中国の情報産業省となる中国工業和信息化部は12月4日に国内3つの通信事業者に4G免許の交付を行った。各事業者はすでに4Gサービス開始の準備を進めており、中国は本格的な4G時代を迎えようとしている。

iPhoneも発売、TD-LTEの普及に力を入れる中国移動

今回交付された4G免許はTD方式のLTEに対応する。日本やアメリカ、韓国などで採用されているLTEはFDD方式であり、中国ではそれとは異なるTDD-LTE方式を推進しているのである。すでに最大事業者の中国移動が2012年から国内主要都市でTD-LTEのテストを開始しており、2013年9月からは広東省などでも商用テストとして一般消費者向けにもサービスを開放している。中国移動としては今回の免許交付により晴れて正式にTD-LTEサービスを開始することが可能になり、今月中に正式なサービスブランド名を発表する予定だ。

中国はこれから年末そして年明けの「春節」=旧正月を向かえ、消費者の財布が大きく緩む時期を迎える。この時期にTD-LTEを開始することで中国移動としては加入者を一気に増やしたいと考えている。新しい通信方式に対応する端末も、中国国内だけで利用できるTD-LTE専用端末ではなく国外の通信方式にも対応した製品を投入する。独自の3G方式を開始しその普及に手間取った反省点をふまえ、中国移動の4G端末はTD-LTE、FDD-LTEのデュアルLTE方式に加え、自社の3G方式のTD-SCDMA、世界の3Gの標準方式のW-CDMA、さらには2GのGSMにも対応する「5モード端末」が大半となる見込みだ。

中国移動の4Gサービスがいよいよ正式に開始される

5モードに対応する中国移動版のGALAXY Note II

すでに広東省などで発売されているSamsungのGALAXY Note II(N7108D)はその5モードに対応している。また中国の大手メーカーからも続々と5モード端末が登場する予定だ。またこれまで独自の3G方式を採用していたことから導入していなかったAppleのiPhoneも、2013年9月にグローバルで発売されたモデルのうちアジア向け製品はTD-LTE方式にも対応しており、12月中に中国移動から発売される予定となっている。iPhoneの販売はTD-LTEの普及を一気に広めたい中国移動にとって大きな後押しとなるだろう。

中国大手メーカーも続々とTD-LTE対応端末を発表

iPhone 5s/5cの一部モデルはTD-LTEに対応

免許の意味は?FDD-LTE準備を進める中国電信

今回の免許は他の2事業者、中国聯通と中国電信にも付与されている。この2社はそれぞれ3G方式にW-CDMA、CDMA2000と海外と互換のシステムを採用しているため、4Gも海外で広く普及するFDD-LTE方式でのサービス展開を目論んでいた。だが中国政府としてはTD-LTEの国内普及を推進するためにこの両者にも同方式の免許を交付したのである。

とはいえ中国工信局はこの両者に対しFDD-LTEで利用できる周波数の割り当てはこの10月にすでに行っている。すなわちFDD-LTEの免許は交付されていないものの、この2社はFDD-LTE方式のサービス開始に向けての準備もすでに進めているのだ。そのため両者はまずTD-LTEで限定的なサービスを開始したあと、FDD-LTEの免許交付を待ちデュアルLTE方式で本格的なサービスを開始すると見られている。

中国電信は2013年10月のLTE基地局の入札を行ったが、そのうちTD-LTEは30%、FDD-LTEは70%と圧倒的にFDD方式が多い。すなわち同社は4Gサービスの主力方式としてFDD-LTEを考えているのである。端末もデータ端末はTD/FDD両LTE方式に対応させる一方、スマートフォンはTD/FDD-LDDとCDMA2000に対応した製品と、海外でも製品数が多いFDD-LTE/CDMA2000の2種類を投入することになるだろう。また中国聯通も同様にスマートフォンは中国移動の5モードに対応する製品を流用することでTD/FDD-LTEとW-CDMAに対応する製品のほか、大手メーカーが海外で販売するFDD-LTE/W-CDMA端末を積極的に導入していくだろう。

国内で大規模なLTEテストを行っている中国電信

Huaweiから登場予定の中国電信向け端末。FDD-LTEとCDMA2000に対応

なおFDD-LTEの免許交付時期は現時点ではまだ未定だが、中国移動のTD-LTEが正式免許交付を前にテストサービスを一般開放したことから、FDD-LTEについても中国聯通、中国電信は「テスト」の名を借りていつでも開始できると見られている。もっともこの2社はまずはTD-LTEの正式サービスを開始することが先決とはなるが、サービスエリアの整備や端末の拡充はFDD-LTE主導で進めていくであろう。

TD-LTE方式という同じ土俵で3社が競争を行うだけではなく、追ってFDD-LTE方式も参入されることで中国は3Gの完全普及を待たずに一気に4G時代を迎えることになる。3Gでは出遅れていた国内の関連産業も4Gでは海外に一気に追いつき、これからグローバルでの競争力も高めていくことになるだろう。