9月22日、Nokiaはアブダビで新製品発表会を開催した。発表されたのはスマホ2機種とWindows RTタブレット1機種、そしてフルタッチフィーチャーフォン3機種の合計6つのモデル。この中でもフィーチャーフォンのAsha 3機種はスマホに近い機能を備えており、新興国のスマホ予備軍をターゲットにした戦略的な製品として注目されている。

エントリースマホと呼べるAsha 500シリーズ

Nokiaが今回発表したフルタッチフィーチャーフォンは「Asha 500」「同502」「同503」の3モデル。OSはNokia Asha software platformを採用しているが、これはJavaをベースにしたフィーチャーフォンの上位プラットフォームだ。そのためスマホのような高度な機能は持っていないものの、画面スワイプでアプリを切り替えたりアプリの追加も可能など、スマホライクに利用できる。

ミニスマホとも呼べそうなNokia Asha 503

しかも大手のソーシャルサービスのアプリなども提供されており、Facebook、Twitter、Lineなどの利用に対応するほか、撮影した写真をワンタッチでシェアできるなど、ソーシャルサービスの利用もより強化された。NokiaはこのAsha 500シリーズをスマホの下位製品と位置づけており、今回3機種を投入しラインナップを強化している。

写真のシェアもスマホライクに簡単だ

Nokiaは本3製品の前に「Asha 501」をこの春発売しており、フィーチャーフォンからスマホへの買い替え需要を受け好調な販売を記録しているという。「Asha 501」はNokiaのスマートフォンLumiaシリーズと同系統のポップで明るいカラーリングの6色のボディーカラーが用意され、その外見も同じ価格帯の他社品には見られない大きな特徴だった。そして今回発表された「Asha500/502/503」ではそのカラフルなボディーを透明素材のプラスチックで覆った「クリスタルカラースタイル」と呼ばれるデザインとしている。低価格な製品ながらもちょっとした高級感を味わえるデザインは新興市場の低所得者にも大きく受けそうだ。

Firefox OSスマホとシェアを奪い合うか

NokiaのAsha 500シリーズはいずれもデュアルSIMモデルも用意されており、新興国でのSIMカード2枚需要にも対応する。またこれまでのAshaシリーズはターゲット地域の需要から2Gのみに対応した製品がほとんどだったが、Asha 503ではW-CDMAに対応。HSDPAにも対応し高速なデータ通信が可能だ。しかもAsha 503はディスプレイ表面をゴリラガラスとし、ハードな利用にも耐えうる設計としている。価格はAsha 500が69ドル、502が89ドル、503が99ドルでAndroidスマホのエントリーモデルと対抗できるレベルに抑えている。

このようにWebやソーシャルサービスがある程度利用でき、カメラも"そこそこ"な画質となれば、Asha 500シリーズは新興市場だけではなく先進国でも低所得者向け製品として十分通用するだろう。特に先進国でもまだまだこれからスマホへ乗り換える消費者の数は多い。今後各国で発売されればAsha 500シリーズは世界中で低価格スマホのライバル製品となっていくだろう。

中でも最も影響を受けるのはFirefox OS搭載の低価格スマホとなりそうだ。Firefox OSは世界中の通信事業者も販売に加わり、各国で製品の販売がはじまっている。だが今のところFirefox OSスマホが爆発的に売れて人気になっているというニュースは聞かない。プリペイドで低価格販売されているものの、現時点で販売されている同OS搭載スマホは大手メーカー品ではないことなどから消費者への認知がまだ行き届いていないこともその理由のひとつだろう。

ヨーロッパでも販売が始まったFirefox OSスマホ

これに対しNokiaのブランドは新興市場ではもちろん、先進国でもまだ一定の高さがあり「誰もが知っているブランド」だ。そして最近ではSamsungなどAndroidスマホメーカーもブランド力を高めている。Firefox OSスマホは低価格品を中心とした展開をしているが、顔となる華やかなハイエンド製品が無い上にメーカーのブランド力がないとなると、AndroidだけではなくNokiaのAshaシリーズにも太刀打ちするのは難しくなっていくだろう。

世界のスマホ市場はAppleやSamsungがハイエンド市場を牽引している。だが一方ではエントリースマホとしてNokiaのLumia 520がインドなどで一定数売れているなど、これから販売数が伸びていく低価格帯のスマホはどのメーカーにも勝機がある状態だ。新興市場ではまだまだNokiaのフィーチャーフォン利用者の数が多い。それらの利用者を他社の低価格スマホに流出させず自社製品へとアップグレードさせる受け皿としても、Nokiaの今回発表したAsha 3製品は最適な製品なのである。これからAsha 500シリーズが低価格スマホ市場でどれだけ存在感を表していくか、注目したい。