済が減った差額分は別途貯蓄して、再び繰上げ返済の原資などに活用するようにすれば、リスクはさらに少なくすることができます。

  • 変動金利の場合のローン管理…変動金利で借り入れる場合の返済計画は、最低限その時期の固定金利の利率以上で返済するものと想定して計画してください。現在の低金利の変動金利でしか返済できない計画は、破綻の危険があります。固定金利での返済額との差額は定期的に繰上げ返済の原資等にプールしておきます。下記の表は、3,500万円を30年返済、変動金利で借り入れた場合のローン管理の一例です。金利は上昇していきますが、5年ごとに固定金利との返済金額の差額を繰上げ返済して、10年後に固定金利に変更しています。その時の固定金利が当初の固定金利の利率を超えても、総返済額は30万程度しか違いません。変動金利で借入れた場合はエクセル等で下記のような表を作って管理してみてください。繰上げ返済の程度によっては、金利が上昇するリスクをさらに減らすことも可能でしょう。反対に何もしなければ、負担増は大幅なものになるでしょう。簡易計算ですので誤差は生じますが、誰でも簡単にエクセルで管理できるのがメリットです。シートを替えて、いろいろな繰上げ返済方法などをシュミレーションしてみれば、ベストの返済方法が見えてくると思います。

(C)佐藤章子

世界的に考えると、安定した経済の成長のためには、住宅ローンの適正金利は6%程度だそうです。わが国でも住宅金融公庫の金利は長く5.5%で、民間銀行の住宅ローンは7~8%でした。現在の低金利状態が正常な状態だとは考えずに、自分にあった返済方法で余裕を持って計画し、借り入れた後の管理をしっかり行えば、リスクを少なくできます。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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インデックス

連載目次
第29回 住まいに関する節約術(4) - 女性でもできるDIYの薦め
第28回 住まいに関する節約術(3) - 一挙3得! 住まいに関する日々の節約
第27回 住まいに関する節約術(2) - その家具、本当に必要?
第26回 住まいに関する節約術(1) - 誰も教えてくれない"間取り"の経済学
第25回 資産としての住まい(4) - "長期優良住宅"とは!?
第24回 資産としての住まい(3) - 住まいの資産価値は次世代の人生設計に大きく関与
第23回 資産としての住まい(2) - 資産価値の高い住まいとは?
第22回 資産としての住まい(1) - 持ち家、賃貸、どちらが有利?
第21回 耐震リフォーム(4)--「家具の転倒」から家族を守るリフォーム
第20回 耐震リフォーム(3)--耐震診断・耐震リフォームの支援制度
第19回 耐震リフォーム(2)--耐震リフォームにはどんな種類がある?
第18回 耐震リフォーム(1)--耐震リフォームはなぜ必要なのか?
第17回 住宅ローンとの賢い付き合い方(4) - 住宅ローンアラカルト
第16回 住宅ローンとの賢い付き合い方(3) - リフォームローンにもある減税制度
第15回 住宅ローンとの賢い付き合い方(2) - ローンの組み方と返済方法
第14回 住宅ローンとの賢い付き合い方(1) - 住宅ローンの種類と仕組み
第13回 マイホームのための街選び(4) - 「2地域居住」も視野に入れてみては?
第12回 マイホームのための街選び(3)--"資産としての住まい"を考えての街選びが重要
第11回 マイホームのための街選び(2)-「街選びはふるさと選び」の心構えを!
第10回 マイホームのための街選び(1) - 街選びのポイント
第9回 「相続時精算課税制度」って何? その狙いとは?
第8回 「贈与税」と「相続税」の関係 - セットで初めて生きる"相続と贈与"の知識
第7回 相続税、知っているのと知らないのとでは大違い! 「小規模宅地等の特例」とは?
第6回 「相続税」が増税されるって、知っていますか?--政府の財源確保策!
第4回 いつ起きても不思議ではない大地震--知っていますか? 地震保険の仕組み
第3回 災害に強い住まいとは?--「地盤」を考えない住まいは、まさに"砂上の楼閣"
第2回 住まいと防災(2)--地域を知る~「釜石の奇跡」は"奇跡"ではなかった~
第1回 住まいと防災(1)-- 考えなければならない災害とは?

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