【コラム】

海外モバイルトピックス

53 アジアで転売されるiPad 2、その現場を見た

 

53/100

2011年3月11日にアメリカで販売開始されたAppleのiPad 2。販売直後の週末には販売台数が100万台を越えたとの調査もあり、その人気は急騰しているようだ。3月25日にはヨーロッパなど24カ国での販売が追加され、4月には香港やシンガポールなどアジアにも販路が広がる。なお東日本大震災の影響により日本での販売は当初の3月25日から延期された。震災の被害にあわれた方々が一刻も早く、日常生活を取り戻せるようになることを心からお祈りしたい。

店舗に入るだけでも行列ができているニューヨーク、五番街のAppleストア

iPadもiPad 2も一部の国を除きSIMロックが無い状態で販売されている。ロック無しの場合、通信事業者によるiPadの本体割引は無いが契約も不要で単体購入が可能だ。そのため各国のAppleストアには海外からの購入客も集まっている。またロックがないことから購入後のiPad 2を転売することも容易だ。世界最大のオークションサイト、eBayを見てみればiPad 2が大量に出品されている。だが転売はオークション等の個人レベルだけではなく、業者による大量販売も行われている。それが最も盛んなのはアジア市場だ。

特に香港では最新製品に興味を持つ消費者が多く、元からSIMロックフリーの市場であるため「人気の製品は高い」ということが当たり前のように受け入れられている。端末の人気は値段ではなく端末の魅力そのものに集まるのだ。入荷数の少ない製品は現地の正規販売品でも平気で高値で転売されており、iPhone 4ですら正規代理店の家電店でアクセサリをバンドルし定価の2-3割り増しで販売されている。

自宅に届いたiPhone 4を輸入品販売ショップに持ち込み転売している客。香港では当たり前の光景。茶色い箱はiPhoneの入った梱包箱

日本ならば転売は不道徳であり、価格が高いものを買うのは後ろめたいという印象があるだろうが、香港では価格というものは市場の需要によって変動し、転売は日常茶飯事だ。iPad 2もアメリカ発売の翌々日には香港で輸入品が登場し、10万円以上という高値でも完売したという。購入客は香港人だけではなく、中国大陸からの富裕層やタイなどからのバイヤーも多かったとのこと。香港は多くの商品の輸入関税もなく消費税も無いことから輸入品の出し入れも行いやすい。

このあたりの状況は、初代iPadがアメリカでの販売直後から香港で普通に輸入販売されたことを以前書いた時と全く同じ状況だ。4月になっても香港の輸入品端末販売ショップにはiPad 2が豊富に入荷している。アメリカ版が品薄になったと思えば、オーストラリアやイギリスからの製品が代わりに入ってきているのだ。価格は在庫の量によって毎日変わるなど、生鮮食料品のような値動きを見せている。また1日の中でもお昼と夜とで価格を変えている店もあるなど「買いどき」がいつなのかを見極めるのも難しい。

並行品ショップに並ぶiPad 2の箱の山

ではこれらのiPad 2はどうやって香港に入ってくるのだろう。基本的には現地の業者が大量に買いつけ、それを香港などに転売している。しかも需要に供給が追いつかないため、Appleストアに並んで当日購入しそれをそのまま転売する業者も多い。そしてその列に並ぶのは代理人たちだ。これは日本でもゲーム機の新製品販売の際に見られることではある。

しかしニューヨーク、ソーホーにある落ち着いた雰囲気の建物にはいったAppleストアの周りを、夕方ともなるとアジア系の「並び屋」がずらりと囲む光景は異様な雰囲気だ。うつむいたままじっと地面を見つめる人、談義しながら軽食片手に騒がしい連中、いずれもiPad 2を購入する客には見えない。翌朝8時の開店時間にはその日に入荷したiPad 2がこれらの並び屋や代理人に全て買い占められてしまい、本来買いたいと思う地元の客には行き渡らないという異常な状況になっている。

ニューヨーク、ソーホーのAppleストアの周りに座る並び屋

転売が多いということはそれだけiPad 2の人気が高いということの裏づけでもある。だがアメリカで先行販売され他国では転売により高値で販売されるという状況は初代iPadから改善されていない。iPadは優れた製品ではあるものの、今後毎月のようにAndoridなど他陣営のタブレット端末が登場するようになれば、販売の遅れや国別の販売時期のずれはApple製品といえども客を奪われてしまう恐れもある。iPadは実質的にライバル不在だったが、iPad 2には強力なライバル製品がこれから多数登場してくる。iPad 2の供給体制が安定しなければ、今後の販売台数も順調に伸びない可能性もありうるだろう。

