Appleから期待の腕時計型端末「Apple Watch」の正式な発表が行われた。腕にはめてスマートフォンと機能を連携できるこの手の製品は「スマートウォッチ」とも呼ばれる。スマートウォッチはすでに多数の製品が販売されているものの、まだまだ一般消費者の間に普及が広がっている状況ではない。だがこのApple Watchや、今までにはなかった業種からの製品参入で今年は大きなブームが巻き起こるかもしれない。

スマートウォッチはファッション製品

ソニーやサムスン電子など多数のメーカーから製品が販売されているスマートウォッチ。健康管理機器としても使える製品も様々なメーカーから製品が発売されている。だがそれらの販売先は家電量販店やAmazonなどの通販など、スマートフォンのアクセサリと販路はあまり変わらない。

だがスマートウォッチは常に身体につけておくものだ。そうであればサイズや形状、色合いなど自分のファッションに合わせて選びたいと考える消費者も多いはずだ。スーツの袖からカラフルな腕輪が見えてしまっては仕事に差し支えるだろう。またせっかく流行のファッションに身を纏ったのに、腕に安めの腕時計にしか見えない製品をはめていたら興ざめしてしまう。

もちろんスマートウォッチは次々とファッショナブルでスタイリッシュな製品が登場している。Apple Watchの発表前にはHuaweiやLGから金属ボディー製の高級腕時計のような製品も発表されている。しかし製品の質感を上げただけでは従来からの製品同様、販売数を爆発的に増やしていくのは難しいだろう。

現時点で腕時計型端末としても最高級の品質と言えるHuaweiのHuawei Watch。だが普及させるためには課題も多い

スマートウォッチを腕時計として売るApple

なかなか普及しないスマートウォッチ、その状況を大きく変えようとしているのがApple Watchだ。2015年3月9日に行われた製品発表会では、Apple Watchが従来のスマートウォッチとは大きく異なる販売戦略で市場に投入されることが発表された。

まずApple Watchは本体のサイズが38ミリと42ミリの2種類のモデルが用意される。これは大手メーカーの腕時計が男性用、女性用として同じデザインのものを2サイズで作り分けているのと同じ手法だ。しかも本体素材とベルトの組み合わせによりカジュアルから高級なものまで30種類以上のバリエーションが用意される。

また販売先も日本では伊勢丹百貨店など従来のiPhoneの販売先とは異なる店舗に販路を広げている。Apple WatchのライバルはSonyやSamsungの既存の製品ではなく、大手メーカーの腕時計そのものなのである。

Apple Watchのライバルは腕時計そのものである

ブランド時計の本格参入が始まる

スマートフォンメーカーのスマートウォッチの動向に対して、既存の腕時計メーカーからも少しずつ対抗する動きが出始めた。3月19日にはスイス・バーゼルにて開催されている時計と宝飾関連の国際イベント「Baselworld 2015」でTag HeuerがGoogle、Intelと共同でAndroid Wearを採用した腕時計型のスマートウォッチを開発すると発表。高級かつ高性能で耐久性にも優れた”タグ・ホイヤー"ブランドのスマートウォッチが登場すれば、消費者はスマートフォンとの連携機能を抜きにしても、腕時計として購入するようになるだろう。

またファッションブランドのGuessは2015年1月にスマートウォッチメーカーのMartinとコラボレーションした自社ブランドの腕時計型端末「Guess Connect」を発表。こちらも外見はGuessのデザインセンスを汲んだファッショナブルなものとなっており、女性層などへの販売を狙っている。Guess Connectを買った女性は普段は腕時計として使いながらも、スマートフォンを持っていれば着信やメール通知を腕時計で受け取ることができる。

Guess Connectはファッションブランドとのコラボ製品

このようなファッションブランドのスマートウォッチは、スマートフォンと連携できるIT機器として販売されるのでは無い。おしゃれな腕時計として販売され、時間を見るという機能にプラスしてスマートフォンとの連携機能もアピールされるのである。販売先も家電量販店ではなく、ブティックやアクセサリ店など従来のスマートウォッチとは全く異なる展開となるだろう。

今はスマートフォンは誰もが持つ製品となり、スマートフォンメーカー各社も買い替え需要を促そうと新製品を定期的に投入している。だが一度買ったスマートフォンを買い替えるのは通常2-3年先となるだろう。そこでスマートフォンと連携できるアクセサリとして、スマートウォッチの開発・販売を各社強化している。

しかしIT機器としてスマートウォッチを販売するだけでは、一般消費者の目を向けさせるのは難しい。一方、ファッション感覚でアクセサリのようにつけられる製品であれば、スマートフォンとの連携を抜きにしても多くの消費者が興味を持つようになるだろう。

スマートフォンメーカーブランドのスマートウォッチは無くなっていく?

現在は大手スマートフォンメーカーが自社ブランドとしてスマートウォッチを販売しているが、2015年にはファッションブランドなどとのコラボが急激に進むかもしれない。今一つ盛り上がりに欠けるスマートウォッチ市場の拡大のためには、腕時計としても欲しくなるような製品の登場が求められているのだ。