2011年6月にシンガポールで開催されたCommunicAsia 2011でNokiaが発表したスマートフォン「Nokia N9」はMeeGo OS 1.2を搭載した同社の最新製品である。Symbian OSからWindows Phone 7へとスマートフォン戦略を大きく変更したNokiaは、それまでの「繋ぎ」としてSymbianのマイナーアップデートを行う予定で、現行の「Symbian^3」の次のバージョンとなる「Symbian anna」を搭載した製品を相次いで市場に投入している。そのためここでMeeGo OSを搭載したスマートフォンを突如市場に投入する同社の動きには驚きの声も聞かれる。

NokiaのCEO、ステファン・エロップ氏は「たとえNokia N9が成功したとしても、当社のスマートフォンは今後Windows Phone 7で進めていく」と海外メディアのインタビューに答えている。すなわちNokiaは全力を挙げてWindows Phoneを開発しているところであり、スマートフォンOSのマルチプラットフォーム展開は考えていないはずだ。

だがNokia N9のユーザーインターフェースはメニューボタンの無い斬新なもので、今後同OSを搭載した製品がでてこないとは考えられないほど、出来のいい製品なのである。ここまで完成度の高い製品が、1機種だけで終わりというのはあまりにも勿体無いことだ。

斬新かつ使いやすいUIのNokia N9

NokiaとIntelがMeeGo OSを共同で発表したのは2010年の2月。iOS、Androidに対抗できるスマートフォンの第三勢力となり、さらにはタブレットやネットブックでも導入が進むものと期待された。しかし実際は数機種のタブレットが市場に出たにすぎず、大手メーカーの同OSの採用はなかなか進まなかった。そしてこの1年半でスマートフォン市場は急速な世代交代がおきており、MeeGo OSは少なくともスマートフォン用OSとしては忘れられた存在になってしまっている。

Nokia N9は簡単操作のUI、強力なグラフィック&マルチメディア機能、そしてカジュアル感を持った本体デザイン、この3つが大きな特徴だ。発表会での来訪者の反応は非常によく、発売されれば一定の数量は確実に売れるだろう。だが年末にはWindows Phone7が続々とNokiaから発売される予定になっている。斬新なUIを搭載したNokia N9も、Windows Phone7が出てくれば半年程度で市場から消え去ってしまうのだろう。

NokiaとしてはMeeGoの開発はこれまで進めていたものであり、その最後の仕上げとしてNokia N9がようやく完成した、ということかもしれない。だがせっかくの良い製品も、このタイミングでの発表はあまりにも遅すぎたという印象を受けてしまう。仮にこれだけの製品を1年前にNokiaが発表していれば、スマートフォン市場における同社の影響力は大きく変わっていたはずだ。そう思えるほど、Nokia N9/MeeGo OSスマートフォンの出来は非常に良いのである。

すでに消費者の興味はiPhoneとAndroidに移ってしまい、Nokia N9がどんなに優れた製品であっても市場の反応は冷ややかかもしれない。一方でヒット商品となったとしても、次の製品がでる可能性が限りなくゼロに等しいというのも残念なことだ。Nokia N9が市場でどんな評価を受けるのか、発売を楽しみにしたい。