53/100

インデックス

連載目次
第100回 ポストiPhoneを狙う新興メーカー、スマートフォンの歴史10年を振り返る
第99回 Huawei新製品「P9/P9 Plus」発表会フォトレポート
第98回 情報をリアルタイムに点字表示できる、世界初の点字対応スマートウォッチがまもなく発売
第97回 1台のスマホで2つのLineを使いたい! 海外ではデュアルWeChatスマホが登場
第96回 空気清浄機や浄水器も売る、脱スマホメーカーを目指すシャオミ
第95回 2015年秋冬のスマートウォッチは丸形がトレンド
第94回 指先2本サイズの超小型なスマホが登場
第93回 スワロフスキーで装飾した本気の女子スマホ「Sugar」に注目
第92回 旅先でスマホが無料で使える! 香港で旅行者向け無料SIMが登場
第91回 日本のSIMロック解除にアジア周辺国が注目する理由
第90回 これからの旅行はスマートに! スマホで管理できるスーツケースが登場
第89回 日本人も便利になる!訪日客プリペイドSIM自販機が続々登場
第88回 八百屋や雑貨屋でも買える! スペインの格安SIM売り場の現状
第87回 ブランド時計が続々参入、2015年はスマートウォッチブームがやってくる?
第86回 世界に広がるガラホ?折り畳み型スマホがアジアで人気
第85回 来年はバレンタインチョコも"印刷"する時代がやってくる
第84回 先進国をターゲットに入れた中国新興メーカーのシャオミ
第83回 SIMフリースマホの国香港、海外用プリペイドSIMの販売が活発化
第82回 Facebookが無料? ソーシャルSIMの時代がやってくる
第81回 韓国で復活するデータ定額
第80回 出揃った中国各事業者のLTEサービス
第79回 スマートフォンシェア3位入りを目指すZTEの最新戦略
第78回 2014年はライフログ系スマートウォッチが熱くなる
第77回 中国で4G免許が交付、2014年は4G普及が一気に進む
第76回 台湾のLTE免許が6社に確定、競争激化で再編も
第75回 ライバルはFirefox OS-Nokiaの新端末に注目
第74回 パナソニックの「家電スマホ」はインドで成功するか
第73回 いよいよ始まる中国のTD-LTEサービス
第72回 Windows Phoneが中南米でシェア2位に浮上
第71回 価格下落が世界のスマホ需要を後押し
第70回 いよいよ出てきたFirefox OSスマホ
第69回 ミッドレンジモデルも魅力のSamsungの2013年春の陣
第68回 日本からも注目したいHuaweiの最新モデル
第67回 得意分野で勝負するシャープの海外戦略
第66回 パナソニックも海外市場から撤退
第65回 TD-LTE端末市場で一気に増す日本のプレゼンス
第64回 アジアで加熱する「5インチスマホ」競争
第63回 全社がLTE開始、競争が激化する香港
第62回 LTEで変わる韓国の業界勢力図
第61回 大きく変わる世界のメーカー勢力図、今年後半の動きを探る(後編)
第60回 大きく変わる世界のメーカー勢力図、今年後半の動きを探る(前編)
第59回 Vodafoneとドコモらが提携、一気に広がる国際提携
第58回 韓国でグローバル対応LTEスマートフォンが登場 - 日本への投入も期待
第57回 香港でも7000円台!! - HP TouchPad販売のドタバタ劇
第56回 韓国で全事業者が4Gを開始 - 月額料はパッケージ制、データ定額廃止の方向へ
第55回 「繋ぎ」には勿体無い、MeeGo OS搭載のNokia N9
第54回 世界の端末メーカーの勢力図が大激変
第53回 アジアで転売されるiPad 2、その現場を見た
第52回 ドコモのSIMロック解除、中国で大歓迎
第51回 2011年は低価格スマートフォンが流行に
第50回 2010年はMotorolaの復活に注目
第49回 AppleもNokiaも脅かす「その他」勢力が増大
第48回 気がつけば海外メーカーばかりな日本のスマートフォン
第47回 この冬はオール"フルタッチ"、本気で反撃に出るNokia
第46回 香港でiPadが発売、SIMロックフリー&単体販売
第45回 海外でも広がる「海外パケットし放題」サービス
