2010年は世界中でスマートフォンの販売台数が増加し、AppleのiPhone4やAndroid陣営のニュースが市場を大きく賑わせた1年だったと言えるだろう。スマートフォンの出荷台数も昨年から倍増しており、この傾向は来年も続いていくだろう。だがその一方で着々とシェアを上げている新興勢力の存在が注目を浴びている。

NokiaとAppleのシェアが激変

調査会社のGartnerによると、2010年第3四半期の各社のマーケットシェアはNokia、Samsung、LGと上位3社は変わらないものの4位には昨年同期比で販売台数を190%増やしたAppleが食い込んだ。3位LGとの台数の差はまだ倍以上あり、また5位のRIMとの差もわずかではあるもののAppleの勢いはきっちりと数字に現れた格好となっている。一方トップのNokiaのシェアは28.2%。10年以上もシェア3割以上をキープし、一時は40%にも達しようとしていた同社にとって現在の状況は深刻な状況だ。

シェアが大きく下落したNokia

販売台数だけ見ればNokiaの今期は1億1746万1000台。昨年同期より約400万台増で、台数は増加している。だが世界全体の販売台数増加率が昨年同期比で35%と成長したのに対し、Nokiaはわずか3%増。リーマンショック以降ようやく回復した消費者の購入マインドを掴みきれていない結果となっている。特にスマートフォン分野では各社間の競争が激しくなっており、効果的な新製品の投入が遅れた結果がシェア下落を招いたと見ることができる。

だがNokiaのシェア下落要因はそれだけではなく、予想外の勢力の増加がもたらした結果でもあるのだ。今年第3四半期の販売台数1億3780万台、Nokiaの販売総数をも超えた「隠れシェア1位」は10位以下のその他大勢のメーカーだ。ガートナーの調査ではこれまでその他勢力がNokiaを超えることはなく、マーケットシェアは常に15%前後に留まっていた。しかし今期はその数を一気に倍増させてシェア33%とNokiaを抜き差ってしまったのである。

無名メーカーがメジャーに躍り出る

この「その他」はもちろん1社ではなく、中には50社以上がひしめきあっている。だがその上位に位置するメーカーの製品は中国製であり、ほとんどが台湾MediaTekのプラットフォームを利用している。すなわちその他メーカーの中でも上位群はメーカー名が違えどプラットフォームとしてみれば一つの勢力としてまとめることが出来るわけだ。

中国製の携帯電話はここ数年で販売台数を大きく伸ばしていたが、その大半が中国政府の認可を受けずに生産された「山寨機」と呼ばれる製品だった。山寨機は昨年だけでも年間2億台が生産されたといわれており、メーカー間の激しい競争から機能と品質の向上、低価格化が進んでいる。

これらの山寨機をメーカーや代理店が認可を受けた上で正規製品として海外に輸出を進めた結果、今年になって新興国家を中心に一気に普及が進み統計上の数字に現れるほどの勢力に成長している。たとえばインドでシェアを急増しているG'Fiveは香港に本社があるものの、製造はすべて中国。同社は今年第1四半期に販売台数434万台となり、一時的であるがマーケットシェア9位に突如登場している。

毎週新製品を投入しているG'Five

G'FiveのラインナップはWebサイト上にあるモデルだけでも80機種。新製品の投入ペースは毎月4~5機種、すなわち毎週新製品が発売されている。価格も1万円程度と安く、高機能なフィーチャーフォンもラインナップされている。来年にはスマートフォンも投入される予定であり、シェア10位以内への復活も十分ありうるだろう。G'Fiveと類似したメーカーはインドや中国には多数あり、数年後には市場で十分なプレゼンスを確保している可能性も十分ありそうだ。

G'FiveはMobile Asia Congress 2010にも出展

もちろん先進国では大手メーカーの製品がこれからも人気の中心となるだろう。だがいずれこれらの新興勢力メーカーがコストパフォーマンスに優れた製品の販路を先進国にも広げていくだろう。11月に香港で開催されたアジアのモバイル関連イベント、Mobile Asia Congress 2011にはG'Fiveも出展しており、同社担当者は新興国家だけに限らず世界中の代理店、事業者を販売ターゲットにしていると語っていた。NokiaやAppleもうかうかしていられない、そんな時代が実際にやってくるかもしれないのである。