最近のスマートフォンはほぼ同じデザインの製品ばかりが増えている。サムスンが画面の角を落としたエッジディスプレイを搭載する縦長端末「Galaxy S8」シリーズを出したり、ブラックベリーから久しぶりにフルキーボードを搭載した「KEYone」が登場するなど、他とはちょっと違う製品がたまには出てくるものの、目新しさはあまり感じられないかもしれない。

今や世界のスマートフォンシェアのトップ5に中国メーカー2社(ファーウェイ、オッポ)が入る時代。お隣中国でもスマートフォンのデザインは各社似たものになりつつある。ところがまだまだ、面白い機能を搭載し形状も特殊なスマートフォンが生まれているのだ。2017年6月末に上海で開催されたMWC上海2017の会場で見かけた、他にはない面白そうなスマートフォン2機種を紹介しよう。

世界初の360度カメラを内蔵したスマホ

360度撮影が可能なデジカメはリコーの「Theta」やサムスンの「Gear 360」など様々な製品が販売されている。だがスマートフォンと別にカメラを持ち歩くのも面倒なもの。撮影した画像をすぐに確認できないのも不便なところだ。そこでProtrulyが考えたスマートフォンが360度カメラを内蔵した端末「VR Phone」だ。

本体はスマートフォンとしてはかなり縦長の181.4×76×8.9mm、重量も222gとやや重い。チップセットはMediaTekのHelio X20デカコア2.5GHz、RAM3GB+ROM32GBという構成。カメラはリア1,300万画素、フロント800万画素を搭載。ディスプレイサイズは5.5インチ、解像度はフルHDである。

360度カメラを本体に搭載した「VR Phone」

背面にも360度カメラがある。メインカメラはその隣に配置

そして本体の上部にはメインのカメラとは別に、360度カメラが内蔵されているのだ。解像度は2,600万画素、F2.0で、前後それぞれのカメラを使って4Kの動画撮影も可能。撮影後の360度の静止画・動画はそのままスマートフォン本体で再生して確認できる。もちろんライブビューにも対応しているので、画像を見ながらの撮影も可能だ。

側面から見ると360度カメラ部分は出っ張っている。何らかの傷防止対策が欲しいところ

プレビューしながら360度の静止画または動画を撮影できる

このVR Phoneはすでに中国では販売されており、家電量販店などに実機も展示されている。だが上位モデルとなる「VR Phone 至尊版」は、なかなか実機を見ることはできない幻の製品と言われていた。それは「至尊」の名前が示すように、高級な本体仕上げとされているからなのである。なんとダイヤモンドを4個埋め込み、純度99.9%の金を3.08カラット、そしてイタリア製の仔牛の革を360度カメラ周りと本体下部に貼り付けているというのだ。メモリーもRAM4GB、ROM64GBと大容量化されている。

ダイヤと金、そして本革を使った至尊版

この上位モデルは、標準モデルが3,980元(約6万6,800円)なのに対し、8,00元(約14万6,700円)と価格は倍以上もする。しかし本体に触ってみると革の質感は非常によく、ダイヤモンドに時おり光が当たって反射する様は高級品そのもの。ダイヤは人造品かもしれないが、安物のガラスとは全く違う輝きをしている。

背面側が革張りでは無いのが残念

しかしVRの撮影は屋外でハードに行うもの。そんな端末を高級化する必要は無いようにも思える。最新機能を搭載したハイエンドスマートフォンということで、あえて上位モデルを投入したのかもしれない。いずれにせよ、どちらのモデルも持っているだけで自慢できそうな「変態」的な端末であることは間違いないだろう。

使いやすさを考えた、プロジェクター内蔵スマホ

Green Orangeの「Voga V」は本体の上部にプロジェクターを内蔵したスマートフォン。実はこれまでにもプロジェクター内蔵端末はいくつかのメーカーが製品化している。大手メーカーではサムスンも製品を投入したことがあった。しかしそのいずれの製品もその後の後継モデルは出てきていない。

一見すると普通のスマートフォンに見える「Voga V」

本体上部にプロジェクターを内蔵している

Voga Vはこれまでのプロジェクター内蔵スマートフォンの使いにくい点を大きく改善した製品だ。まず本体のサイズは153.06×75.64×10.28mmで、1cmをわずかに超えるものの、プロジェクター内蔵型端末としては結構な薄さを実現している。手に持った感じでは、iPhoneにケースを着けたときとあまり変わらない印象を受けた。これなら毎日持ち運ぶのも苦にはならないだろう。

プロジェクターを内蔵しながら厚さは1センチに抑えている

背面はオーソドックスなデザイン

またプロジェクターは最大200型サイズまでの投影が可能。実用的なサイズでも70型と、大型TVに迫るサイズの大画面で投影できる。投影の向きが若干ずれてもきちんと長方形サイズにアジャストも行ってくれる。そしてプロジェクターは、5,000:1という高いコントラスト比を誇る。また本体のディスプレイの表示方向に応じて、投影の向きも自動的に変わる。普段の縦方向のスマートフォンの画面表示の時は投影画面も縦に、映画や動画を再生して画面の向きが横手になると、投影される動画も横向きに切り替わるのだ。

スマートフォンの通常画面を投影

映画を再生すれば自動的に横向きの投影に切り替わる

しかも4,000mAhのバッテリーを内蔵しているので、連続4時間のプロジェクター投影が可能のとのこと。本体の厚みが若干ある分、バッテリーも大容量の物を搭載できたというわけだ。ディスプレイは5.5インチのフルHD、カメラはリア1,300万画素にフロント800万画素、RAM4GBにROM64GB。ミッドレンジモデルとして十分実用性のあるスペックだ。普通にスマートフォンとして使ってもストレスは感じられないだろう。

どちらの製品も360度カメラやプロジェクターを使いたい人には魅力的な製品に見えるのではないだろうか。もちろん内蔵することで本体サイズは大型化してしまうが、実際に製品化してしまうアイディアには素直に敬意を示したい。どれくらいの人気商品になるかはわからないが、これからも中国のメーカーには面白い機能やアイディアを搭載したスマートフォンの開発を続けてほしいものだ。