第44回 発売開始前なのに何故!? - iPadが大量販売されている香港
第43回 海外も日本も同料金でデータ通信-日本通信がサービス開始予定
第42回 実用化が始まった太陽電池搭載ケータイ
第41回 Nokia、業績回復も今後が勝負 -急がれる「フルタッチ」端末の強化
第40回 「簡単ケータイ」が海外でも流行に
第39回 2009年の海外端末市場を振り返る
第38回 LGの「新チョコレート」がスゴイ - 21:9ディスプレイ搭載の「LG BL40」
第37回 いよいよ中国でもiPhoneを発売 - 出だしは不調?
第36回 WiMAX/Wi-Fi/W-CDMAに対応した「3W」端末がSamsungから登場
第35回 Nokiaが3G対応ミニノート「Booklet 3G」発表 - ノートPC市場参入の狙いとは
第34回 OEMメーカーのAltekが携帯内蔵デジカメ発表 - 将来Flickrケータイもでる?
第33回 中国にも3Gの時代がやってきた!! - 各社のサービスや戦略を紹介
第32回 iPhone 3G Sへの買い替えでiPhone 3Gが中古市場に登場?
第31回 機能性とデザインを追及した「ケータイストラップ」は日本に根付くか?
第30回 新型iPhone対抗端末? - Nokiaのフラッグシップ端末「N97」がいよいよ登場
第29回 アプリのメーカー直接配信時代がやってくる
第28回 海外メーカーが韓国市場にスマートフォンで参入開始
第27回 終焉を迎える中国のPHS、残した功績は大
第26回 滑り出し好調なNokiaのタッチUI端末「5800 XpressMusic」 - iPhone超えも?
第25回 中国で売れ筋の携帯機種は? - Nokiaが圧倒的人気の中シャープも健闘
第24回 "Appleの理論"が通じない香港、iPhoneの単体販売を開始
第23回 iPhoneを脅かす存在になるか? Nokia 5800 XpressMusicが登場
第22回 日本向けOMNIAの姉妹品? 韓国でHaptic 2が発売開始
第21回 パケット通信+無線LAN定額がトレンドの香港
第20回 販売国の増えるiPhone、注目市場の投入はいつ?
第19回 カシオの海外進出が期待できる? - ソフトバンクとの端末供給合意
第18回 日本で増加する中国メーカー端末
第17回 マルチメディアへの対応を強化するBlackBerry
第16回 香港におけるiPhone 3G - SIM差し替えは当たり前
第15回 Motorola、新型「明」で中国市場奪回なるか
第14回 LGのデザイン携帯"Secret"、その秘密に迫る
第13回 Appleの発表を待たずに「3G iPhone」の発売が確定
第12回 中国の通信事業者6社が3社に再編
第11回 iPhone拡販のために販売戦略を変更するApple
第10回 不振のMotorola、事業建て直しはなるか
第9回 中国でTD-SCDMAの商用テストサービスが開始
第8回 チョコレートからウォン・ビンまで - ユニークな韓国携帯のニックネーム
第7回 シャープの中国市場参入、勝算の道はどこにあるか
第6回 Sony Ericsson、海外事業の好調が日本事業の見直しに?
第5回 "3G版iPhone"はいつ出てくるのか?
第4回 EMONSTER、海外ではいくらで売られている?
第3回 XPERIAを投入するSony Ericssonの意図
第2回 メーカーの勢いの差が表れたMobile World Congress 2008
第1回 Nokiaの決算報告から見た2007年の海外携帯市場

もっと見る

人気記事

一覧

新着記事

雨宮塔子「感慨深い思いでいっぱい」『NEWS23』でTBSレギュラー復帰
[07:00 7/26] エンタメ
広末涼子、湊かなえ原作ドラマ主演に! 姉との確執抱える主婦役
[07:00 7/26] エンタメ
高島彩、産休明けで立ち会い出産のエピソード語る - 3人目の意欲も満々
[07:00 7/26] エンタメ
多様な人材が働き続けるための課題とは? - 「JALなでしこラボ」が研究発表
[07:00 7/26] キャリア
「有給休暇取得をためらう」は子持ち正社員の6割 - その理由は?
[06:30 7/26] キャリア