8月18日にwebOS端末の事業打ち切りを発表したHP。アメリカやカナダの小売店ではすぐさまタブレット端末「TouchPad」の16GB、Wi-Fiモデルが99ドルにまで値下げされ、あっという間に完売になったようだ。7月の発売時の定価は499.99ドル、これは他社の同等スペック品とほぼ横並びの価格であった。だが2カ月もしないうちに1/5の価格まで引き下げたとは、よほど在庫処分を急いだのだろうか。

香港でも追いかけるようにこの動きへの追従が見られたが、その展開は急であった。8月24日の18時44分、HP香港のFacebookページに突如「明日の朝9時からオンライン販売サイトで、780香港ドル(約7700円)で販売を開始する」とのアナウンスが書き込まれたのだ。この情報はあっという間に香港中の携帯電話ショップやパソコンショップの関係者の間に広がった。なぜなら関税の無い香港は海外からの輸入品の売買も盛んであり、国内でも格安品が出てくればその転売も日常的に行われている。メーカー正規の製品が定価の1/4で手に入るとなれば、簡単に利ざやを稼ぐことができるわけだ。

HP香港のFacebookページに突如として安売りのアナウンスが掲載された

そして迎えた8月25日。ショッピングサイトは朝からつながり難くなり、販売時間の9時より前、8時57分には完売してしまったのだ。販売制限も無いことから「繋がったらすぐに大量に注文」されてしまったようで、サイトの管理体制もお粗末なものであった。HP香港が何台在庫を持っていたかはわからないが、これから主力商品として販売しようと考えていただろうからかなりの数を抱え込んでいたと想像される。

実は香港では8月11日にHPがTouchPadの発表を行ったばかりなのである。そして8月20日ころには販売が始まったものの、すぐに小売店から在庫がすべて引き上げられていた。すなわちその時点で正規販売は一切行わないことにしたのだろう。しかしFacebookによる今回のセールのアナウンス時間が実質数時間だったこともあり、香港のほとんどの消費者は気がつくことはなかった。

販売開始前に完売、数分で売り切れたと推測されている

現在、香港の輸入端末販売店の店頭では「香港正規品、メーカー保証付き」としてTouchPadが堂々と4倍以上の定価3180香港ドル(約3万1500円)で転売されている。転売が日常的な香港ではこの行為についてのお咎めは一切ない。だが今回の動きは、ピカピカの新製品が"こっそりと特定の業者に、しかもメーカーが直接、割引販売を行った"ようなものだ。さすがの香港の消費者もこれには呆れており、HP香港のFacebookページには多くの批判のコメントが寄せられている。

HPがwebOS端末事業から手を引くのは、OSそのものに問題があったのではなくビジネスとして利益を上げることが難しいと判断してのことだろう。同社のwebOS端末はこのまま惜しまれつつ市場から消えていくだろうが、その引き際はあまりいい印象を与えるものではなかったようだ。