【コラム】

行った気になる世界遺産

34 ベトナム最後の王朝の街は戦争の足跡を残す街 - 目にもおいしい料理も健在

 

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フエは、南北に細長いベトナムのちょうど真ん中あたりにある都市です。1802年から1945年にかけて、ベトナム最後の王朝「グエン朝」の都が置かれていました。ベトナムといえばおびただしい数のバイクの群れや騒音が思い起こされますが、フエは古都らしい、しっとりとした趣をたたえる静かな街です。王宮や皇帝廟、寺院などが世界遺産に登録されています。

王宮内の太和殿では歴代皇帝の即位式が行なわれました

ベトナムは千年以上に渡って中国の支配下にあったため、その政治形態や文化面などにおいて強い影響を受けています。旧市街の中心にある王宮は、北京の故宮を模して4分の3のサイズで建造されました。

グーグルアースで見た王宮です。正方形の敷地はほとんど草地であることが分かります

王宮は一辺が約2.2kmの、正方形の城壁に囲まれています。王宮門(午門)をくぐると目の前には正殿である太和殿がそびえます。故宮の迫力に比べると小ぶりではありますが、確かに面影が感じられます。

中国風の装飾や色使いがあしらわれた午門

さらに先に進んでいくと……、いくつか新築の建物がある以外は草原が広がっていました。実は1960年代のベトナム戦争によって主要な建物は破壊されていたのです。これが戦争というものか、と言葉を失ってしまいました。

宮廷料理がルーツと言われるフエ料理は、視覚的にも美しいです

ベトナムは19世紀半ば以降フランスの支配下にあったことから、フエでも食文化や建築物にその名残が見られます。中国やフランスの影響を受けた華やかな王朝文化を経た一方で、戦争の足跡を残す街。ハノイともホーチミンとも異なる空気感を持つこの古都を、またいつか訪問したいと思っています。

世界遺産データ

フエの歴史的建造物群(文化遺産)。ベトナム。1993年登録。

地図

筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて

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インデックス

連載目次
第43回 激動の歴史をもつイスタンブール、なぜ「アヤ・ソフィア」は残されたのか
第42回 コルビュジエは登録なのにライトはだめ? 一筋縄ではいかない建築物の登録
第41回 1万人都市が大噴火で一夜で消滅、その後発掘された遺跡が今では世界遺産に
第40回 オリンピックの聖火が採火される場所って? その地は今では世界遺産に
第39回 連休なのにノープラン……今からでも間に合う世界遺産めぐりの旅
第38回 ケリー米国務長官の提案でG7も訪問した「原爆ドーム」はもともと何の建物?
第37回 世界遺産に登録されている大学って? その壁画の意味が深い
第36回 桜にちなんだ"女神様"がいる世界遺産の神社をご存知?
第35回 「長崎の教会群」取り下げで揺れる中、都内のあの美術館が世界遺産に!?
第34回 ベトナム最後の王朝の街は戦争の足跡を残す街 - 目にもおいしい料理も健在
第33回 「中欧3都市周遊」で寄り道! "世界一美しい町"は石畳の坂道にご注意を
第32回 なぜ人々は1,700年もの間、心の拠り所として「歯」に祈りを捧げているのか
第31回 2016年の干支「申」に関係する世界遺産を考えてみた
第30回 世界遺産のお寺で除夜の鐘を! 藤原清衡が「中尊寺」の鐘に託した想いとは?
第29回 「20世紀最大の考古学的発見」の当事者は農民のおじさんだった
第28回 ガウディと並ぶ建築の巨匠モンタネルが残した世界遺産の病院が美しすぎる
第27回 「明治日本の産業革命遺産」は静岡にも! この遺産、日本初のパンと関係が!?
第26回 『顔のないヒトラーたち』から思う、「負の遺産」の意義
第25回 世界遺産の街・ウィーンで「美術史美術館」巡り - "世界一美しいカフェ"も
第24回 化石出土地は文化遺産か自然遺産か? 「ジャワ原人」のルーツがここに!
第23回 かつて世界の銀産出量の半分を担った銀山のあるラテンアメリカの街は今……
第22回 入国はメコン川を越えて - 世界遺産の古都は名物の托鉢で夜が明ける
第21回 ケルン駅舎そばで誰もが見上げるゴシック建築! 確かにそれは天にも届きそう
第20回 先住民が名づけたその世界遺産は、その時々で"顔"が変わる
第19回 公開できない日本の世界遺産! 中には日本の近代化を支えた赤レンガ建造物も
第18回 ジブリファンの聖地! アドリア海の宝石「ドゥブロヴニク」に残る傷跡
第17回 首都全体が巨大な飛行機に!? 南米に建築界の巨匠が壮大な"近未来"を具現化
第16回 モーツァルトを生んだ美しい歴史地区は今日も音楽に包まれていた
第15回 モロッコで最もパワフルで猥雑なマラケシュ、世界遺産の広場は夜が楽しい
第14回 世界初の世界遺産、「シンドラーのリスト」の古街には欧州一広大な広場も
第13回 「明治日本の産業革命遺産」になぜ住宅? 中には坂本龍馬の隠し部屋も??
第12回 文明の息吹を残す天空都市! そこは確かに一生に一度は行くべき世界遺産
第11回 龍がはいた真珠が何千もの奇岩に!? エメラルドグリーンの海に広がる奇景
第10回 300年構想の超絶美な贖罪聖堂、実はガウディが設計したわけではない!?
第9回 細く長い階段の先で"屋根のない美術館"を眺望! 今もルネサンスの風が吹く街
第8回 まさに生きた氷河! 光で変化する巨大な氷河は崩落時の音もスゴい
第7回 中世の空気が今も漂う、そこは絵本から抜け出したような街だった
第6回 目の前には水墨画で見た風景が! 中国の原風景のそばで名物のお茶を一杯
第5回 欧州とアジアが混在した街で歴史の変遷を知る、そして僧は祈るために回る
第4回 ジャングルの奥には「悪魔ののど笛」が待っている! 壮大過ぎる自然がそこに
第3回 街がそのまま「建築の博物館」に! 数百の歴史的建造物による絶妙な美しさ
第2回 独創過ぎるデザインで「構造設計上実現不可能」とも言われた世界遺産
第1回 その壮大さにきっと誰もが興奮!「アンコールワット」は一日の中で変化する

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