【コラム】

行った気になる世界遺産

32 なぜ人々は1,700年もの間、心の拠り所として「歯」に祈りを捧げているのか

本田陽子  [2016/01/25]

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キャンディ、といってもお菓子のことではなくてスリランカの古都の名称です。スリランカの歴史を追いかけていくと、民族の争いによって遷都を繰り返しているのですが、キャンディはシンハラ人(現在は人口の7割を占める)が築いた王朝の最後の都があったところです。この地は仏教の聖地であり、スリランカ人の心の拠り所とされています。その理由は仏歯寺があるからです。その名の通り、「ブッダ(お釈迦様)の歯」が納められています。

18:30のプージャに参加した際の仏歯寺です。外観からして神々しいですね

この仏歯は、4世紀にインドの王女がシンハラ王家に嫁いだ時に、髪の毛に忍ばせて持ち込んだことでスリランカに伝わったとされます。その後、仏歯は王権の象徴として、代々の王朝がまさに命がけで守って来ました。

たくさんの人たちがお供え物やお賽銭を手にして並びます。プージャの行列は1時間以上途切れることがありません

なぜそこまで「歯」が重要なの? と疑問に思ってしまいますが、仏教で大切なのはブッダが語ったことば(説教)ですから、そのことばに直接触れた「歯」は非常に尊いとされてきたのです。

仏歯の入った容器を納めた部屋の扉がついに開きました! ……まぶしすぎて見えない

仏歯寺に行っても仏歯を直接見ることはできませんが、1日3回の「プージャ」と呼ばれる礼拝の時だけ(5:30、9:30、18:30)、仏歯を納めた容器を見ることができます。その時間に訪れた際、地元の人たちが長い行列をなして一心不乱にお祈りを捧げる様子を目の当たりにして、胸が熱くなりました。

おお、この容器の中に仏歯が! 神々しくて言葉を失いました

4世紀以降、1,700年もの間、毎日毎日同じ光景が繰り返されてきたのだと思います。そしてこれからもずっと変わらずに続いていくのでしょう。世界遺産が守る対象は不動産ですが、人々の思いも乗せて伝え続けられていくことの意義をあらためて感じました。

寺院のすぐとなりは人口湖で散策スポットとなっています

街にはイギリス統治時代のコロニアル建築も多く残ります

世界遺産データ

聖地キャンディ(文化遺産)。スリランカ。1988年登録。

地図

筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて

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インデックス

連載目次
第41回 1万人都市が大噴火で一夜で消滅、その後発掘された遺跡が今では世界遺産に
第40回 オリンピックの聖火が採火される場所って? その地は今では世界遺産に
第39回 連休なのにノープラン……今からでも間に合う世界遺産めぐりの旅
第38回 ケリー米国務長官の提案でG7も訪問した「原爆ドーム」はもともと何の建物?
第37回 世界遺産に登録されている大学って? その壁画の意味が深い
第36回 桜にちなんだ"女神様"がいる世界遺産の神社をご存知?
第35回 「長崎の教会群」取り下げで揺れる中、都内のあの美術館が世界遺産に!?
第34回 ベトナム最後の王朝の街は戦争の足跡を残す街 - 目にもおいしい料理も健在
第33回 「中欧3都市周遊」で寄り道! "世界一美しい町"は石畳の坂道にご注意を
第32回 なぜ人々は1,700年もの間、心の拠り所として「歯」に祈りを捧げているのか
第31回 2016年の干支「申」に関係する世界遺産を考えてみた
第30回 世界遺産のお寺で除夜の鐘を! 藤原清衡が「中尊寺」の鐘に託した想いとは?
第29回 「20世紀最大の考古学的発見」の当事者は農民のおじさんだった
第28回 ガウディと並ぶ建築の巨匠モンタネルが残した世界遺産の病院が美しすぎる
第27回 「明治日本の産業革命遺産」は静岡にも! この遺産、日本初のパンと関係が!?
第26回 『顔のないヒトラーたち』から思う、「負の遺産」の意義
第25回 世界遺産の街・ウィーンで「美術史美術館」巡り - "世界一美しいカフェ"も
第24回 化石出土地は文化遺産か自然遺産か? 「ジャワ原人」のルーツがここに!
第23回 かつて世界の銀産出量の半分を担った銀山のあるラテンアメリカの街は今……
第22回 入国はメコン川を越えて - 世界遺産の古都は名物の托鉢で夜が明ける
第21回 ケルン駅舎そばで誰もが見上げるゴシック建築! 確かにそれは天にも届きそう
第20回 先住民が名づけたその世界遺産は、その時々で"顔"が変わる
第19回 公開できない日本の世界遺産! 中には日本の近代化を支えた赤レンガ建造物も
第18回 ジブリファンの聖地! アドリア海の宝石「ドゥブロヴニク」に残る傷跡
第17回 首都全体が巨大な飛行機に!? 南米に建築界の巨匠が壮大な"近未来"を具現化
第16回 モーツァルトを生んだ美しい歴史地区は今日も音楽に包まれていた
第15回 モロッコで最もパワフルで猥雑なマラケシュ、世界遺産の広場は夜が楽しい
第14回 世界初の世界遺産、「シンドラーのリスト」の古街には欧州一広大な広場も
第13回 「明治日本の産業革命遺産」になぜ住宅? 中には坂本龍馬の隠し部屋も??
第12回 文明の息吹を残す天空都市! そこは確かに一生に一度は行くべき世界遺産
第11回 龍がはいた真珠が何千もの奇岩に!? エメラルドグリーンの海に広がる奇景
第10回 300年構想の超絶美な贖罪聖堂、実はガウディが設計したわけではない!?
第9回 細く長い階段の先で"屋根のない美術館"を眺望! 今もルネサンスの風が吹く街
第8回 まさに生きた氷河! 光で変化する巨大な氷河は崩落時の音もスゴい
第7回 中世の空気が今も漂う、そこは絵本から抜け出したような街だった
第6回 目の前には水墨画で見た風景が! 中国の原風景のそばで名物のお茶を一杯
第5回 欧州とアジアが混在した街で歴史の変遷を知る、そして僧は祈るために回る
第4回 ジャングルの奥には「悪魔ののど笛」が待っている! 壮大過ぎる自然がそこに
第3回 街がそのまま「建築の博物館」に! 数百の歴史的建造物による絶妙な美しさ
第2回 独創過ぎるデザインで「構造設計上実現不可能」とも言われた世界遺産
第1回 その壮大さにきっと誰もが興奮!「アンコールワット」は一日の中で変化する

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