9月14日と15日の2日間にわたってNokiaの戦略イベント「Nokia World 2010」がロンドンで開催された。Nokia Worldでは毎年、同社の今後の方針や戦略が発表される。今年のイベントではSymbianの最新OSへの移行と、待たれていたスマートフォンの新製品が発表された。最新トレンドを取り入れたこれらの新製品はこの冬話題の製品として、市場で大きな話題となるだろう。

他社より大きく引き離されたスマートフォン戦略

この冬のクリスマス商戦向けに発表されたスマートフォンは「E7」「C7」「C6-01」の3機種。すでに発表済みでまもなく発売される「N8」を含めると合計4機種となる。この4機種の投入で、Nokiaは劣勢だったスマートフォン市場でようやく巻き返しを図ることができるだろう。この4機種は以下のスペックを備える。

  • OSにSymbian^3を採用
  • 画面解像度640×360ピクセル
  • 有機EL画面採用
  • HSDPA 10.2Mbps/HSUPA 2Mbps
  • CPUはARM11 680MHz
  • Bluetooth 3.0
  • 8メガピクセル以上のカメラ搭載

いくつかのスペックは他社のハイエンドスマートフォンと比較すると物足りない部分もあるだろう。だが、ハイエンドとミッドレンジの中間に位置するラインナップと考えれば納得できる。Nokiaとしてもこれらの製品は「打倒iPhone」ではなく、他社から引き離されたスマートフォン市場での地位回復を目指すために本気で投入する製品群なのだ。

この冬の戦略商品はすべてがフルタッチスマートフォン

Nokiaのスマートフォンはこの1年間、進化がほぼ停滞していたといえる状況だった。Symbian OSのフラッグシップモデルN97の登場は2008年の冬。Maemo OSを搭載した次世代スマートフォンN900は2009年秋の発売で、それ以降は既存端末のマイナーチェンジモデルが細々とリリースされていた状況であった。この間にMotorolaやSony EricssonはAndroid端末を定期的に登場させてスマートフォンメーカーとしての地位を復活させ、SamsungやLGは多数のOS展開とフルタッチ端末の怒涛の投入で最新技術に強いメーカーというイメージを定着させていった。

だがNokiaはこれらのライバルに対して差別化や先進性を謳うことのできる製品の投入が遅れ、数の上では世界シェア1位であるものの、ハイエンドや流行の分野では完全に取り残されてしまったのである。また「Nokiaは新興市場向けエントリーモデルに強い」と言われているが、それらの市場でも今ではSamsung、LGなどの韓国勢やHuawei、ZTEといった中国メーカーに押されはじめているのが実情だ。Nokiaは今後、ハイエンド、スマートフォン、流行製品、そしてエントリーモデル、あらゆる分野の戦略を立て直していく必要に迫られているのである。

ラインナップを整理し"売れる製品"に集中

昨年のNokia World以降、Nokiaが発売した製品の数は大きく減っている。これはスマートフォン分野での苦戦とフルタッチという最新トレンドの取り入れの失敗により、目立った製品を出せなかった結果だろう。だが逆に"売れない製品"が出なくなったことにより、Nokiaの製品ラインナップは大きく整理された。また昨年後半から端末の型番形式も従来の「4桁シリーズ」「NとEの両シリーズ」の2本立てから、「用途別アルファベット1文字+数字2桁」とシンプルなものに移行が進んでいる。

Nokiaが売れている時代は、「細かい製品が多数あり、製品名もわかりにくい」という状況でもよかっただろう。だが、各社からNokiaよりも使いやすいスマートフォンやエントリーモデルが多数登場している今、Nokiaは製品数を増やすことではなく"売れる製品"に集中していくべきなのである。ベーシックなストレート10キーモデルながら画面はフルタッチのC3-01 Touch and Type、フルタッチスマートフォンながら100ユーロ前半と低価格を押し出した5250などはそのいい例で、時代のトレンドをうまくつかんだ売れ筋商品となるだろう。

画面がフルタッチのC3-01(左)と、格安なスマートフォン5250(右)

Nokiaの完全復活にはまだ時間がかかりそうだが、シェア1位メーカーとしての消費者からの信頼が揺らぐことはまだまだ無いだろう。Nokiaが活力を取り戻すことは各社間の競争を活性化させ、それが携帯電話業界全体の動きを盛り上げることになるはずだ。Nokiaの奮起に期待したい。