これまでのコラムでは、昨今の在宅ワーク事情や、在宅ワークをする上で有効なツールであるクラウドソーシングサービスについて紹介してきました。今回のコラムでは、どのような仕事の発注でクラウドソーシングを利用しているのか、どのようなワーカーに発注をしているのかなど、企業側からの視点をご紹介します。

スタディストの豆田裕亮氏

インタビューに答えていただいたのは、マニュアル作成ツール「Teachme Biz」を展開するスタディストの豆田裕亮氏です。「Teachme Biz」はクラウドソーシング型のマニュアル作成ツールで、画像とテキストを入力するだけで簡単にスライド式のマニュアルが作成できる最近注目のサービスです。

この「Teachme Biz」を運営している同社が、どのように「シュフティ」を活用しているかを通して、クラウドソーシングではどんな仕事があるのか、また企業に選ばれるワーカーになるためにはどうすればよいかが見えてきます。ぜひ、参考にしてみてください。

田中: どのような経緯で「シュフティ」をご利用されるようになったのですか?

豆田: 知人から紹介を頂いたのがきっかけです。以前から他のクラウドソーシングも利用していたので、「シュフティ」がどんなものかと試しに使ってみたのですが、ワーカーさんからのレスポンスが早くクオリティも良かったので、現在も継続して利用しています。

田中: 「シュフティ」ではどんなお仕事を発注されていますか?

豆田: 現在メインで発注しているものは中国語の翻訳です。最初は、試しに使ってみよう、という軽い気持ちで登録したのですが、すぐにベストなワーカーさんに出会えました。現在も継続してその方たちに依頼させていただいています。仕事が早く、希望納期日程の半分程度で仕上げてくださるので助かっています。

他にも単発で広告のバナー作成や、実際にあるサービス導入事例を紙のレイアウトに直す作業など、手間のかかる仕事に利用させていただいています。ただ、完全に依存して丸投げしてしまうと品質が低下する心配もあるので工夫しています。

切磋琢磨できる仕組みづくりで品質向上を

田中: 工夫ですか? もし良ければ、詳しくお伺いできますか?

豆田: 現在、翻訳作業は2名の方にお願いしています。1人の方に翻訳をしていただいたら、もうひと方に翻訳の見積額の半額で校正を兼ねたチェックをお願いしています。一人に任せてしまうと不安ですし、社内に確認できる人間もいません。その作業を交互にしてもらうことで、お互い「見られている」という意識が出て刺激にもなるし、ワーカーさんの向上心にもつながりますよね。コストは1.5倍ですが、品質保持のためその方法を続けています。

田中: なるほど、素晴らしい考えですね!翻訳の仕事は始めから外注を利用する予定だったのでしょうか?

豆田: 社内に英語と中国語の翻訳ができる者がいないということもありましたが、単純な作業は任せたほうが早いですし、こちらの仕事の効率アップにもつながります。私自身は、私がやるべき仕事に時間を使いたいというのもありましたの。単純作業に自分の時間を費やすより、低コストでしかも短時間で依頼できるなら、それ以上の事はありません。

田中: いいワーカーに出会えたとのことですが、優秀な方を見つけるコツなどがあれば教えていただけませんか?

豆田: まず見ているのは「見積もりの文章」です。メッセージの書き方はもちろん、日本語を正しく使えているかをポイントにしています。もちろん、見積もりのメッセージのみで判断して失敗したこともありました。依頼した広告のバナーの仕上がりがこちらのイメージと違っているとか……。クリエイティブな仕事に関しては、見積もり以外にも選定方法があるといいのかもしれませんね。

田中: では最後に、これからの事業展開とこれからのクラウドソーシングの活用法についてお話していただけますか?

豆田: 最近ではクラウドソーシング型のオンライン秘書を雇用し、請求書の発行や会食のアレンジを頼んでいます。私はお客さまのところに足を運んだり、考えたりといった自分にしかできないことに専念することが事業を伸ばすことにつながると思っています。そのような時間を増やすために活用すべきなのがクラウドソーシングではないでしょうか。以前なら人を雇うべき部分を、在宅ワーカーに依頼すれば、総務部門の全ての業務をクラウドソーシングで賄えるかもしれません。そう考えると、クラウドソーシングというシステムはまだまだ活用できそうですね。

前回の「"選ばれるワーカー"になるための3つのポイント」でも説明しましたが、「見積もりの文章」は、仕事を依頼するクライアントとの重要なコミュニケーションの場で、選定基準に大きく影響があることが分かりますね。

<著者プロフィール>

田中偉嗣(たなか たけつぐ)

株式会社うるる シュフティ事業部 部長。2006年早稲田大学卒業。新卒でベンチャー支援事業を行う企業でファイナンシャルアドバイザー、営業部長などを行う。その後、2009年に新卒で入社した企業より事業譲渡を受け独立。パートナーズ株式会社 代表取締役に就任。2010年株式会社うるる入社。2011年にシュフティ事業部長に就任し、その後主婦向けクラウドソーシング「シュフティ」事業部を牽引。毎月一回在宅ワーカーにインタビューを行うなど、在宅ワーカーの動向に詳しい。