【コラム】

Yet Another 仕事のツール

1 仕事の道具、オープンソースという選択

    鶴田展之  [2004/01/08]

    新年早々でおとそ気分も抜けていないが、MYCOM PC WEB編集部から新連載を任された。気合いを入れてみなさんに楽しんで貰える連載にしたいと考えているので、末永く暖かく見守って頂きたい。

    さて、この連載は「Yet Another 仕事のツール」と題してお送りする。タイトルの通り、基本的にはコンピュータを「仕事」に使うことにフォーカスしていくが、ミソはその前にくっついている"Yet Another"にある。あまり聞き慣れない言葉かもしれないが、これは「さらにもうひとつの」とか、「また別の」といった意味である。つまり、意訳すれば「ひと味違う仕事のツール」ということだ。なら最初から日本語のタイトルを付ければよさそうなものだが、あえて"Yet Another"としたのにもわけがある。

    ソフトウェアの世界では、昔からこの"Yet Another"という言葉がよく使われている。特にここ数年業界を賑わしている「オープンソース」周辺では、"YACC (Yet Another Compiler-Compiler)"のようにソフトウェアの名称にも使われることが多い。あの「Yahoo!」も、一説にはもともと「Yet Another Hierarchical Officious Oracle(もうひとつの気の利いた階層構造のデータベース)」の略であるとも言われていた。そして、これらの"Yet Another"に共通するのは、反主流とか、大勢に対する少数派といったニュアンスだ。「みんなが使ってるのとは違うけど、ちょっと気が利いてるよ」というのが、この"Yet Another"なのである。

    近年、パソコンの高性能、高機能化も行き着くところまで行った感がある。実際には相変わらずハードの性能は年々向上しているわけだが、ユーザ側の利用方法というか、それで仕事が何か変わったかと言うと、そんなに大きな変化はなくなりつつあるのではないだろうか。パソコンが高機能になり、LANやインターネットにも接続し、確かに仕事の能率は上がったかもしれない。しかしそれと同時に、あなたの仕事は画一化された流れ作業に堕してはいないだろうか。

    例えば企画書を作ることを考えてみて欲しい。PowerPointのおかげで、誰でもそこそこ見栄えのする、ビジュアルな企画書が作成できるようになった。しかし企画書は本来、他者の企画に対する優位性、独自性、新規性をアピールするものだ。皆が同じソフトで"マメ人間"のクリップアートを貼り付けていては、見る人の「目を惹く」という本来の目的から外れてしまうだろう。

    「企画書」→「PowerPoint」のように固定化した目的とツールの関係を切り離し、あなた自身の"Yet Another"な仕事のツール、"Yet Another"な仕事のスタイルを、今一度柔軟な発想で再構成してみてはどうか。それが、この連載の提案する内容の骨子だ。Windowsが圧倒的メジャーである以上、"Yet Another"として取り上げるものは対抗するオープンソース関連のものが多くなるだろう。しかし、私自身はWindowsもMac OSもLinuxもほぼ等しく利用するニュートラルなユーザであり、何れかのプラットフォームを礼賛するような内容にはしないつもりだ。

    さて、いかに"Yet Another"なものを取り上げるとはいえ、AnotherすぎてAnother Worldに行ってしまうのは避けたい。そこで、しばらくの間、"Yet Another"なOSの王道、「Linux」を取り上げていくことにしよう。今後Linux用のアプリケーションも取り上げていくので、そのための下準備と考えて貰ってもよい。

    Linuxはここ数年、主にサーバや組み込みOSの分野でシェアを伸ばしてきた、UNIXライクなフリーのOSである。既にWebサーバやファイルサーバ用途ではWindowsに対抗するライバルとして認知されているし、様々なPDA、情報家電といった機器でも多くの稼働実績を持っている。しかし、仕事で日常的に使ういわゆる「デスクトップ」の分野は相変わらずWindowsの独壇場であり、Linuxを使っているのは一部の好事家かMS嫌いのITエンジニアが中心だろう。LinuxがデスクトップOSとしていまいち普及しなかったのは、仕事に使えるレベルのオフィススイートがなかったことや、LinuxのGUI環境がイマイチ安定しない、使いづらいといったことが要因だった。しかし、その状況もここにきて一気に変わりつつある。

    昨年後半、Turbolinux、SuSE、Fedora CoreといったLinuxディストリビューションの新版が続々とリリースされた。これら最新のLinuxは、従来のLinuxと比べてデスクトップとしての使い勝手が大幅に改善されている。オフィススイートであるOpenOffice.org/StarSuiteも安定かつ実用的になっているし、XFree86/Gnome/KDEによるGUIも充分洗練されている。慣れたWindowsから乗り換えるのは困難かもしれないが、まずは気軽に使ってみるだけでもよいのだ。

    次回はいくつかのLinuxディストリビューションの特徴と使用感について、簡単に比較レポートするので、是非どのLinuxを試してみるかの参考にして欲しい。

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