2014年4月、韓国の通信事業者が相次いでLTEのデータ通信料金を改定し、データ定額料金が復活した。韓国では2011年7月のLTE開始時から各事業者がデータ定額料金を廃止し、この動きはその後世界各国にも広がった。だがその韓国で今、再びデータ定額料金が復活しようとしている。

LG U+が火付け、SKとKTが急追

韓国でシェア3位のLG U+は2014年4月2日、新たな料金プラン「LTE無限大80プラン」と「LTE無限大85プラン」を発表した。料金はそれぞれ8万ウォン/月、8万5000ウォン/月。どちらのプランも音声通話、メッセージに加え、データ料金も定額となる。同社のこれまでのLTE料金プランではデータ定額となるのは月額12万4000ウォンのLTE Ultimateプランのみであり、今回発表したLTE無限大プランとほぼ同じ月額7万9000ウォンのプランではデータ利用分は8GBの上限があった。またその他のプランもデータ定額は無く、料金に応じてデータ利用分は5GBなどの上限があった。

LTEデータ無制限プランを新たに開始したLG U+

LG U+が今回発表した2つのLTE無限大プランは、1日当たり2GBを超えると通信速度が3Mbpsに制限される。だがストリーミングビデオや音楽サービスなどLTE利用者が一般的に使う用途には十分耐えられる速度だ。また「LTE無限大85プラン」ではモバイルTVやプロ野球放送、そして100GBのクラウドサービスも無料で利用できる。ストリーミングTVの利用が多い人は5000ウォンの追加でこちらのプランに入ったほうがよりお得な計算になる。

LG U+がデータ定額を前面に押し出した新プランを発表したのに合わせ、ライバル2社もすぐさま追従を行っている。SK Telecomは8万5000ウォン/月の「全国民無限85」プランなどを改定し、12GBの無料データ分を使い切った後でも1日2GBまでデータ無制限で利用できるオプションを追加した。KTも同様にデータ上限に達した後でも1日2GBの無料データ利用を新たに追加している。

すぐさま「準」定額で追従したSK Telecom

韓国は通信事業者によるWi-Fiサービスも充実しており、例えば地下鉄の駅構内や車内でWi-Fiが定額利用できる。そのため移動中はWi-Fiを使えば毎月の基本料金に含まれるLTEのデータ利用分を使い切ってしまう心配はなかった。Wi-Fiへのオフロードが完備しているからこそ、LTE開始時に思い切ったデータ定額料金の廃止を打ち出せたのである。

だが今や韓国は世界有数のLTE大国となり、データ通信速度もLTE Advancedを開始により225Mbps、300MBpsという超高速サービスが始まっている。こうなるともはやWi-Fiは低速なサービスとなってしまい、LTE利用者の中にはスマートフォンのWi-Fiをあえてオフにし、常に高速なLTE回線のみを利用するケースも増えている。LTE定額復活は消費者にとって大きなメリットがあるだろう。

3社ともLTEは200Mbps以上のサービスを行っている

強制営業停止措置がデータ定額を復活

日本でも通信事業者によるMNP契約時の高額なキャッシュバックが問題視されはじめているが、韓国では事業者が契約時に支払いできる補助金には上限が定められている。その上限金額を超える補助金を違法に消費者に提供したとして、3月13日から3事業者が相次いで強制的な営業停止命令を受けている。3月は韓国は新学期シーズンであり、この期間の営業停止は3社にとって大きな痛手だ。

違法な補助金による端末の割引販売が過熱している

各社の営業停止期間は45日から59日間。その中でLG U+は4月4日から営業が再開され、4月末から5月にかけ再度営業停止となる。今回のデータ定額プランの復活は、この営業再開に合わせ新規加入者を一気に増やすための思い切った戦略なのである。SK TelecomとKTも相次いで2GB/日のオプションを追加したのも、LG U+のデータ定額プランを大きな脅威と見ているからだ。もちろん韓国の消費者もこの動きは歓迎している。データ利用量を気にせずLTE回線を自由に利用できるデータ定額の復活で、LTE時代ならではのサービスやスマートフォンの新しい使い方もこれから次々に生まれてくるだろう。