全世界のスマートフォン販売シェアはここ数年Samsungが1位、Appleが2位の座を保っており、3位以下は各社の順位が入れ替わる混戦模様となっている。各社が目指しているのは上位2社のすぐ後を追いかける3位の座だ。2014年1月にLenovoがGoogleからMotorolaを買収したのも、他社を引き離して3位の位置を固めるためだろう。このように各社の競争が激しくなる中で、ZTEも2016年までのトップ3位入りを目指している。ではZTEはどのような戦略で3位の座の確保しようとしているのだろうか? ZTEのシニア・バイスプレジデント、Zhang Renjun氏に同社の2014年の戦略を伺った。

Zhang Renjun氏よると、まず2013年末に同社は大幅な組織変更を行ったとのこと。これは向こう3年から5年先のビジネスを見越して行ったもので、それまでいわば「縦割り」であった各部門を「ネットワーク」「デバイス」「エンタープライズビジネス」のビジネスユニットごとに再編。営業、資材購入、研究開発など各部門がそれぞれ独立していた旧組織では、ユーザーニーズの製品への反映が遅れたり、コストに注力することで製品の質感よりも価格を重視してしまうこともあったという。新組織では各部門の連携が進むことで、スマートフォンの開発もより迅速に、そしてユーザー視線に立った製品づくりが進むことが期待できるとのこと。

ZTEのZhang Renjun氏

組織変更によりスマートフォンの開発力強化を図る

そして同社の2013年のスマートフォン販売台数は4000万台だったが、2014年は6000万台と150%増を目指しているとのことである。そのためにZTEはスマートフォンの販売戦略をこれまでと大きく方向変換する予定とのこと。最大の変更はこれまでのODM(相手先ブランドによる設計・製造)ビジネスからの脱却だ。ZTEのスマートフォンは新興国などでは通信事業者ブランドで販売されている製品も多く、その販路も通信事業者経由のものが多い。それを順次ZTEブランドの製品とし、また事業者以外の販売も広げていく予定だという。

例えば、インドではRelianceやTataといった各通信事業者がZTE製のスマートフォンを販売している。ZTEはそれら事業者向けの製品も残しつつ、家電店などを使った自社製品の直接販売を広げていく考えだ。ARPUの高い客の多い先進国では今でもスマートフォンの契約セット=バンドルによる無料販売が盛んであるが、新興国や途上国では事業者側にとって端末の割引コストは年々大きな負担になっている。一方今やスマートフォンの低価格化が進んでおり、エントリークラスのメーカー製SIMフリー製品ならば低所得者であっても十分手の届く価格となっている。バンドル販売だけに頼るのではなく、自社での端末販売=オープンマーケットによる販売は、販売数の拡大だけではなくブランド認知度の向上という二つのメリットが期待できるだろう。

このような販売戦略の転換だけではなく、2013年後半には新しい製品ブランド「Nubia」も立ち上げた。NubiaはZTEのブランドを一切表に出さず、若い世代を狙った戦略的な製品でもある。デザイン、ファッション、多機能といった若い世代が好む製品に仕上げており、カメラ機能もiPhoneを横臥するほどのものになっているという。中国、アメリカでは直接ユーザーが注文できるオンライン販売を活用。オンライン販売はコストを削減できることから今後各国で展開を進めたいとのことである。

インドでは自社のWEBサイトで製品紹介・販売を開始

従来のZTE製品とは大きくイメージの異なるNubia

さてグローバル市場では「オープンマーケット」「新ブランド」で攻勢をかける一方で、日本市場は今後どのように取り組んでいくのだろうか。まずスマートフォンは現時点ではソフトバンクのみに供給しているが、他事業者にも広げていく考えを持っているとのこと。そのためには日本市場に受け入れられる製品づくりが必須であり、新体制となった同社のデバイス部門の今後の製品開発に期待したい。また日本ではまだまだZTEのブランド力は低く、通信事業者によるバンドルビジネスが主力であることから、今後も引き続き事業者との関係を強化してスマートフォンを拡販していきたい考えとのことだ。

ZTEのスマートフォンの国別の売れ行きを見ると、中国とアメリカがツートップの位置にあるという。アメリカではプリペイド販売されるスマートフォンのシェアで3位につけており、ZTEブランドの認知度も年々上がっているようだ。Zhang Renjun氏は同社の今後のシェア目標を「2016年までにグローバルで10%、3位」としているが、社内の部門再編、端末販売戦略の方向転換、そして日本でも製品数が増えればその数値の達成は現実のものとなるかもしれない。2014年のZTEはグローバル向けだけではなく、日本市場にもどのような新製品が投入されるのか期待したい。