【コラム】

世界の街角から

7 ニューヨークで考えたこと(4)

    河内孝  [2007/03/24]

    ニューヨークから

    インターネットと民主主義などと大上段に振りかざした談義を前回、前々回と2度も続けてしまった。折角ニューヨークにいるのだから"街角"らしい話題をお送りしなくては。

    私が借りているアパートは、マンハッタン島を東西に分けるセントラルパークのイーストサイド。92丁目とレキシントンアベニューが交わる街角の6階建て。100年は楽に経っているという古いレンガつくりの建物で窓枠は(ボロボロの)木製。エレベーターもないという代物だが寝室、浴室、キッチン、リビングルーム、それに大きな窓を持った書斎があって一人暮らしにはもったいない広さだ。(途中でルームメイトが戻ってきたが彼のことは改めて書こう)。

    ニューヨークのありがたさで水道とスチームはただだから、隙間風の入るアパートでも室内ではTシャツ一枚で過ごせる。雪が凍り付いてえさが少ないのか、窓枠にパンくずを置いておくと様々な野鳥が来て目を楽しましてくれる。土地の人に聞くと86丁目から92丁目にかけてはドイツ系アメリカ人が多く住み「ジャーマンタウン」と呼ばれたこともあったという。30年代はドイツ料理に不可欠なソーセージ屋さんやザワークラウトを扱うデリカテッセンが並んでいたというが、今はその面影はない。

    鈴木ひとみさんというニューヨーカーの書いた「紐育ニューヨーク!」(集英社)によると、アッパーイーストサイドとは「東西はイースト川から、セントラルパークと並行する5番街、南北は59丁目から96丁目まで」を指す。日本語で言えば山の手に当たるアップタウンで、最近とみに治安が良くなっているマンハッタンの中でも落ち着いて安全な地域といわれる。

    通りを一本わたったパークアベニュー沿いは制服姿のドアボーイがさっとドアを開けてくれる高級アパートが並ぶ。が、我々の一角はアパートの一階に花屋、床屋、コピーセンター、ネイルサロンが入るぐっとくだけた横丁風。入居者も研究者、ヤッピー夫婦といったミドルクラスの人が多い。

    素敵なのは、ここから40分かけコロンビア大学まで歩く"通学路"だ。90丁目のセントラルパーク・ゲートまで5分。ジャクリーン・オナシスがよくジョッギングをしていたことから名づけられた「ジャクリーン・オナシス貯水池」の脇をセントラルパークの北西まで抜ける。不忍池の10倍くらいの広さだろうか、氷結した湖面で羽を休める水鳥の群れの向こうにエンパイヤーステイトビルディングを頂点とするスカイラインが広がる。「俺はニューヨークにいるぞ」と実感する瞬間だ。風が頬を刺す。分厚いスキー帽は必需品だ。私が来てからは零下10度近い日々が続くが、連日晴天で気持ちが良い。陽気なニューヨーカーは、「地球の温暖化はどうした」とジョークを飛ばす。

    大きな水門で貯水池のジョギング・ロードを離れてセントラルパークのノースエンドまで大勢のジョッガーと一緒に専用道路を歩く。東西800m、南北4kmあまり、マンハッタンの肺ともいえるセントラルパークには2万6千本の樹木があるというが、そのほとんどが落葉樹。春になると咲き乱れる花と新緑がえもなく美しいというが、「そのかわり全く見通しが利かなくなる。お前は良いとき来たよ」と公園の係員に大げさにジェスチャーでからかわれた。

    ノースエンドでセントラルパークを出て、ブロードウエイに向かって坂を上ると改修中のカシードラルが見えてくる。モーニングサイド公園だ。アムステルダムアベニューを抜けるとブロードウエイ。タイムススクエアーのブロードウエイを知る日本人は多いだろうが、ここまで上がってくるのはコロンビアに通う学生か、アポロにジャズを聴きに来るマニアぐらいだろう。この道、かってアメリカと戦ったイギリス軍が進軍のため拡張したので、「ブロード」と名づけられたらしい。

    ブロードウエイを右折して数ブロック歩くとコロンビア大学の大きなフラッグがはためいているのが目に入ってくる。よく映画にも出てくる法学部図書館の前庭に座る女神像を横目にケントホール一階の「ファーイースト・ライブラリー」に寄ってみよう。CPもあるし日本の新聞、雑誌が揃っていて便利だ。

    私は別に単位をとる必要はないからロースクール、ビジネススクール、外交と公共政策大学院の授業の中から興味のあるテーマを選んで聴講する。またこれら大学院では毎日のように内外の専門家を招いてセミナーが開かれているから、それに参加してディスカションンに加わる。一度「東南アジア研究所」の、「バングラデシュにおける幼児の奴隷労働」というセミナーに出たら唯一の男子、唯一のアジア人ということで矢継ぎ早にコメントを求められてあせりまくったことがあった。

    次回から大変参考になったと思ういくつかのセミナーの様子をお伝えしよう。

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

        イチオシ記事

        新着記事

        特別企画

        マイナビニュースマガジン