世界中が注目するSamsungの今年のフラッグシップモデル、GALAXY S4が3月14日に発表になった。4月末から各国での販売が始まれば、今年上半期のスマートフォン市場の話題を総なめすることは間違いない。だが派手なフラッグシップモデルだけではなく、ミッドレンジにも特徴的な製品を多く揃えているのがSamsungの今の強さと言えるだろう。今回は同社のこの春の特徴的なミッドレンジ製品をいくつか紹介しよう。

新興国向けの5インチ普及モデル、GALAXY Grand

2013年に入り各社の上位モデルは5インチフルHDディスプレイを搭載した製品が出揃った。SamsungのGALAXY S4も4.99インチの有機ELディスプレイを採用しており、各社の新モデルと真っ向から対抗する製品になっている。5インチサイズは大画面スマートフォンの元祖、SamsungのGALAXY Noteが登場した2011年秋には大きすぎるという印象があったが、今では5インチ超えの大画面モデルも各社から製品化されるなど珍しくないものになっている。

大画面スマートフォンはインターネットや動画の利用だけではなく、ソーシャルサービスでスタンプ入りのチャットをする際により楽しさを感じられることなどから、今や市場の大きなトレンド製品にもなっている。新製品のGALAXY S4に加え、2012年秋に発売した5.5インチサイズのGALAXY Note IIというヒット商品を加えた2つの大画面モデルでこの春商戦を戦うSamsungの動きはライバル各社にとって大きな脅威だろう。

どこまで販売数を伸ばすかが注目されるGALAXY S4

新色も投入し勢いに乗るGALAXY Note II (香港の量販店店頭)

この5インチモデルは大手メーカーだけではなく、シェア下位メーカーや中国国内メーカーからも多数の製品が登場している。中国などの新興国でも最近は5インチモデルの人気は高く、中小メーカーもこぞってその市場に参入している。だが先進国の5インチモデルがフルHDディスプレイのハイエンド製品であるのに対し、新興国で販売されている製品は解像度の低いものが多い。しかし価格は安く、日本円で2万円前後と手軽に購入できる価格の製品が大多数だ。新興国では低解像度であっても5インチという大きさ、そして価格の安さに人気が集まっているのである。

Samsungは新興国市場でも人気のあるメーカーであり、ハイエンド製品の下にはディスプレイサイズやCPUスペックの低いミッドレンジモデルも多数用意している。だがスペックを落としながら画面サイズは5インチの「低価格・大画面」モデルをこの春発売開始した。それがGALAXY Grandである。GALAXY Grandは5インチ・800x480ピクセルディスプレイ、デュアルコア1.2GHz CPU、8メガピクセルカメラ搭載などスペックはミッドレンジ。だが価格は日本円で3万円前後であり、GALAXY Noteなどのハイエンド製品より安く、中小メーカーの5インチモデルよりも若干高いレベル程度に抑えられている。

5インチ低解像度のGALAXY Grand。デュアルSIMモデルもある

中国メーカーも5インチモデルを続々と投入している

しかもこのGALAXY Grandには新興国で人気のデュアルSIMカードモデルも用意されている。先進国では見劣りしてしまう製品かもしれないが、新興国の消費者にとってはあのGALAXYの5インチモデルが手の届く価格で入手できるとなれば、隠れたベストセラーになることは間違いない。一方中小メーカーはSamsungがこのレベルの製品を出してきた影響を大きく受け、価格の引き下げやスペックアップなどの対抗手段を取る必要が出てくるだろう。一見すると地味な製品であるGALAXY Grandだが、新興市場での大画面スマートフォンの普及拡大を牽引するモデルとして一躍注目を浴びそうだ。

ミニやリニューアルなど豊富なミッドレンジ端末

隠れベストセラーといえば、フラッグシップモデルGALAXY S IIIを小型化したGALAXY S III miniも新興国や途上国で人気のモデルだ。4インチ800x480ピクセルのディスプレイ、1GHzのデュアルコアCPU、5メガピクセルカメラを搭載し、価格はもちろんGALAXY S IIIよりも安い。手ごろに使えるスマートフォンとあってか実は先進国でも販売は好調とのこと。新興市場ではハイエンドよりもスペックを落とした製品を強化しているSamsungだが、フラッグシップモデルの小型化製品も大当たりだったのである。GALAXY S4の発売を前にGALAXY S4 miniもリーク写真が出回るなど、今後Samsungのフラッグシップモデルはmini版も登場することが恒例となりそうだ。

また2011年のヒットモデル、GALAXY S IIもデザインをそのままにGALAXY S II PLUSとしてリニューアルして戻ってきた。4.3インチ800x480ピクセルのディスプレイ、デュアルコア1.2GHz CPU、8メガピクセルという当時としてはハイエンドのスペックはそのままに、NFCを搭載し価格を引き下げ、新たなミッドレンジモデルとしてこの春から発売されている。

GALAXY S III miniは手ごろなサイズが人気

GALAXY S II PLUSはNFCを搭載してリニューアル

この他にもLTE対応で低価格、4.5インチのGALAXY Express、IP67相当の防水防塵に対応する4インチのGALAXY Xcover2など、ミッドレンジモデルはまだまだ多数の製品が用意されている。派手なハイエンドモデルだけではなく、ミッドレンジモデルも豊富に揃っているからこそ世界中の多くの消費者の興味を惹きつけることができるのだろう。ハイエンド市場の日本でも、これらミッドレンジモデルのいくつかは十分通用する製品かもしれない。GALAXY S4が発売された後も、次はどのようなミッドレンジ製品が出てくるか楽しみである。

LTEの普及モデル、GALAXY Express

タフなボディーで話題のGALAXY Xcover2