スマートフォンなど携帯電話の高機能化が進む一方、お年寄りや子供でも簡単に使える「簡単操作携帯電話」の需要が高まっているようだ。ヨーロッパでは複数メーカーが開発に取り組んでおり、容易な操作性や緊急発信対応など一般的な携帯電話とは異なる機能を競い合っている。携帯電話利用者の高齢化が進む中で、簡単携帯は今後需要を大きく伸ばしていくだろう。

ヨーロッパで人気の「年配者向け携帯」

日本でも「らくらくフォン」シリーズが年配者を中心に人気だが、海外でも「簡単操作」をコンセプトにした携帯電話が数を増やしている。海外で開催される展示会でも複数のメーカーが製品を展示している。

簡単携帯の先駆メーカーともいえるEmporia。コンセプトは「50歳からの携帯電話」

ドイツの家電店では簡単携帯が10機種以上展示されていた

この手の簡単携帯を販売しているのは無名の中小メーカーがほとんどだ。多機能化や高性能化では大手メーカーに当然太刀打ちできないが、機能を絞り「いかに簡単に使えるか」というアイディアを製品に反映させることで勝負している。

最近では携帯電話の製造コストも大幅に下がってきており、新規メーカーが参入する敷居も低くなっているが、大手メーカーと同じ土俵で戦うことはやはり難しい。いかに差別化するかが生き残りのキーポイントとなるのだ。携帯電話利用者の高齢化が進む中、年配者向けの簡単携帯電話は、大手メーカーが参入してない「空白の製品カテゴリ」となっている。新規のメーカーにとっては今からでも商機が見込める製品分野と言えるだろう。

ヨーロッパの家電店へ行くと、最近では複数機種の簡単操作携帯電話が店頭に並べられている。価格は100ユーロ前後のものが多く、通信事業者と契約すると1ユーロや無料といった低価格で購入可能だ。年配者は頻繁に端末を買い換えることも少ないため、固定契約して無料で購入していくケースも多いようだ。

「音声通話」が重要なアプリケーション

各社の簡単携帯に共通している機能は、押しやすいボタンや見やすいディスプレイ、そして通話音声を大きい音量で聞けるハンズフリー機能などだ。ディスプレイはモノクロで大きい文字が表示されるものが多い。また数字キーは押し間違えの無いように大きな数字が表示されており、視力が弱い方でも見やすくなっている。数字キーを廃して短縮ダイヤルだけを搭載した製品も多い。ほかにも、緊急時に登録先にワンタッチで発信できる「SOSボタン」や、側面のスイッチを押すと本体上部がライトのように光る「懐中電灯機能」などを備えた製品もある。一般的なコンシューマー層向け携帯電話が搭載しないような機能の搭載が重要視されているのだ。

また本体デザインも垢抜けたものが増えている。複数メーカーが市場参入していることもあり、低価格・低機能だからといって、片手間で作ったような製品では売れないということだ。とはいえ、高機能化や付加機能で「操作を難しくする」方向ではなく、端末のデザインや操作性での差別化が求められているのである。

スタイリッシュな製品も増えている

お年寄りが携帯電話を使う際に最も重要視するのは、やはり「簡単に、確実に音声通話ができる」ことだろう。簡単携帯は付加機能や本体デザインが優れていても、操作しにくいようでは、ターゲットとなる年配層は購入してくれないわけだ。端末の持ちやすさ、キーの押しやすさ、スピーカー音量の操作性のしやすさなど、簡単携帯には従来の携帯電話とは異なる部分での開発ノウハウが求められているわけである。

日本メーカーも多機能モデルだけではなく、らくらくフォンのような簡単携帯の海外展開もぜひ考えていただきたいものだ。