第3のスマホOSとも言われるFirefox OSを搭載したスマホが今月からヨーロッパで販売開始となっている。果たしてFirefox OSはiOS、Androidに並ぶメジャーOSの座を獲得することはできるだろうか?

振興市場がターゲット

2013年7月にFirefox OS搭載スマホを発売したのはヨーロッパの通信事業者。スペインのTelefonicaはZTE Openをプリペイドスマホとして販売開始した。本体代金は69ユーロで、この中には30ユーロ分の無料通話費が含まれている。すなわち本体代金は39ユーロ相当、約5000円と手軽に購入できる。一方ドイツのT-MobileはポーランドでAlcatelのOneTouch Fireを2年契約で最低0.99ズウォティ(約30円)と、こちらも格安での販売が始まっている。

Telefonicaが販売するZTE Firstはプリペイドで提供される

T-MobileポーランドはAlcatel OneTouch Fireを2年契約でほぼ無料で販売

両製品とも今年2月にスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congress 2013で実機が発表になった製品である。スペックはどちらも3.5インチHVGAディスプレイに1GHzのシングルコアCPU、300万画素カメラを搭載となっておりエントリークラスの製品だ。すなわちライバルはiPhoneやGALAXY S4ではなく、中国メーカー品を含む1万円前後で販売されている低価格なAndroidスマホであるのだ。両製品とも新興国や途上国だけではなく、先進国でも低所得者層や学生、移民層などをターゲットに販売される。

通信事業者のエコシステム構築なるか?

Firefox OSの利点はオープンソースOSやHTML5ベースであることによるカスタマイズ製の高さなどがあるが、最大の特徴はGoogleやAppleのエコシステムに関わらずにスマホを開発・提供できることだろう。すでに先進国ではスマホの普及率が高く、AndroidとiOS製品だけで市場は寡占されている。そしてその多くのユーザーがGoogleやAppleのサービスを日常的に利用しており、通信事業者が従来から提供していたサービスは利用されなくなりつつある。

これに対し新興市場ではまだまだフィーチャーフォンの利用者が多く、スマホへの移行はこれからである。新興市場の消費者に対し通信事業者が自らのエコシステムを構築し、新しいスマホユーザーに自社サービスを提供するためにはGoogleやAppleではない別のOSを搭載した製品が必要となる。Firefox OSはまさしくそれら通信事業者にとって最適のOSであり、Firefoxの開発元であるMozillaも事業者との提携を強化している。例えばFireofox OSはアプリストアが提供されるが、アプリの支払いは事業者課金やアプリ内課金なども最初から考慮されている。もちろん通信事業者が自社独自のアプリストアを搭載することも可能など、事業者のエコシステム寄りのスマホを提供できるのである。

このようにFirefox OSスマホは先進国ですでにスマホを利用している層ではなく、これから買い換える層や新興国などを狙った製品と言える。今回ヨーロッパで発売された2製品のスペックが低いのも、ターゲットとする消費者にとっては必要十分な性能を備えているのである。

だが今後、スマホの利用形態がアプリ中心からソーシャルサービス中心へと変化していけば、ハイエンドのFirefox OSスマホが登場し先進国でも受け入れられる要素は十分にある。スマホではソーシャルサービスやWEB閲覧程度しか利用しないが、大画面、高画質カメラ、そして高速に動く製品が欲しいと考える消費者が増えれば、ハイエンドのFirefox OSスマホ需要も期待できるのだ。日本のKDDIがFirefox OS端末を計画しているのはそのようなシナリオを考えているからかもしれない。

またFirefoxは今年6月に台湾のFoxconnと提携を行った。FoxconnはiPhoneのOEM製造などで知られているが、同社がFirefoxと提携したのはこれから伸びる新興市場向けのスマホの製造元として、他社からの受注を一手に引き受ける準備が整ったということを意味するのだろう。ヨーロッパやアフリカの事業者が自社ブランドのFirefox OSスマホの製造をFoxconnに直接受注する動きも今後加速すると見られている。

Foxconnとの提携で製品バリエーション増加が期待できる

OSよりも「何ができるか」を消費者に訴えることが重要

FoxconnによればFirefox OS製品は5機種程度開発中とのことであり、エントリースマホからハイエンド、またタブレットなどバリエーションに富んだ製品がこれから市場に出てくるだろう。消費者にとって重要なのはスマホのOSそのものではなく、スマホで何ができるか、である。事業者のエコシステムと消費者のニーズが一致し、さらには製品の選択肢が豊富になればFirefox OSが第3第4のスマホOSになることも夢ではないだろう。