右も左も似たようなスタイルのスマートフォンが増える中、独自のデザインで差別化を図ろうとしているメーカーがある。それがフランスと中国に拠点を置くSugar社だ。Sugarのターゲットは女性ユーザーのみ。スワロフスキーのクリスタルで本体側面を着飾った女性向けプレミアムスマートフォンで勝負を賭けている。

年間1モデル、女性のみをターゲットにしたSugar

最近はちょっと聞きなれない名前のスマートフォンメーカーがニュース上で話題になることが増えている。中国のシャオミはその代表で、気が付けばスマートフォン販売シェアは世界のトップ5位以内に常時入る一大メーカーに成長している。シャオミ以外にも各国で新しいスマートフォンメーカーが生まれており、それぞれの販売国で少しずつシェアを伸ばしている。

Sugarもそんな新興系のメーカーだ。同社初のスマートフォンは2013年7月に発表され、その後毎年1機種のみ新製品を市場に投入している。2015年5月には最新モデル「Sguar 2」が発表された。Sugar 2は5インチディスプレイに1300万画素カメラを備えた今時の標準的なスペックのスマートフォンだ。しかし価格は約8万円と機能に見合わずとても高い。

フランスと中国を中心に展開するSugar

Sugar2本体。シンプルなデザインとSugarのロゴが上品だ

それもそのはずで、Sugar2は本体の側面にスワロフスキーの人工ダイヤモンド、「ジルコニア」を136個配置しているのだ。すべてのジルコニアは同一方向を向くように装飾され、遠目から見ると光の輝きが一定方向を向くようにも計算されている。また背面は琥珀のような模様の仕上げで、樹脂製ならがも高級感を十二分に味わうことができる。製造は中国だが、安物という印象は全く感じられない。

その一方で機能は一般的なレベルに留まっている。しかしこれはSugarの狙いでもある。スマートフォンとは毎日持ち歩くアクセサリであり、写真を撮ったりメールを送受したり、ソーシャルサービスにアクセスできれば十分な存在と考えているのだ。凝った機能を乗せてそれを使ってもらうようなユーザーはSugarの製品のターゲットではない。クリスタル系の輝きを持った製品を愛する女性のためのスマートフォン、それをSugarは目指しているのである。

側面にはスワロフスキーの人工ダイヤモンドをちりばめる

背面の仕上げも独特。樹脂製とは思えない出来栄えだ

製品は年1機種とスローペースで出しているが、それぞれの製品は2-3年は使ってもらえるように飽きの無いデザインとしている。さらには毎年同じようなモデルを出すのではなく、1年ごとにテイストを変えた製品を発売しているのだ。2014年に発表された「Sugar Macaron」はその名の通り、マカロンをイメージしたパステルカラーのボディーが特徴。もちろん側面のスワロフスキー仕上げは健在で119個、4.76カラットの人工クリスタルに飾られている。

2014年モデルのマカロン

マカロンをイメージしたパステルカラーのボディー

側面はやはりスワロフスキークリスタルで埋められている

背面も単純な一色仕上げではない

なお歴代の製品はいずれもフランス・パリで発表会が行われた。同社は香港など中国語圏やヨーロッパでも製品を販売しているが、実際のところ現在は中国市場を主戦場としている。このSugar、上海や北京、広州など中国の大都市へ行くと地下鉄の中などでたまに使っている女性を見かけることがある。中小なメーカーではあるものの、この手のデザインを好む女性には確実に受けているようだ。

Sugarは2015年7月に上海で行われた通信関連の国際イベント、Mobile World Congress Shanghai2015に初めて出展をおこなった。同社ブースを訪れてみると来訪客は女性ばかり。この展示会までSugarを知らなかったという来場者が実機を気に入り、その場で購入を決める姿も見られるほどだった。本気で作られたSugarの製品は女性たちの間できちんとした評価を受けたようだ。

ターゲット層がニッチであり、製品数が少ないことから大手メーカーのような大々的な広告展開はできていないものの、Sugarの製品は日本など先進国でも十分通用するクオリティーを持っている。アパレル関係や化粧品などの企業と提携して先進国へ展開すれば、大化けして人気製品となる可能性も秘めていそうだ。

実は今年に入り、中国大陸のスマートフォンの販売数はその成長に勢いが見えなくなってきている。安売りだけで多品種展開している中国メーカーは販売数が急減、各社は海外展開を本格化している。だが値段競争だけでは中国メーカー同士でのつぶし合いになるだけではなく、東南アジア各国にある地場メーカーとの戦いも厳しく、生き残り競争は熾烈を極める。

これに対しSugarは生産数やシェアを狙うのではなく、プレミアムな本物志向の製品で着々と購入者を増やしている。これからの時代、新興メーカーが生き残っていくためにはSugarのような確実にユーザーを掴める製品を作っていくことが求められるだろう。そしてSugarも国際展開をどこまで広げていくのか、大いに注目したい。もしかしたら数年後、日本でもSugarのスマートフォンが販売されているかもしれないのだ。