Tシャツやカバンや財布も作る、スマホメーカーのファン獲得作戦

最近のスマートフォンメーカーは、端末を使うのに欠かせないケースやUSBケーブルなどを販売するところが多い。サードパーティー製ケースが山のように売られているiPhoneであっても、Appleから様々なケースなどが販売されている。

だがスマートフォンの販売だけでは物足りないのか、スマートフォンとは直接関係の無い、洋服やカバンを売り出すメーカーがある。中国の新興スマートフォンメーカーのシャオミ(Xiaomi)だ。メーカーのロゴ入りグッズと言えばAppleがTシャツなどを販売している。しかしシャオミの製品はAppleのそれとはだいぶイメージが異なる。

中国のシャオミのWEBページを開くと、商品分類に「カバン、洋服、靴」というカテゴリが現れる。そのページを開いてみると、そこはまるで洋服のオンライン販売サイトのようにTシャツなどがずらりと表示されている。同社のキャラクターマスコット「米兎」の柄が入ったものが多いが、自社ロゴが控えめ、あるいはロゴが目立たない製品も販売されている。

シャオミは高スペック・低価格なスマートフォンが人気だが、ユーザーの声をフィードバックしほぼ毎週端末のアップデートを繰り返すなど、ユーザー第一主義で成長してきた。シャオミの躍進は実はシャオミを支えるファンたちの存在も大きかったのだ。そんなファンたちのために、シャオミは昔からTシャツなどを販売してきた。

ロゴやキャラクターがあまり目立たないのも、Tシャツを広告塔として使うのではなく、ファンが自分のために着るものという考えなのかもしれない。いずれにせよシャオミTシャツは古くからある存在なのだが、最近になって種類はかなり増えている。

またシャツと並んで製品数を増やしているのがカバン類だ。Tシャツはどちらかと言えばファン向け製品だが、カバン類はしっかりと使いやすく、壊れにくく、そしてリーズナブルな価格を実現した、かなり本気で仕上げた製品が揃っている。リュックタイプはPCも入り、USBメモリ用の小さいポケットもあるなど、使い勝手もなかなか高い。

これらのシャオミの服飾製品の中でも異色なものが、お財布。そう、お金を入れる財布である。価格は129元(約2,000円)で、本革製。中国で適当な素材の財布ならそれこそ数百円でも買えるだろう。しかしシャオミが出す財布は素材表示にウソ偽りは無く、品質や仕上げもしっかりしている。そして角に小さくシャオミの「Mi」ロゴが入っている。シャオミファンが満足するだけではなく、きちんとした財布が欲しい一般消費者にも訴求できる製品だ。

しかしせっかくなら、スマートフォンと連携できるスマートなウェアも欲しいところ。シャオミはそのあたり抜かりなく、洋服ではなく靴にスマートモジュールを埋め込んだスマートシューズを販売している。運動靴の中敷きの下にモーションセンサーを内蔵したモジュールが組み込まれており、運動量や歩数などを計測しスマートフォンのアプリに転送してくれる。

靴のカラーは3色あるので、ファッションに合わせて選ぶことも出来る。サイズは女性用が23-25.5センチ、男性用が24.5-29.5センチと幅広く対応している。モジュール部分は取り外しが可能で、靴だけを洗うことも可能だ。そしてモジュールはIP67の防水防塵対応、ボタン電池で動く。電池の持ち時間は明記されていないが、数か月は利用できるだろう。電池残量が減ればスマートフォンアプリで通知してくれるので、電池切れの心配も無い。

シャオミは自社製品を販売する専門店「小米之家」を中国やアジアに展開している。それらの店には実際にこれらの服飾製品も展示されており、スマートフォンを買うついでに購入することも可能だ。小米之家にはUSBケーブルやモバイルバッテリーなどの小物を求めにくる客も多く、店内で商品を選びがてら、カバンに興味を持つ客もいるに違いない。ケーブルなどは他社やサードパーティーからも同等品がいくらでも販売されているが、使い勝手のいいカバン類は、わざわざカバン店やデパートに行くことが無ければ買うことも無いだろう。

夏に合わせてTシャツの新製品を販売したり、冬になれば厚手のジャケットを売る、なんてことをすれば、シャオミの店に洋服を買いに来る、なんて客も増えるかもしれない。そうなればスマートフォンにあまり興味の無い女性層などを取り込むこともできるだろう。今後はユニクロなどの、ファストファッションのブランドと提携する、なんて面白い動きもあるかもしれない。シャオミのスマートフォン以外の製品も今後の動きには注目したい。