連載コラム『美人すぎる公認会計士がこっそり教える、やわらかマネー知識』では、公認会計士の平林亮子氏が、その豊富な経験を生かした「お金」に関する知識を、分かりやすく説明します。あなたの人生を変えるような、とっておきのマネー知識が得られるかもしれません。


半年後の2014年4月より、消費税の税率が上昇することになりました。

1997年に消費税率が3%から5%になった際には、住宅などの駆け込み需要があったと言われていますが、今回はどのような状況になるのでしょうか。

「持家と賃貸、どちらが得か」--どちらが損か得かは、わかりません。

ところで、住宅と言えば、

「持家と賃貸、どちらが得か」

という問題が良く取り上げられます。

みなさんはどちらが良いと思いますか?

結論から申し上げますと、どちらが損か得かは、わかりません。

それには2つの理由があります。

ビジネスや人生と同じで、最後までわからない

1つは、ビジネスや人生と同じで、最後までわからないという理由です。

「持家」の場合、支出は、

  1. 家の購入額

  2. 購入に伴う手数料や登記費用、各種税金

  3. 管理費などの維持費用(亡くなる時まで、亡くなった後も相続した人が支払いますが…)

  4. 固定資産税(亡くなる時まで、亡くなった後も相続した人が支払いますが…)

  5. 住宅ローンを利用した場合の利息(ローンの完済まで)

  6. 住宅ローンを利用した場合の保証費用等

といったところでしょうか。

一方で「賃貸」の場合、支出は、

  1. 家賃、共益費(亡くなる時まで)

  2. 更新費用(数年に一度?)

  3. 原状回復費用

といったところでしょう。

ある家について購入(持家)と賃貸を選べるとしても、いくつまで生きるのか、住宅ローンを利用するのかなどの条件が変われば、結論は異なってくるわけです。

しかも、持家は売却することが可能です。

だとすれば、持家の場合の支出(1)は、

  • 購入額-売却額

で考える必要があるかもしれません。

もしも、購入した価格で売却できるとしたら、賃貸より圧倒的に得になる可能性も生じますよね。

逆に、何かしらの理由で家が倒壊したりするなど、住むことも売ることもできなくなる可能性も秘めています。

なお、おそらく、そんなに都合の良い金額で売却できるのだろうかと疑問に思う方もいますよね。

その通りです。それは、売ってみるまでわかりません。

だから、最後までわからないのです。

ちなみに、マンションについて、新築時の分譲価格と比較して、中古の流通価格がいくらであるかを、マンションPBR(マンション資産倍率)とし、調査した結果が存在しています。

詳しい計算方法の説明は省きますが、首都圏で一番値下がりしないのは外苑前のマンションで、新築時の価格の1.4倍以上の中古価格となっている、というデータがあります。

「買った価格で売れたら」という仮定も、現実味のない妄想ではないことを付け加えておきます。

そもそも、比較することに現実味がない

そうそう、どちらが損か得かわからないもう1つの理由は、そもそも、比較することに現実味がないから。

不動産には、同じものは2つとありません。

同じ不動産について、持家か賃貸かを選べることも皆無ではありませんが、通常は、両者はそもそも物件が異なります。

つまり、根本的に、比較のできない問題なのです。

なお会計上は、家賃はあくまでも経費の支払いであるのに対し、購入(持家)は財産の取得に当たるため、まったく性質の異なる取引。

お金と真摯に向き合うことは大切ですけれど、計算してどちらが損か得かばかり考えていては、人生の価値が「損得」に支配されてしまいます。

大切なのは、

  • どんな家に住みたいのか

  • どんな人生を生きたいのか

そんな自分の気持ちと向き合うことではないでしょうか。

人生には確かに、「お金」という制約条件が存在しています。それでも、損得ではなく、自分が望むものと向き合える自分でありたいものです。

今のところ、私は持家派。一生の買い物などと気負わず、状況に合わせてマンションを買い換えて暮らしております。

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。